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リンク許可問題、日弁連は「あまり深く考えていなかった」


2002年7月2日

日本弁護士連合会(日弁連、東京都千代田区)がウェブサイトのリンク方針を「原則自由」と改めた問題で、同会広報室長の鈴木啓文弁護士がASCII24編集部の取材に応じ、「あまり深く考えずに、厳しいリンク許可条件を掲げていた。これからきちんと議論していきたい」と語った。

この問題は、日弁連のウェブサイトがリンクの許可条件として、リンク元サイトの管理者の実名と電話番号を同会に事前報告することや、「日弁連が不適切と判断したもの」へのリンクを断るなど、きわめて厳しい内容を掲げていたものだ。これに対してネット掲示板などを中心に「リンクの制限は表現の自由の侵害ではないか」といった批判が集中。日弁連は6月13日、ウェブサイト上の使用条件の文章を「当HPへのリンクは、原則として自由です」と改め、実名や電話番号などの要求を撤回していた。

これに対し、ASCII24にコメントを寄せた後藤斉東北大助教授は「事前報告制や不当な個人情報の収集を取りやめたことなどは肯定的に評価できる。しかし、『原則として自由』といいながら『日本弁護士連合会が判断し、リンクの解除を求めたときには、ただちにこれに応じていただきます』としている点は、依然として不当ではないか」と指摘していた。

鈴木弁護士によると、日弁連が厳しいリンク許可条件を掲示したのは、昨年起きたある“できごと”がきっかけだったという。マルチ商法まがいのとある業者がウェブサイト上で、自社の合法性を証明するため、同会のウェブ上の文書を引用する形でリンクを張っていた。これにどう対応するか。インターネットに詳しい弁護士にも相談するなどした結果、リンク許可条件を掲示した方がよいのでは、という結論になったという。各地の弁護士会のウェブサイトを参考にし、その中でももっとも厳しい内容となっていた第一東京弁護士会のものを流用。今年5月1日のウェブサイトのリニューアルにあわせ、今回問題となった厳しいリンク条件を掲示したという。

日弁連が入る弁護士会館
日本弁護士連合会が入る東京・霞ヶ関の弁護士会館

鈴木弁護士とのその他の一問一答は次の通り。

[ASCII24] リンクに条件を付与すること自体に問題がある、という議論が起きていることはご存じでしたか。

[鈴木弁護士] そうした問題になっていることは、把握していませんでした。日弁連にはコンピュータ委員会という部会があるのだが、ここでの話し合いは弁護士のコンピューター利用が中心で、そうした問題は議論されてこなかった。またウェブのリニューアルの際、ITワーキンググループを作ったが、ここではサイトの内容改訂が議題で、同様にリンクの問題についての議論は行なわれていなかった。

[ASCII24] 今回、急きょ方針を転換することになった理由は。

[鈴木弁護士] ネット掲示板のほか、紀藤正樹弁護士らからも指摘をいただき、対応をきちんと考えないといけないということがよくわかりました。とりあえず問題のあるところを急いで直さなければならないと考え、あのような形となったわけです。

[ASCII24] 修正は不十分なものに止まっているという批判も起きていますが。

[鈴木弁護士] 現在掲示しているのは、日弁連の最終的な結論ではありません。これからさらに議論をしていこうと動いています。基本的には、原則自由としてリンクの条件を入れる必要はないと考えています。

[ASCII24] どのような場所で議論を進めていくのですか。

[鈴木弁護士] 先ほど挙げたITワーキンググループで議論をしていきたいと思います。これは執行部の直属で、9人の弁護士と5人の職員が参加している。この部会のメーリングリストにすでに今回の件についての情報をすでに流しておりますし、これからここでリンクの問題を議論していくことになると思います。

日弁連のリンク条件再考に敬意を表する――後藤斉東北大助教授

リンク問題に詳しい東北大の後藤斉助教授に、あらためて今回の問題について聞いた。

「問題になったリンク条件は、深く考えなかった結果とはいえ、個人情報の保護が広く話題になっている折のことでもあり、個人情報の収集について認識が甘かったと言わざるをえない。また、法的根拠を自覚しないまま他者になんらかの行為を強制しようとした点も、法律家としてあまりにも軽率だったのではないか。とはいえ、日弁連がリンク条件を見直すのであれば、その姿勢には深く敬意を表したい」

「この機会に、世間の誤解を解くためにも、法律の専門家の立場から、いくつかの点について法律上の解釈を明確にしてもらえれば有益であろう。(1)リンクは著作権法上問題があるか(2)他の法律によってリンクを制限する根拠があるか。あるとすれば、どのような場合か(3)リンクを張った旨の通知を義務づけるなど、リンクの条件としてなんらかの行為を強制できる法的な根拠があるか」

「私見によれば、リンクにからんで起きるトラブルの大部分は、リンクそのものではなく、リンク周辺の文章の表現などに起因する。ウェブサイトの運営者としては、そのような場合に備えて法的責任を明確化した警告文を用意したくなる気持ちも理解できる。しかし、ウェブの閲覧者の大部分は善意の人であり、過度に強圧的な態度はサイトやそのオーナーの印象を損ねる方向に働くことを理解すべきだろう。とりわけ日弁連は人権や表現の自由に関して社会を啓発する立場にあるのだから、他者の表現に関して制約的であるよりは、最大限に寛容であることを望みたい」

(編集部 佐々木俊尚)


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