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東大博物館、企画展“デジタルミュージアム~電脳で博物館が変わる~”を開催

2002年01月10日 22時56分更新

文● 編集部 増田悦子

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東京大学の研究機関である東京大学総合研究博物館は10日、12日から開催する“デジタルミュージアムIII~電脳で博物館が変わる~”の一般公開に先立ち、報道関係者向けの説明会を開催した。

坂村健教授と高橋進館長
左から東京大学大学院情報学環の坂村健教授、東京大学総合研究博物館の高橋進館長

同展は、博物館や美術館にデジタル技術を導入し、新しいミュージアムを構築するという“東京大学デジタルミュージアムプロジェクト”を披露するというもの。1997年開催の“デジタルミュージアム”、2000年開催の“デジタルミュージアム2000”に続く第3弾。今回は、ユビキタスコンピューティングなどのコンピューター技術の導入によって変化する博物館の可能性を示すことがねらいであるという。

スマートカード(表)
利用するスマートカード。大きさはテレホンカード大
スマートカード(裏)
スマートカードの裏面

同展では、『スマートカードeTRON』というカードを導入している。スマートカードはCPU、メモリー、制御回路を搭載したICカード。電子商取引などで使用されているCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の技術を利用し、個人の情報を掌握し、個人に合わせた情報を提供するというコンセプトによる。館内にある情報端末から、カードに名前、年齢、興味など個人属性を入力すると、登録した興味に合わせて展示品を案内してくれる。また、展示品の前に置かれた端末のカード読み取り部にカードを置くことで、その展示品を見たという記録がカードに書き込まれ、のちに館内に設置してある端末から、自分が見た展示物の説明だけを見ることができる。

入力端末
カードに情報を入力する端末

インターネットに接続できる環境があれば、自宅などからでも、デジタルミュージアムのサイトにアクセスし、カード番号とパスワードを入力して、自分が展示場で見た展示物だけの説明を集め、自動的に作成された“マイホームページ”を閲覧できる。これにより、30万ページ以上ある同博物館のデータベースを検索せずに、自分が見た展示品だけの説明を読むことができる。また、インターネットに接続できる携帯電話があれば、展示品の説明を読みことも可能。

電子康煕字典
電子康煕字典。画面に触れていくだけで字典を引くことができる
『瓦製四天王像』『瓦製四天王像』の回りにある3台のカメラを遠隔で操作し、見たいところを見たい角度で見られるようになっている

スマートカードに対して、同展の実行委員長である東京大学大学院情報学環の坂村健教授は「ものを見るときは、ものだけを見たい。博物館や美術館で、展示物と説明文を一緒に見るよりは、実物の良さをよく見て、あとでじっくり説明を見るほうが好ましいのではないか」と語った。また、「展示物の説明文というのは、小学生、中学生、専門家などそれぞれの知識レベルに合わせなければ意味がない。スマートカードによりこれは実現できる」と述べた。

仮想博物館の様子
仮想博物館の様子
『ペリー渡来絵図貼交屏風』
仮想博物館に展示されている『ペリー渡来絵図貼交屏風』。拡大すると筆遣いまで分かる

“MMMUD(Multi-Media Multi-User Dungeon)”を用いた、3次元の仮想空間博物館も同展の特徴。今回は、トラックボールを操作し、仮想博物館で展示物を見るだけでなく、同時に利用している他の見学者の存在が画面上に表示される。また、表示されている他の見学者に近づけば、マイクとヘッドホンを利用して、音声会話を行なえるようになっている。今回は、聖徳太子や豊臣秀吉なども描かれている『肖像画模本』、日本で最初の植物図鑑とされている『本草図譜』をはじめ、『ペリー渡来絵図貼交屏風』など100点ほどを展示している。

ディスプレーに自動的に絵が表示される
ディスプレーに自動的に絵が表示される。気に入った絵が表示されているときに、カードを端末に乗せて記録すると、あとでその説明文をインターネットを介して読むことができる

坂村氏が開発したOS『BTRON』の多漢字機能を利用した“コンピュータと漢字”コーナーも同展の目玉。世界最古の漢字字典とされている『康煕字典(こうきじてん)』を、漢字の読みや部品、画数を選択していくだけで、康煕字典の該当ページを表示するという電子康煕字典も体験できる。

また、東京大学史料編纂所が所蔵している『大山寺縁起絵巻』をデジタル化し、マルチメディア処理によって結合し、見たいところを見られるようになっているほか、『瓦製四天王像』の回りに設置してあるカメラを遠隔から操作し、見たい部分を見るという体験もできるようになっている。

なお同展は、東京都本郷の東京大学敷地内で、1月12日から2月24日まで開催する。入場は無料。スマートカードは1000円で販売されるパンフレットに同梱される。

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