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本邦初公開!! ソニーのバイオノートが発する“声”の正体はこの人!!――「バッテリーの充電が完了しました」


2002年3月18日

声の主に直撃インタビュー!!

「バッテリーが少なくなりました」「バッテリーの充電が完了しました」……。ソニー(株)のノートパソコン“バイオノート”シリーズは、バッテリーの残量および充電状況を声で知らせてくれる。その声が初めてユーザーの心に響いて以来、今年で5年になる。この声はいったい誰の声なのか?

今回、その声の主と関係者が初めて、ASCII24のインタビューに応じてくれた。

声の主は、実はプロの声優でも何でもなく、1997年当時、バイオノートの開発チームに所属していた茂木優理子さんだ。

茂木優理子さん
“バイオの声の主”茂木優理子さん

茂木さんは当時、主に仕様書の編集や進捗管理、機材の管理といった設計者のアシスタントをしていたという。1999年11月末に同社を退職し、現在は2歳の女の子の母親。その茂木さんがなぜ声を吹き込むことになったのか。当時の経緯を月刊アスキー遠藤編集長が聞いた。

インタビュー風景
左から、バイオノートのプロモーション担当 朝倉美和さん、茂木さんの退職時の上司 末吉隆彦氏、実際に声を録音した石田高英氏、声を“BatteryScope”へ組み込んだ小西徹氏、茂木優理子さん、月刊アスキー遠藤編集長

空調の音、線路の音も入っている?

[月刊アスキー遠藤編集長(以下遠藤)] “声”が入ったのは、“バイオノート”『PCG-505』からですか?

[バイオノートブックコンピュータカンパニー2部5課統括係長石田高英氏(以下石田氏)] 505で話題になりましたが、正確には、それより前の71xシリーズ。最初のバイオノートの705、706の後継にあたりますね。1997年の10月だと思います。

石田氏
バイオノートブックコンピュータカンパニー2部5課統括係長石田高英氏。手に持っているのは、当時実際に使用したマイク。バンドのドラムの音を拾うためのマイクだという

[遠藤] 最初に「バッテリーが少なくなりました」という声を聴いた時は、本当にビビビッときました。それで、「バッテリーの充電が完了しました」と聞くとホッとする。当時、すでにこの声は誰の声?というので盛り上がったのですが、公表するのは今回が初めてですよね。

[商品企画部プロモーション課朝倉美和さん(以下朝倉さん)] 初めてです。本邦初公開。

[遠藤] 声の主である茂木さんにお聞きする前に、まず“声”を入れることになった経緯から。

[石田氏] 実は、今日は来ていないのですけれど寺田肇という者が考えたんです。

[朝倉さん] 寺田さんのコメントが来ているので読み上げますね。「当時、異動してきたばかりの私は、なぜか初代505のソフトウェアのプロジェクトリーダーという大役を仰せつかり、日夜資料を読んだり、まとめたりしていました。そのときに、どこからともなく聞こえてくる気だるい声の『バッテリーがいっぱいになりました』の声、波形でいえば、羊羹が並んでいるような抑揚のない声。それを聞くたびに、全くやる気が失せていくような声でした」。

[遠藤] 羊羹というのは、矩形波みたいなということですかね。

[朝倉さん] 「周囲の新人に聞くと、“BatteryScope”の声とのこと。まさかそのまま商品にはしないよねと思ったら、そのままの予定だという。それはあまりに許せない、なぜか説明できないけど許せない。新しい声を入れようと」。

[遠藤] その矩形波は、誰の声だったんですか?

[朝倉さん] プロの人の声だったようです。「企画の課長に話を持ち込んだら、コスト意識がなっていない」と怒られちゃったそうです。「数週間粘ってみたがラチが明かない。とうとう設計でやると啖呵を切ってしまいました。昔の先輩にスタジオの借り方を聞いて、声優の当たりの付け方を聞くうちに、そう熱くならずにできる範囲でやってみて、満足いかなきゃ金をかけてみたらと諭されて、まずはやってみることになりました。同時期にバイオチームに異動してきた石田さんが録音機材を持っているということで、遠いところを持ってきてもらいました。場所は会議室」。その頃、バイオチームは湘南テックというところにあったのです。

[遠藤] バイオは湘南生まれであると。

[朝倉さん] 「声優さんは、いつも電話の取次ぎなどで声を聞いていた茂木さん。人はどう思っていたかは知りませんが、私にとってはとても“癒し系”の声の持ち主。まずはテストだからということで、お2人に集まってもらって録音開始となりました。言葉尻などを合わせながら何度か録音。湘南テックの前を通る東海道線が通り過ぎるのを待って録音を繰り返しました。よくよく聴くと、狭い会議室特有のエコーと空調の音、かすかな線路の音が入っていると思います」。

[遠藤] 線路の音も入っているんですか?

島田プレジデント
ちょっとのぞきに来たバイオノートブックコンピュータカンパニーの島田啓一郎プレジデント。ほかにも、茂木さん来社を聞きつけて部屋を訪れる人多数

[朝倉さん] 石田さんは本格的な録音機器を持ってきたのだそうです。

[遠藤] 「生録マニア」って昔ありましたけど、デンスケを肩から担いだりして。

[朝倉さん] 「録音が終わって試しに再生してみると……、『いい〜〜っ!』絶対これしかないと思い、ナニゲに『いまさら時間がないのでこのまま使うかも知れませんけどいいですね?』と言うと、戸惑いつつも快い返事をいただきました。まさか、本当にそうなるとは思われていなかったかもしれません。ということで、採用して現在に至っています」。

[遠藤] おーっ。その後のバイオノートにはすべて入っている?

