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日本のインターネットの現在が分かる“Internet Week 2001”が開幕

2001年12月03日 22時13分更新

文● 編集部 佐々木千之

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神奈川県横浜市の“パシフィコ横浜”において3日、インターネットに関するさまざまな技術の研究開発、構築や、運用などをテーマに、カンファレンスやセミナーなどを行なう開発者向けイベント“Internet Week 2001”が開幕した。7日までの5日間に渡り開催の予定で、3、4日には“Global IPv6 Summit in Japan 2001”が開かれる。

”Global IPv6 Summit in Japan 2001”基調講演を行なった、米マイクロソフト社バイスプレジデント、ネットワーキング & コミュニケーションズ担当のジャワッド・カーキ氏
”Global IPv6 Summit in Japan 2001”基調講演を行なった、米マイクロソフト社バイスプレジデント、ネットワーキング & コミュニケーションズ担当のジャワッド・カーキ氏

Internet Weekは、'90年に始まった管理・運用に携わる人々が問題を解決するために議論を行なった会合“IP Meeting”に始まるイベントで、'97年から日本のさまざまなインターネット関連団体の会合を集中的に行なう現在の形になった。主催は(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)で、参加団体はGlobal IPv6 Summit in Japan 2001実行委員会、(財)インターネット協会(IAjapan)、(社)日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)、日本インターネット技術計画委員会(JEPG/IP)、NPO 日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)、コンピュータ緊急対応センター(JPCERT/CC)、日本UNIXユーザ会(jus)、日本サン・ユーザ・グループ(NSUG)、アクセシブルJP(acbl.jp)の9つ。

昨年は大阪国際会議場で開催し、約7500人の参加者を得たが、今年は1日あたり約3000人、会期中に述べ1万5000人の来場者を見込んでいるという。Internet Week 2001のイベントの1つとして本日開催したGlobal IPv6 SummitはIPv6の普及と促進を目指す国際団体“IPv6 Forum”が世界各地で開催しているIPv6に関する国際会議。本稿ではGlobal IPv6 Summit 2001の初日の模様をお伝えする。

Global IPv6 Summit 2001の基調講演は米マイクロソフト社バイスプレジデント、ネットワーキング & コミュニケーションズ担当のジャワッド・カーキ(Jawad Khaki)氏が行なった。

カーキ氏が示した、現在のIPv4アドレスの枯渇予想グラフ2002~3年にはかなり問題となる
カーキ氏が示した、現在のIPv4アドレスの枯渇予想グラフ2002~3年にはかなり問題となる

カーキ氏はさまざまな統計資料を挙げて、音声通信よりもデータ通信、固定網よりも携帯電話などモバイル環境でのインターネットアクセスに進みつつあるというトレンドを示した。これまでは電話は音声、テレビはコンテンツを流すだけといったように、メディアによって役割が分かれていたが、IPベースのネットワークでは、もっといろいろなことが可能になる。例えばあるユーザーがオンラインかどうかをチェックして、必要な顔ぶれがそろったらそこで電話会議を開くといったことができる」と述べて、新しいネットワーク時代のアプリケーションは、統合されたツール、サービスの提供が鍵になるとした。

そして、「現在のIPv4ではアドレスが足りないために、NATが広く利用されている。しかし、本来のインターネットは(グローバルIPによる)“Peer to Peer”の通信が前提となっているものであり、“End to End”で通信ができるからこそ、新しいサービスや新しいプロトコルが生まれて発展してきた」と、IPv6の導入を急がなければ、インターネットの発展が阻害されるとの懸念を示した。

