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【Macworld Tokyo 2002 Vol.2】大盛況ながらも寂しい(?)エキスポに

2002年03月23日 15時09分更新

文● 千葉英寿

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今回のMacworld Tokyoは事前に同社からのアナウンスや報道などでもあったように、新しいハードウェアの発表は行なわれなかった。例年はなんらかの大きな発表のあった東京開催だっただけに、昨日は休日を利用してやってきた来場者で賑わったものの、どことなく寂しい雰囲気の漂う会場となった。

東京ビッグサイトで開催されるの初めて
Macworld Tokyoが東京ビッグサイトで開催されるの初めてだ

アップルコンピュータは、縮小傾向にあるエキスポ会場にあって、ひときわ大がかりなブースを用意した。Movie、Photo、Musicの3つに分けられた巨大なカウンターブースに大量の新しいiMacを設置して来場者を出迎えた。黒いスウェットシャツを身につけたMr & Missジョブス(=説明員)も大勢投入しており、初心者からプロフェッショナルまでさまざまなタイプがいる来場者に丁寧に応対していた。また、中央の巨大なステージでは、新しいiMacの特徴や機能を紹介するデモンストレーションを始め、iMac、Digital HUB、Mac OS Xと定期的にデモンストレーションを行なっていた。

全体の3分の1はアップルブース
巨大なアップルブース。会場全体の3分の1は占めるだろうか?
新しいiMacが見たくてやってきたという女性2人組
新しいiMacが見たくてやってきたという女性2人組。Mac OS Xの操作感に驚嘆の声を上げていた
ステージは常に満席状態
新しいiMacを始め、最新のプロダクツやテクノロジーを紹介するステージでは常に満席状態だった

基調講演で紹介された製品やテクノロジーもブースで紹介

また、基調講演で紹介された製品やテクノロジーも各ブースで紹介されていた。Bluetoothテクノロジーについては、キーボードのUSBポートに接続した『Bluetooth USBアダプタ』とMac OS X対応の『Bluetoothソフトウェア』を使ったデモンストレーションを行なっていた。なお、このBluetooth USBアダプタはアップル製ではなく米D-Link Systems社の製品とのことだ。

前日の基調講演で発表となったBluetooth USBアダプタ
前日の基調講演で発表となったBluetooth USBアダプタ。サイズは親指程度といったところ

Bluetoothは周辺機器とパソコンなどを接続するための2.4GHz帯域を用いる無線伝送方式で、ノキア、エリクソン、インテル、東芝、IBMの5社が設立した“Bluetooth SIG”によって仕様策定が進められている。ワイヤレスの標準規格としてはIEEE802.11b(AirMacの規格)と競合と見る向きもあるが、半径10m以内の範囲で最大1Mbpsの伝送速度でデータの送受信を行なうスペックから考えれば、IEEE802.11bとは十分棲み分けが可能なソリューションと言える。

デモは、Bluetooth Ver1.1機能を搭載したNTTドコモの64k PHS“ブラウザホン”の『パルディオ 633S』を使用したモバイルインターネット接続を行なっていた。PCカード型PHSなどの未対応など、現在、Mac OS Xには決定的なモバイル・インターネット接続のソリューションが欠けている。より有効なモバイル・コンピューティングのソリューションが必要とされており、これはそのひとつの回答となりうるだろう。

Blootoothのデモは1ブースのみ
広大なアップルブースにありながら、Blootoothのデモは1ブースのみだった

PDAとの連携では、Mac OS X対応の『Palm Desktopソフトウェア』とソニーCLIEとのHotSyncを行なっていた。また、Mac OS X v10.1.3搭載し、Bluetooth USBアダプタを装着したMacintosh同士でファイル共有を行なうことができるということだ。

もうひとつの新しいプロダクトである『Apple Cinema HD Display』も展示されていた。見た目はこれまでのApple Cinema Displayとほとんど変わらないが、1920×1200ピクセルのスクリーン解像度による色再現性、160度の視野角など、どれをとっても他のディスプレーとは一線を画している。色管理ソフトウェアのColorSyncでCinema HD Display用のプロファイルが自動生成されるのも、プロフェッショナルのクリエイターにとっては魅力だろう。