[石田氏] 1997年以来、変わっていません。


有名ミュージシャンも惚れた!!

[朝倉さん] 音声ファイルのタイムスタンプは1997年8月13日14時22分48秒とありますね。

[石田氏] その前日か2日前かに録音したんですね。実際に録音に使ったのはデッキではなくてバイオノート705。トータルで1時間くらい録音しましたかね。ミソなのは、茂木さんが緊張しないようにということで、最初はテストだって言ったんですよ。寺田が「テスト」だと言ってて、僕もテストだと思っていたんです。

[遠藤] はめられたんですね。

[石田氏] そうなんですよ。僕も、本番だったらもう少しまじめに録音したのに(笑)。

[遠藤] それで、いよいよ茂木さんの登場ですが、“声”の出演という話は、突然言われたのですか?

[茂木優理子さん(以下茂木さん)] 1週間ぐらい前に。でもあくまでテストしたいからと。そのとき設計の補助をしている女性は私1人だったので、私しかいないのかなって。

[遠藤] 学生時代に声優のアルバイトをやっていたとか、そういうのはあるんですか?

[茂木さん] 一切ないですよ。

[遠藤] じゃあ生まれついての癒し系の声。

[2部6課統括課長末吉隆彦氏(以下末吉氏)] マシンの検証中のときは、あちこちでバッテリーのあの声がするわけですよ(笑)。そのたびにビビビッとくる。

末吉氏
茂木さんの退職時の上司、2部6課統括課長末吉隆彦氏

[遠藤] 本人としては?

[茂木さん] 検証をしているマシンもそうですが、みんなが実際に使っているマシンからもするんですよね(笑)。まさか商品に載るとは思っていなかったですね。

[遠藤] ギャラはもらったのですか?

[茂木さん] それが……。

[遠藤] 何もなし?飯1回とか、そういうのすらない?

[茂木さん] 主人にちょっと「ボーナスをもらってこい」と言われましたけど(笑)。

[遠藤] 録音風景としては、どんな感じだったんでしょう?

[茂木さん] 結構、石田さんは、もうちょっとここは声を上げてとか言ってました。

[石田氏] 僕が言ってた?

[茂木さん] ニコニコしてとか。

[末吉氏] 石田さんはノリノリだったと。

[茂木さん] 最後はふっと消えるようにとか(笑)。

[石田氏] 僕もそのとき異動してきたばかりで、まともな仕事ができなかったから……。

[遠藤] 製品にいざ入ったときの感じというのは?

[茂木さん] 最初のときはうれしかったんですけど、たぶん次の機種が出たら変わるのかなと思っていたので、まさかずっと使われるとは。

[遠藤] ご主人は「ギャラよこせ」以外は何か言われましたか?

[茂木さん] とりあえず、うちにあるバイオは気持ち悪いから音を切っておけよとか言われて……。自分でもちょっと何か落ちつかなくなりますが。

[遠藤] そもそも声でアラームをするパソコンってそれまであったんですかね?それと、充電完了時に、ここまで明確にメッセージするのは珍しい。ノートっていえば、会議中にピーピーピーピーという印象ばかりが強かったでしょう。

[末吉氏] まわりの音で、会議中かどうかを察知する?

[朝倉さん] 「会議中申しわけありませんが、バッテリーが……」(笑)。

[末吉氏] 当時私は、バイオ『PCG-C1』をやっていたんですけれども、顔認識の機能があったのをご存じですか?

[遠藤] もちろん。本人でないとマシンが使えないという。

[末吉氏] あそこで出てくる声も茂木さんなんですよ。「認識しました」とか、いろいろなメッセージがあるんですが、そのときはもう彼女はノリノリでしたね。

[茂木さん] それは、本当のスタジオで録ったんですよ。

録音風景その1
録音風景その2
録音風景その3
1999年5月に発売したバイオC1Sでは、“MOTION EYE”による顔認識機能をサポート。その機能用の音声メッセージの録音風景

[遠藤] そのときも何ももらえなかった?

[茂木さん] そのときもない。

[遠藤] 意外にケチですね(笑)。

[石田氏] そのときは、いろいろ録ったんじゃないんですか?

[茂木さん] そうなんです。「今度は可愛い声でやってみて」とか、でも、「できません」とかね。

[遠藤] ちなみに、男の声でという意見は全然なかったですか?

[末吉氏] 皆無でしたね。

[遠藤] 社内外の反響としては?

[茂木さん] ある有名なミュージシャンの方が末吉さんと連絡をとられてたときに、「留守番電話の声を録ってほしいと思いました」と言われたとか。

[遠藤] ミュージシャンも気に入るなんて、凄いですね。それにしても、国内のバイオノートすべてに入っているとなると、どのくらいの数になるんですかね?

[朝倉さん] これまでだと、相当な数になりますね。


なお、3月18日発売の月刊アスキー4月号の付録CD-ROMに、茂木さんから月刊アスキーの読者への一言が入っている。

4人で記念撮影
左から島田プレジデント、石田氏、茂木さん、小西氏
茂木さんとツーショット
茂木さん(左)と遠藤編集長のツーショット。ヨーロッパ向けの製品には、ドイツ・フランスの茂木さん的な方の声が入っているという。アメリカ向けはプロの声

(月刊アスキー 遠藤 諭 / 編集部 中西 祥智)




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