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2002年日本国際賞はWWWの発明者バーナーズリー博士に決定

2001年12月13日 20時11分更新

文● 編集部 佐々木千之

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(財)国際科学技術財団(JSTF)は13日、都内で記者発表会を開催し、2002年度(第18回)“日本国際賞(Japan Prise)”の受賞者を発表した。今回の日本国際賞は、計算科学・技術分野と発生生物学分野において選考が行なわれ、計算科学・技術分野では“ワールドワイドウェブの発明、実現、発展とそれによる文化への貢献”により英国のティモシイ・J・バーナーズリー博士(Dr.Timothy John Berners-Lee)が受賞した。

日本国際賞の最年少(46歳)受賞者となった、英国のティモシイ・J・バーナーズリー博士日本国際賞の最年少(46歳)受賞者となった、英国のティモシイ・J・バーナーズリー博士

日本国際賞は、“日本が国際社会へ恩返しをする意味で、権威のある国際的な賞を作る”という構想のもとで創設されたもので、'82年に鈴木総理大臣(当時)の許可を得て発足した日本国際賞準備財団(のちの国際科学技術財団)が選定する。対象は、科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と反映に著しく貢献したと認められた個人(存命者)で、受賞者には賞状、賞牌と分野ごとに賞金5000万円が与えられる。

国際科学技術財団の近藤次郎理事
国際科学技術財団の近藤次郎理事

なお、日本国際賞は科学技術の全分野をカバーしているが、科学の動向を考慮しながら毎年2つの分野を授賞対象分野として指定し、その中から選考(※1)している。'85年に第1回の授賞式が行なわれ、今回発表した第18回の授賞式は2002年4月25日に東京の国立劇場で開催予定となっている。

※1 日本国際賞の審査・選考は、決められた分野ごとに、国内外の4000~5000名の研究者・科学者に、授賞候補者の推薦をしてもらい、国際科学技術財団内に設けた審査委員会が推薦者の中から審査選定して受賞候補者を決定する。国際科学技術財団の役員会が受賞候補者の推薦を受けて最終的に受賞者を決定する。

審査委員長で元東京大学総長の森亘氏
審査委員長で元東京大学総長の森亘氏

記者発表会では、計算科学・技術分野の選考にあたった末松安晴部会長(国立情報学研究所所長)が受賞理由について説明を行なった。

ティモシイ・バーナーズリー博士は、CERN(セルン:ヨーロッパ核物理学研究所)の研究員であった'90年に、世界中の研究データを研究者が互いに使えるようにしたいと考えて、ワールドワイドウェブ(WWW)を考案しHTML(Hyper Text Markup Language)の処理系を開発した。現在博士は米マサチューセッツ工科大学の主任研究員であり、World Wide Web Consortium(W3C)の所長も務めている。博士は46歳で、これまでの受賞者中最年少という。

末松氏は「WWWは今日のインターネットの最も重要な利用技術だ。WWWはインターネットとパーソナルコンピューターを用いた新しい情報メディアの世界を開拓した。単に技術者だけが使うものではなく、世界中の人の通信・交流を飛躍的に促進し、人類の文化に新しい局面を開拓した技術。バーナーズリー博士はWWWを発明しただけでなく、それを最初に実現し、その後の発展・普及にも貢献をしている。WWWはいまや世界のグローバリゼーションを支える重要な情報技術となった。世界中のコンピューターが誰からも使えるという、コンピューターネットワークが1つに繋がった新しいパラダイムを提供した」とし、「WWW発明後の11年間の変化を見れば、人類文化の発展とそれにたいする貢献が非常に大きく、また著しく顕著である」とその貢献度の大きさを賞賛した。

なお、2002年日本国際賞のもう1つの受賞分野である発生生物学分野は、英国のアン・マクラーレン博士(Dr.Anne McLaren)とポーランドのアンジェイ・タルコフスキー博士(Dr.Andrzej K.Tarkowski)に決まった。両博士はマウスを使い、それまで試みられなかった初期の胚の培養操作技術を開発し、ほ乳類の発生生物学の基礎を築いたこと、およびその後のほ乳類の胚発生の基本問題解明に関する研究が評価された。

発生生物学分野で受賞した、英国のアン・マクラーレン博士。日本国際賞初の女性の受賞者という発生生物学分野で受賞した、英国のアン・マクラーレン博士。日本国際賞初の女性の受賞者という
マクラーレン博士と共同受賞となったポーランドのアンジェイ・タルコフスキー博士マクラーレン博士と共同受賞となったポーランドのアンジェイ・タルコフスキー博士

また2003年(第19回)日本国際賞の授賞対象分野について、システム科学技術分野の“複雑さの科学技術”と、健康・医療科学技術分野の“医学における視覚化技術”になったと発表した。広い意味での複雑なシステムの分野において、複雑さの解明または複雑さの利用技術の確立に重要な貢献をした業績と、臨床医学、基礎医学、生物学分野で視覚化技術の発展あるいは応用に貢献した独創的な業績が対象としている。

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