IPv6導入スピードの遅さを指摘
IPv6導入スピードの遅さを指摘

カーキ氏は「そのようにすばらしいIPv6ではあるが、アプリケーションとネットワーク機器を一斉にIPv6対応にしなくてはならないために、アプリケーションを扱う企業とネットワーク機器を扱う企業でお互いに様子見の状態となり、“鶏が先か卵が先か”という状況に陥り、導入が遅れている。マイクロソフトでは、Windows 2000からIPv6対応の作業を開始し、Windows .NET ServerやWindows XPをIPv6に対応させるアップデートを開発している。Windows CEについても対応させる」と、マイクロソフトとしても積極的にIPv6の普及を進めていくという姿勢を見せた。また、会場の多くを占める技術者・研究者に向かい、「NATだけで我慢しないでほしい。IPv6をネイティブでサポートして欲しい。まるで息を吸うように当たり前の、面倒がない常時ネットワーク環境を実現しなくてはならない」と、IPv6へのサポートを訴えた。

基調講演後は、日本や世界のIPv6への取り組みや、ユーザーアプリケーションの事例などについてレポートの発表が行なわれた。

日本でのIPv6サービスの展開については、NTTコミュニケーションズ(株)、グローバル・クロッシング・ジャパン(株)、(株)パワードコム、KDDI(株)などが各社の取り組みを発表した。総合すると、日本では携帯電話によるインターネット接続など、モバイル機器での利用が多いことなどから、ネットワークプロバイダーのIPv6に対する意識が高く、比較的対応が進んでいない米国はもちろん、ヨーロッパやアジア諸国と比べても、導入が進んでいる。諸外国は準備・研究段階のところが多いが、日本では年内にも実験・試験サービスから、正式サービスへ移行するところもあるという状況で、さらに海外へIPv6サービスの展開を予定している企業もあることなどが報告された。

NTTコミュニケーションズ(株)の山崎氏が同社のIPv6ネットワークサービスへの取り組みについて説明した
NTTコミュニケーションズ(株)の山崎氏が同社のIPv6ネットワークサービスへの取り組みについて説明した

海外では、ヨーロッパ、米国、中国、韓国、台湾の状況について発表があった。米国ではネットワーク機器メーカーや、OSベンダーの取り組みは進んでいるが、ISPの対応は遅れているという。しかし、アジアの国々に比べて余裕があるといわれる北米のIPアドレスも足りなくなってきており、IPv6の導入が望まれると報告された。中国は2001年末に2100万人のインターネットユーザーを持つとしているが、割り当てられたIPアドレスは1600万個しかなく、2005年には必要量の10分の1~100分の1しかないと予想されているという。このため、政府もIP資源の重大さに気づいてIPv6の研究に本気で取り組んでいるという。このような政府の取り組みは韓国、台湾も同様で、政府の後押しによる研究・開発が進み始めていることが報告された。

中国のIPv6事情について説明する(株)ジェー・シー・ディの徐志敏氏
中国のIPv6事情について説明する(株)ジェー・シー・ディの徐志敏氏。2005年には携帯電話ユーザーの数は3億人近くになるという

IPv6によるアプリケーションについての報告では、国家プロジェクトである“情報家電インターネット”実証実験の進捗状況などの発表が行なわれた。情報家電インターネット実証実験は、2000年に森総理の“e-Japan構想”によって始まったものだが、現在問題となっているのは、一般の人々のIPv6に関する理解度・意識の低さや、情報家電といった場合にテレビや冷蔵庫がネットワークに繋がるものを想像するというような誤解であるという。情報家電は従来の“家電”の範疇に収まるものではなく、例えば水道の蛇口や家の鍵、センサーなどがネットワークに繋がるようなものも含むという。こうした一般の人々に対する啓蒙活動を進めるため、各地にショールームを設置したり、一般の人々向けのIPv6イベントなどを開く計画としている

情報家電インターネット実証実験については、IPv6普及・高度化推進協議会の貞田洋明氏が報告した
情報家電インターネット実証実験については、IPv6普及・高度化推進協議会の貞田洋明氏が報告した

このGlobal IPv6 Summit in Japan 2001は、2日間通しで参加料1万5000円(学生は5000円)の有料イベントで、およそ800人が参加の見込みとしている。明日からはGlobal IPv6 Summit in Japan 2001のほか、各団体によるフォーラムやセミナー、チュートリアルなどが開催される予定。

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