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“ケータイ国際フォーラム”が開催──「若者の携帯コミュニケーションはつながりを確認しているだけ」と村上龍氏がコメント


2002年3月28日

3月26日から3日間、京都市の“パルスプラザ”などを舞台にして“ケータイ国際フォーラム”が開催された。メイン会場となるパルスプラザで行なわれた展示会には145の企業と団体が出展。天龍寺や京都リサーチパーク、けいはんなプラザなどの会場を使って行なわれるセミナーでは、韓国、中国、インドなど世界7ヵ国から出席者が招かれた。

ケータイ国際フォーラム実行委員会・委員長の立石義雄氏
ケータイ国際フォーラム実行委員会・委員長の立石義雄氏(京都商工会議所副会頭)は冒頭のあいさつで、「京都をはじめとした関西エリアが技術力と感性でケータイ産業を牽引していくことに期待する」と語った

イベントのタイトルが“ケータイ”となっているのは、対象を携帯電話に限らず、PDAやその他のモバイル機器も含めた情報機器の総称としているためである。取り扱う取り扱うテーマも幅広く、関連イベントとして“デジタルフロンティア京都”のような、デジタルアーカイブ産業をテーマにしたものも開催されている(27日に開催)。また、イベントの開催に先立ち、26日にけいはんなプラザ・メインホールでオープニングシンポジウムが開催されたが、その内容もコミュニケーションから世界のIT産業まで、幅広い内容を取り上げるものとなった。

最初に行なわれた記念対談では、作家の村上龍氏と立命館大学政策科学部の細井浩一教授が登場し“コミュニケーション・スキル”をテーマに意見交換した。

作家の村上龍氏と立命館大学政策科学部の細井浩一教授が記念対談
記念対談では作家の村上龍氏と立命館大学政策科学部の細井浩一教授が“コミュニケーション・スキル”をテーマに若い世代のコミュニケーションのあり方を語った

村上氏は、コミュニケーションの本質は「ただのつながりを求めるのではなく、情報が得られる関係にある」と定義する。さらに、そこから生まれる人的ネットワークに魅力を感じるとした。「政府や地域団体などが主体となってネットワーク社会を構築しようとしているが、トップダウン型の方法は間違っていると思う。ネットワークとは個々人のパワーから生まれるもので、実際に携帯電話をはじめとした個人を結ぶツールの登場がネットワークを成長させてきた」。

また、現代のコミュニケーションのありかたについても、ニューヨークのソーシャルワーカーが発表した資料を元に分析した。「人には強い結びつきと弱い結びつきがあり、家族や会社関係のような強い結びつきの中では、あうんの呼吸で話が通じるため情報は少なくなり、かえってコミュニケーションの質は落ちる。それに対し、半年から年に1度しか会わない友人とのコミュニケーションのほうが、効率を求めるせいか圧倒的に質は高くなる。現在の若い世代の携帯電話を使ったコミュニケーションは、強い結びつきを確認するためのツールでしかなく、それだけでは問題があると思う」。

作家の村上龍氏
結びつきを確認するためだけのコミュニケーションには問題がある、という村上氏

細井教授は村上氏の指す、若い世代の小さな結びつきの強いコミュニティーを“プチグループ”と名付け、ぬるま湯のようなコミュニケーションに浸っていると指摘。そこから脱出するのにケータイやインターネットが使われるのかと村上氏に問いかけた。「そもそもの問題として、プチグループでは明確な目的意識を持つとグループから浮くので、意識的あるいは無意識にゆるいコミュニケーションをするようになっている。すでにスキルはあるのに、コミュニケーションの質が高まらないのは、目的意識が欠けているから。これは日本全体において言えることでもある。明確な目的意識を持って突き進みたい人も多くいる。そういう人達を支援するツールとして、ケータイやインターネットが力になっていくと思う」(村上氏)。

対談は村上氏のライフワークである経済にも拡がっていった。細井教授は、携帯電話を使ったコミュニケーションが増えることで、産業全体が豊かになっていくはずだが、実際にはそうではないと指摘。「CDや本が売れなくなった分がデジタルで売れているかというと、インフラやキャリアーにお金を払っているだけでコンテンツには支払っていない。そういう状況はおかしいのではないか」とした。それに対し村上氏は、まずはコンテンツの豊かさという定義が難しいとした上で「リッチメディアという言葉があるが、情報量の多いハリウッド映画のようなものが豊かなコンテンツだとは思わない。年のせいもあるかもしれないが、情報量が少ないがゆえに、想像力を刺激されるコンテンツもある。先端技術を使って意識的に感じる豊かさと、無意識で感じられる豊かさをどうしていくかということが、産業全体を考える前に必要かもしれない」と述べた。