しかし、これほどのスペックでも見るべきコンテンツがなければ意味をなさない。まして、決して環境が良いとは言えないエキスポ会場ではその良さを知るすべのなかった。唯一、横一線に並べられるDockアイコンの多さに驚嘆したことぐらいだろうか? 価格も44万9800円と、一般には手の出る価格とは言えない。そういう観点からみても、同製品はまさにプロフェッショナルなものと言えるだろう。

Apple Cinema HD Display
Apple Cinema HD Display。Adobe InDesignなどのレイアウトソフトやFinal Cut Proなどのビデオ編集ソフトなど、プロが使って初めて分かる製品と言えるだろう

このほか、10GBになったiPodも展示されていたが、このiPodに関連してサードベンダーのブースで面白いモノを見つけた。三洋電機のブースでは、iPodの基地ともいうべきか、iPodをラジカセ化するものというべきか、ユニークな製品を展示していた。製品名などはなく『iPod専用スピーカ付きキャリングバック』となっていたが、FMラジオと最大出力2.5w+2.5wのスピーカーを搭載しており、中央にiPodを収めることができる。これはあくまで参考商品であり、発売時期はおろか発売自体も決定していないが、今回、来場者に意見を聞いて判断材料にしたいとブース担当者は語ってくれた。中にはMDやカセットをつけて欲しい、という要望もあったという。

iPod専用スピーカ付きキャリングバック
iPodをラジカセ化してしまうiPod専用スピーカ付きキャリングバック

サードベンダーも最新テクノロジーを披露

アップルブースだけがMacworld Tokyoではない。マイクロソフト、ファイルメーカー、アドビシステムズ、マクロメディアといったサードベンダーも各社の最新テクノロジーを披露していた。

マイクロソフトは、先頃、Mac OS XバージョンとしてリリースされたMicrosoft Office Xをはじめ、Windows Mediaなどのテクノロジーも紹介していた。

なぜかカップルの姿が目立ったマイクロソフトのブース
なぜかカップルの姿が目立ったマイクロソフトのブース

ファイルメーカーは特徴的なブースでFileMaker各製品を紹介していた。FileMaker Mobile for i-modeでは、簡単なクリック操作とレイアウトの追加だけでiモードページのサイトマップの自動生成が行なえる。また、Excelデータの直接取り込みできるので、すぐにデータをiモードから活用できる。さまざまな活用方法が想定でき、グループワークや営業支援といったオフィスでの活用にも威力を発揮するだろう。

FileMaker Mobile for i-modeのデモ
特にFileMaker Mobile for i-modeのデモに注目が集まっていた

シマンテックはMac OS X対応となった『Norton Internet Security』や『Norton SystemWorks』を紹介していた。Norton Internet SecurityはADSLなどの常時接続環境においてセキュリティに威力を発揮する。おなじみのウィルス対策ソフトのNorton AntiVirus、個人用のファイアーウォールであるNorton Personal Firewallの搭載はもちろんだが、本バージョンより『Norton Privacy Control』が加わった。Norton Privacy Controlは、クレジットカード番号やパスワードなどの個人情報の流出を防ぐプライバシー保護や興味のないバナー広告などを遮断できる広告ブロック機能を持つ。

シマンテックは4月18日に発売する製品
シマンテックは4月18日に発売する各製品をデモンストレーションしていた

圧倒的な展示はグラフィック系ベンダー

こうしたいわゆる一般ユーザー向けの各ベンダーを圧倒するかのように怒濤のブース展開をしていたのが、アドビシステムズやマクロメディアをはじめとするグラフィック系のベンダーだろう。

マクロメディアブースでは、先頃、発表され、3月29日の発売開始を目前にした『Macromedia Flash MX』のデモンストレーションを行なっていた。Flash MXは、QuickTime、Windows Mediaなどのストリーミングビデオの対応など、より強化されたリッチコンテンツやアプリケーションの開発に欠かせない製品となっており、ウェブデザイナー必須のツールと言える。Windows版のトライアル版はすでに同社ウェブサイトからダウンロードできるが、Mac OS X版については、今回のMacworld Tokyoにも間に合わなかった。同ブースで熱心にデモを見ていたウェブデザイナーの男性は「Mac OS Xのトライアル版CD-ROMを期待していたががっかりした」と語ってくれた。

