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【Symbian Dev Expo 2002レポート前編】携帯電話向け『Symbian OS』開発者向けイベントが開催


2002年4月26日

4月23、24日(現地時間)、ロンドンで携帯情報端末向けOS『Symbian OS』の開発者向けイベント“Symbian Developer Expo 2002”(以下Symbian DevExpo)が開発元である英シンビアン社の主催で開催された。その模様を塩田紳二氏のレポートでお送りする。

会場は“ExCel”という、マイクロソフトが喜びそうな名前
会場は“ExCel”という、マイクロソフトが喜びそうな名前。ロンドンの中心部から地下鉄で30分ぐらいのところにある

PDAから生まれたSymbian OS

Symbian OSについては名前ぐらいは聞いたことがあるという方もいるとは思うが、ほとんどの方は初めて聞く名前かもしれない。これは、元々は英サイオン(PSION)社というイギリスのメーカーが自社のPDAや業務用端末のために開発した『EPOC』というOSがそのベースになっている。

英シンビアンは英サイオンのソフトウェア部門を母胎とし、フィンランドのノキア社、スウェーデンのエリクソン社といったヨーロッパの携帯電話メーカーと、米モトローラ社、松下通信工業(株)、および英サイオンが出資して設立した会社で、Symbian OSの開発、ライセンシングを行なう会社である。

Symbian OSは現在、ノキアなどのPDA機能付き携帯電話に採用されている。ヨーロッパのPDAでは、Palm OSやWindows CEを採用したものもあるが、携帯電話と一体化したノキアの『Nokia 9210i Communicator』がわりとポピュラーである。ある意味、ヨーロッパで一番人気のPDAともいえる。Symbian OSはPDAのOSがベースということもあって、サイオンのPDAで使われてきたスケジューラーや住所録プログラムなどのアプリケーションもある。また、Javaの実行環境を持ち、標準搭載のウェブブラウザーにはノルウェーのOpera Software社の『Opera for Symbian OS』を採用している。

簡単にいうと、仕様が公開された携帯電話向けのOSというわけで、この上でサードパーティソフトウェアハウスや各種ハードメーカーがビジネスを行なっているわけだ。Symbian DevExpoは、そうした開発者向けのもので、コンファレンスやワークショップで、さまざまな技術について解説が行なわれた。また、展示スペースもあり、サードパーティーが展示を行なっていた。

展示会場の様子
展示会場の様子。ここはあまり大きくなくて、1つの展示会場は幕張メッセの1つのホールよりも狭い感じ

高機能GSM携帯電話に採用が進むSymbian OS

さて、このSymbian OSだが、国内ではPDAである『PSION』や『revo』ぐらいしかマシンが入手できないために、知名度はあまり高くない。また、ヨーロッパで主流だが、日本では使われていないGSM方式携帯電話に採用されているためにそれらの端末が日本に入ってくることもない。

ところが、ヨーロッパでは、事情が違う。デジタル化の遅れた米国と違ってヨーロッパはGSM方式で日本のようにデジタル化が急速に進んだ。“SMS”(Short Messaging Service)と呼ばれるテキストメッセージングが人気のサービス(日本のショートメールに近い)だ。昨年あたりから“GPRS”(General Packet Radio Service)というパケット通信システムが導入されたため、画像や音声を使ったデータ通信も盛んになってきた(MMS:Multimedia Message Serviceというマルチメディアメールサービスも開始されている)。

その中で、高機能携帯電話に採用されているのがSymbian OSなのである。ヨーロッパでも日本の携帯電話と同様に簡単なショートメッセージ程度の付加機能しかない携帯電話もある。しかし、中級機あたりでは、WAPや電子メール機能が使え、さらに高級機になるとPDA機能が付く。GSM方式では、電話番号などの加入者情報は“SIMカード”と呼ばれるメモリーカードに記録されるために、SIMカードを差し替えるだけで、ユーザーが端末を自由に交換できる。このため、(携帯番号を持たない)携帯電話機単体のビジネスが成り立っている。

ノルウェーのMobile Media社の『Grand Rapid』
Nokia 9210上で動作しているノルウェーのMobile Media社の『Grand Rapid』。Javaで書かれたウェブブラウザーで、アプリケーションの開発プラットフォームにもなっており、公開しているAPIに準拠してプラグインやハンドラーを作ることで、さまざまなネットワークアプリケーションを構築できる
Bluetoothで接続するGPSモジュール
Bluetoothで接続するGPSモジュール。これによりGPSアンテナの向きや位置に関係なく、PDA/パソコンを配置できる

日本の場合、キャリアーとの契約を含めた購入か、契約後に機種交換を行なうしか新機種を入手する方法がなく、携帯電話の価格が契約込みのために、契約奨励金などにより、安価に携帯電話が販売される反面、携帯電話単体のビジネスが成り立ちにくい構造になっている。つまり、低価格で端末を売らざるを得ないために、コストを切りつめる必要があり、メモリーを大量に載せるなどの構造を持った機種が作りにくいのである。かつて日本でもPDA機能付き携帯電話が登場したが、どれもPDAとしてはお粗末な機能しか搭載していなかった。また、それでも通常の端末よりも価格が高いこともあってほとんど市場に受け入れられなかった。