続く基調講演では、ノキア・ジャパン(株)のヘイッキ・カスコ社長が“世界のケータイ産業とアジア”というテーマで、世界の携帯電話産業を解説した。ワールドワイドな視野で分析すると、市場成長率が最も高いのはヨーロッパだが、アジア市場全体も成長が期待されており、なかでも期待されているのはインド市場だという。ノキアは世界でもトップシェアを誇る携帯電話企業だが、日本でのシェアは驚くほど低い。今後は、次世代技術(3G)の進展とともに拡大していきたいとコメントした。

ノキア・ジャパン(株)のヘイッキ・カスコ社長
ノキア・ジャパン(株)のヘイッキ・カスコ社長は、携帯電話市場の世界トップ企業でありながら日本での市場はまだまだ小さく、次世代技術と共に拡大していきたいとコメント
ノキアの製品展開の歴史
ノキアの製品展開の歴史

パネルディスカッションでは“アジアの連携によるIT産業の発展に向けて”というテーマで、中国とインドから携帯電話に関わるキーマン4名がパネリストとして参加した。コーディネーターを務めたのは京都に拠点を置くスタンフォード日本センターの今井賢一理事長。今井氏は、アジアの経済は多様性があるハイブリッド型で、文明と文化がITインフラに強い影響を与えてきたとし、「例としてはアジアは器用な指使いができることからサムカルチャー(親指=サムを使って操作するとことから生まれた造語)が発展し、携帯電話産業に影響を与えている。それが、さらに欧米市場にも影響を与え、キャピタルの投資図も変化している」とコメント。

中国とインドの携帯産業関係者を招いて行なわれたパネルディスカッション
中国とインドの携帯産業関係者を招いて行なわれたパネルディスカッション。テーマは“アジアの連携によるIT産業の発展に向けて”

中国移動通信聯合会の副会長である倪健中氏は、「中国はWTCの加盟やCDMAサービスのスタートで、移動体通信市場は大きく変化していく。情報端末ユーザーは現在2億人で、8億人の潜在ユーザーがいる。中国の移動体通信市場の発展は日本にとっても新たなビジネスチャンス。隣国としてぜひチャンスをつかんでほしい」と述べた。同じく中国から参加している北京インターネット研究所CEOの劉東所長は「携帯電話産業ではチャイナテレコムの再編や外国企業が参入できるよう規制緩和を行ない、すでにビジネスも始まっている。サービスでは日本のiモードに似た1.5Gのサービスをスタートしており、毎月500万人のユーザーが増えている」と急成長ぶりを紹介した。

コーディネーター役を務めたスタンフォード日本センターの今井賢一理事長
コーディネーター役を務めたスタンフォード日本センターの今井賢一理事長
中国の携帯キャリアーとその再編
中国の携帯キャリアーとその再編を図示

続いてインド大使館公使のS・スンダリーシャン氏は、インドの情報産業の現状を語った。「インドでは電話の普及率は5%で、携帯電話にいたっては0.5%しかないが、それだけに市場開拓の余地があるということで、世界中から期待されている」という。インド第2位のソフトウェア会社であるウィプロジャパン(株)のシュリーダラ・シェティ代表取締役は、インドはまずソフトウェア力で世界の地位を高めていくと語った。「人口の数という意味で、世界の2大国であるインドと中国は、この数年間で情報産業を基盤に大きく発展を遂げている。お互いにそれを意識しており、近い将来ソフトとハードというそれぞれの技術力で提携していく可能性がある」としている。

インド大使館のS・スンダリーシャン公使
「日本はシリコンバレーばかり見ず、インドのソフト産業にも注目してほしい」とコメントする インド大使館のS・スンダリーシャン公使

パネリストらの話を聞くかぎりでは、日本のケータイ産業はアジアの中では重要視されつつ、技術としては成功しているが、産業としてはパワー不足なので心配という印象を受ける。パネルディスカッションのまとめで今井氏は、キーワードとして“共に勝つケータイ経済”を掲げたが、日本が共に勝つ仲間となるためには、どうやって産業として成長させていくかが鍵になりそうだ。

(野々下裕子)


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