Flash MXを中心にデモ
マクロメディアでは、最初のMXシリーズとなったFlash MXを中心にデモを行なっていた。

アドビシステムズは、2つの大きなステージを設けでデモンストレーションを行なっていた。Graphics/DTP Theaterでは、『Adobe InDesign 2.0』、『Adobe Illustrator 10』といったパブリッシング向けのソフトウェアを紹介していた。また、もう一方のVideo/Web Theaterでは、『Adobe AfterEffects 5.5』や先日、リリースされたばかりの『Adobe GoLive 6.0』、『Adobe LiveMotion 2.0』などのデモを行なっていた。

特に映画やゲームなどのエンタテイメント・コンテンツを制作する上で不可欠と言えるモーショングラフィックスやビジュアルエフェクツの制作ツールであるAdobe AfterEffects 5.5の展示スペースの近くには、向かい側の3DCGソフト『Maya』を紹介するエイリアス・ウェーブフロントのブースを始めとして、3DCGや動画系のソリューションが集まっており、矮小化されたCGワールドが展開されていた。

アドビシステムズ ブースで
アドビシステムズ ブースで、ひとたびデモが始まると前の通路が不通になるほどの人垣ができた

そのエイリアス・ウェーブフロントでは先だって同社ウェブサイトからのダウンロード提供を開始した『Maya Personal Learning Edition(PLE)』のCD-ROM版を配付しており、配付時には大変な人だかりとなっていた。Maya PLEは、体験版とは言っても『Maya Complete』のすべての機能が体験できるもので、もともと100万円近くする製品だけに注目度は高い。また、同CD-ROMにはウェブでは用意されていなかった日本語ドキュメントが添付されており、さらに注目が集まったといえるだろう。

エイリアス・ウェーブフロントのブース
Maya PLEの配付に大変多くの来場者が集まったエイリアス・ウェーブフロントのブース。3DCGへの関心の高さが伺える

ソフトウェア・トゥーのブースでは、『Maya for Mac OS X』の販売代理を手がけており、Mayaのデモを行なっていた。また、Mac OS X版の『Media 100 i version 8』を紹介していた。ノンリニア編集システムとして知られる同製品だが、ウェブやDVDと表現の場が広がるビデオ編集の世界に呼応した形へと変化しており、QuickTime、Windows Media、RealPlayerなどに対応したストリーミングメディア・プロダクション・システムと紹介されていた。

CGアーティストの永田太氏を迎えてセミナー
Maya for Mac OS Xの販売代理を手がけるソフトウェア・トゥーでは、CGアーティストの永田太氏を迎えてセミナーを行なっていた
『Media 100 i version 8』Mac OS X対応を果たした『Media 100 i version 8』
Apple Solution Experts Shoecase
Apple Solution Experts Shoecaseではクリエイティブツールの数々が紹介された

数少なかったハードウェアベンダーの中でひときわ目立っていたのが、沖データ。製品紹介よりもスペースを取って行なっていたGood Morning Projectでは、次世代のプリンターとして、4つのプロトタイプモデルから来場者に好みのものを選んでもらうアンケートを行なっていた。展示されたプロトタイプは、チームユースパネルタイプで下2段がペーパーカセットで上はスキャナーとなっているGMP011、チームユースコンボタイプで移動可能なGMP016、パーソナルユースアームタイプで、ノートパソコンの上の空間を活用した省スペースモデルのGMP001、最も現行製品に近いイメージのパーソナルユースLCDタイプのGMP004。GMP004はモニターの後ろから出力されるイメージとなっている。ブース担当者によれば、製品計画が具体的にあるわけではなく、MICROLINEの今後の方向性を占うリサーチだ、と説明してくれた。

沖データブース
沖データブース。左奥より、プロトタイプモデルのGMP011、GMP016、GMP001、GMP004

Mac OS Xにヒラギノフォントを提供した大日本スクリーン製造ブースでは、ヒラギノのファミリーフォントである「千都フォントライブラリー」のOpenType41書体をPro書体対応で、2万296文字をサポートするという。また、プロカメラマンが撮影するデジタルカメラのデータをワークフローの中で確実に運用できるデジタルカメラ用画像最適化ソフト『ColorGenius DC』も紹介していた。

大日本スクリーン製造
大日本スクリーン製造のOpenTypeヒラギノファミリーは7月にリリースされる
ColorGenius DC
ColorGenius DCでは現在のところ、ニコンD1X、キヤノンEOS 1D、EOS D30のデジタルカメラをサポートしている

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