しかし、ヨーロッパでは、数万円以上もする“高級”携帯電話が販売されており、これらにSymbian OSが搭載されているのである。そういう背景もあって、ノキアの9200シリーズはヨーロッパで一番人気のあるPDAになったわけだ。

Symbian OSは、実はかなり国際語対応が行なわれており、コンファレンスでは日本語化((株)管理工学研究所)や日本語入力システム(オムロンソフトウェア(株)の『Wnn』)なども紹介されていた(詳細は後編でレポートする)。会場には、モトローラや米テキサス・インスツルメンツ社といったARMコア系組み込み向けプロセッサーのメーカーや、Symbian OS上のアプリケーションを開発するソフトハウスなどが展示を行なっており、規模はそれほど大きくないものの、かなり熱気のあるイベントであった。

テキサス・インスツルメンツが開発者向けに作った、携帯電話向けチップ“OMAP”の評価キット
テキサス・インスツルメンツが開発者向けに作った、携帯電話向けチップ“OMAP”の評価キット。PDA型で上部に拡張スロットやSDカードスロットがある。携帯電話やPDAメーカー向けのほか、Symbian OSやPalm OSなどのソフトウェア開発者向けでもある
OMAP評価キット用のカメラモジュール
OMAP評価キット用のカメラモジュール

ただ、日本のプレスで参加したのは筆者ぐらいで、あとはメーカーなどからの参加である。プレスルームでは唯一の東洋人といった状態である。しかし、意外に“iモード”や(株)NTTドコモは有名で、ことあるごとにiモードはどうだとか、ドコモ以外に携帯電話の会社があるのか? などと聞かれてしまう。

展示会場にはアクセスやアプリックスが出展

展示では、ノキアや英ソニ ー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ社のSymbian OS搭載携帯電話を使って、さまざまな展示が行なわれている。ただし、ヨーロッパ系のデベロッパーが大半で、我々にはなじみのないメーカーが多い。日本でも知られているところでは、MacintoshやPlayStation 2などの開発環境『CodeWarrior』で有名な米メトロワークス社や携帯電話向けストリーミング配信技術の米パケットビデオ社、日本からは携帯電話向けウェブブラウザーの(株)アクセスや携帯電話向けJava実行環境の(株)アプリックスが展示を行なっていた。

シンビアン社CEOのデヴィッド・レビン氏
シンビアン社CEOのデヴィッド・レビン氏。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏はもとより、 米PalmSource社のデヴィッド・ネイゲル氏に比べてもおとなしい雰囲気。これがヨーロッパテイストなのか

初日のキーノートスピーチでは、シンビアンのデヴィッド・レビン(David Levin)CEOに続いてソニー・エリクソンの井原氏(ソニー副社長)がスピーチするなど、国内では知名度が低いわりには、意外に日本勢が活躍している。ただ、どうも日本のメーカーはSymbian OSにあまり積極的ではないようだ。三洋電機(株)も『Lyra』と呼ぶSymbian OS採用のPDA試作機を持ってはいるが、いまだ製品化に至っていないし、シンビアンに出資している松下通信工業もここではプレゼンスが低い。

もっともSymbian OSは、GSMシステムと共に育ってきた経緯もあり、現状では日本のメーカーから見てあまり必要を感じていないのかもしれない。市内の携帯電話ショップを見ても、松下や三菱の端末はあることにはあるのだが、ごくわずか。ほとんどはノキアややエリクソン(現在ではソニー・エリクソン)、モトローラの端末である。日本の携帯電話メーカーはヨーロッパではあまりいいポジションにいないという感じだ。だから、検討はするものの、あまり必要を感じていないし、米国市場を見るとPalm OSやWindows CEのほうが気になるといったところだろう。

三洋電機のSymbian OS搭載PDA試作機『Lyra』
三洋電機のSymbian OS搭載PDA試作機『Lyra』
Lyraの上で動作しているSymbian OS
Lyraの上で動作しているSymbian OS。GUI部分はUIQと呼ばれるもの

しかし“FOMA”などの第3世代(3G)では、スタートラインはみな同じ。特に高速なデータ通信機能を生かすには、PDAとの融合が不可欠のように思える。かつて有線の長距離電話会社を取材したときに聞いたことだが、通信ビジネスは音声通信で立ち上がったとしても、データ通信が主体にならないと一定以上の成長ができないという。それは1人のユーザーが1日に通話のために使う時間は限られており、さらに帯域を広げる必要もないからだという(広帯域音声通話ってのはたしかにない)。

しかし、データ通信はユーザーが寝ている間も行なわせることができ、さらに帯域を広くする要因もある。そう考えると携帯電話市場も、一定以上の普及があった後は、データ通信を可能にしなければ成長が難しくなるわけである。

さて、米国ではこうした傾向に対応するための端末用OSとして、Palm OSとWindows CEが注目されているが、それがヨーロッパではSymbian OSなのである。来るべき“スマートフォンの時代”、そのためのOS競争はすでに始まっているのだ。

(塩田紳二)


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