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WIDEプロジェクト、“IETF 横浜セッション”を開催


2002年7月5日

WIDEプロジェクト(※1)は3日、“NetWorld+Interop 2002 Tokyo”において“IETF 横浜セッション”を開催した。同セッションには、14日から開催される“第54回 IETF 横浜会議”のホストを務める、WIDEプロジェクトメンバーの慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純と、助教授の中村修助氏、そして東京大学大学院情報理工学系研究科助教授の江崎浩氏の3名が出席し、同会議の意義やトピックス、見所などについて説明した。

※1 WIDEプロジェクト :WIDEは“Widely Integrated Distributed Environment”の略。オペレーティングシステム技術と通信技術を基盤とした新しいコンピュータ環境の確立をめざす研究プロジェクト。代表は慶應義塾大学の村井純教授。

東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩助教授
東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩助教授

セッションの始めに、江崎氏がIETFについて説明を行なった。同氏は「“IETF(Internet Engineering Task Force)”とは、インターネット技術の標準化機関。標準プロトコルの開発、選定を目的としている。“遅い理想より早い現実”という精神のもと、情報を無償で公開し、普及したものを標準として採用する。非会員制で、自由に参加してオープンに議論できる。公用語は英語。主にメーリングリストで議論を行ない、年に3回、フェイストゥフェイスミーティングを行なう」

「ほかの標準化機関と大きく違うところは、ボランティアベースで運営しているということ。個人の意見、約束や責任、パーソナリティーを重視して、技術に重きを置いた議論を行なう。所属組織や肩書きなどは知ったことではない。これまで検討されてきた議題は、IPv6やIPNG選定、VPN、Wireless Internetworking、サブIP、GMPLSなど多岐にわたっている」

WGの様子
WGの様子

「IETFの組織は、一番上に“IESG(Internet Engineering Steering Group)”があり、その下に約130のワーキンググループ(WG)が、技術別の8つのエリアに属する形で存在する。WGは、具体的な検討を行なう分科会で、Chater(趣意書)に、どういうものをいつぐらいまでに出すという目的を明記して活動を進めていく。Chaterの目的が完了すれば、WGはその役目を終えて解散する。WGを結成するには、課題についてBOF(Birds OF Feather)という形で会合を2回開く。そこで、WGとして活動するに値する課題だと認められればWGとなる」

「開発された技術仕様は、“Internet-Draft(I-D)”と“RFC(Request For Comment)”という形で無償で公開する。I-Dは検討中のもので、掲載から6ヵ月経過すると消滅する。RFCは正式に認められたドキュメントアーカイブで、シリアル番号が付与される。シリアル番号は、現在4000番が近づいてきている。RFCは“Proposed Standard(PS)”“Draft Standard(DS)”、“(Full)Standard(S)”いう3つの段階を経て標準化に至る。標準プロトコルのほかにも、共有しておいたほうが良い情報を“Informational(I)”RFCとして保存したり、実験的に残しておいたほうが良い情報を“Historic(H)”RFCとして保存することもある」

IETF横浜会議のスケジュール
IETF横浜会議のスケジュール

「会合は年3回、うち2回は米国、1回は米国以外の国で開催する。14日に開催する“第54回 IETF横浜会議”は、アジアで初めて行なわれるIETF会議。スケジュールは、日曜から金曜の5日間で、9時から22時までWGとBOFのセッションが組まれる。初日には、IETFについてのオリエンテーションが行なわれ、夜にはレセプションもある。アルコールは有料。セッションを行なう部屋には、およそ100〜400人が入れる。基本的にテーブルはなく椅子のみ。質問は、立ててあるマイクのところまで来て行なうのが作法なので、質問が多い場合には行列ができる」

「水曜の夜には、社交行事としてソシアルイベントを行なう。来場者に日本のことを知ってもらうために企画を考えているが、何を行なうのかは秘密なので、ぜひ実際に見に来てほしい。IETF横浜会議の事前登録はすでに終了しているが、当日に会場で登録することもできる。当日登録の場合、参加費は600ドル(約7万2000円)。なお服装は、Tシャツ、半ズボン、サンダルといったラフなものが多い。ただし、汚い格好はしてはいけない。スーツにネクタイで来ると浮くので避けたほうが良いというのは、“RFC3160”の2.3章に明記されているドレスコード」

「WGでは、資料の配付などは行なわないので、ノートパソコンと無線LANアダプターを用意することをお勧めする。日本での開催ということで、すべてIPv6で接続できる環境を提供する。とにかく、IETFというのがどんなものなのか、実際に生で見ていただければと思う。予習として、話し合われる技術の内容が分かることが前提。さまざまな分野の当事者やキーパーソンが集まって議論を行なうのが主眼となっているので、邪魔にならないように参加していただきたいと思う」と語った。

慶應義塾大学環境情報学部の中村修助教授
慶應義塾大学環境情報学部の中村修助教授

次に中村氏が、IETF横浜会議を開催するにあたっての準備について説明した。同氏は「海外から来る客のためにも、できるだけのおもてなしをしたい。議論をするためのミーティングスペースやソシアルイベント、ウェルカムパーティーなどは当然として、さまざまな場所で接続可能なインターネットコネクティビティーを提供する」

会場までのネットワークデザイン
会場までのネットワークデザイン

「大手町から会場のパシフィコ横浜まで、Gigabit Ethernetを2本引いた。会場内では、すべてのミーティングルームとロビー、および廊下において、有線/無線LAN接続の環境を提供する。またノートパソコンのバッテリーのために、廊下に2m間隔で電源タップを置こうかと考えている」

成田空港第1ビル
成田空港第1ビル。黄色で囲まれている個所がホットスポット

「会場内でインターネットに接続できるのは当然。このほかにどこで接続可能にするかを考えたとき、村井さんに『空港からホテルまで』と言われたので、これはやるしかないと思い、どこでも接続可能な無線LAN環境に挑戦した。成田空港は第1ビルと第2ビルでそれぞれ接続可能なエリアを用意した。WEPや暗号化などは行なっていないので、ノートパソコンを開けば接続できるはず」

“成田エクスプレス”内に設置された無線LAN設備
“成田エクスプレス”内に設置された無線LAN設備

「空港でインターネットが接続できるのも当たり前なので、NTTドコモとJRと郵政省の協力を得て、成田エクスプレスにも接続できる環境を用意した。車内の荷物置き棚の一番端に、無線の基地などを搭載した。インターネット接続にはFOMAを用いている。この施設を、成田エクスプレスのすべてのグリーン車に搭載した。このほか、東京駅や横浜駅でも無線LANのホットスポットを始めた。IETFの期間中は、WEP認証などを必要とせずに利用できるようになっている。サービス終了はIETF横浜会議が終了するまでなので、ぜひお試しいただきたい」と述べた。

慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授
慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授

最後に村井氏が、今回日本でIETF会議が開催されることになった経緯などについて説明した。同氏は「IETFに日本人として最初に参加した時は私ひとりで、それからしばらく同じ状態が続いていた。変化が訪れたのは1992年で、議題は“インターネットはもはや米国のものではない”というものだった。もともとエンジニアに特化したグループなので社交性がなく、次はあの国でやろうといったエンターテインメント性も愛想も全然なかった。なので、3回に1回は米国以外の国で開催ようと呼びかけた。ただし開催国は、RFCを書いている人間がたくさんいるところなどに限定した。米国以外の国で開催した最初のIETF会議は、1993年のオランダ・アムステルダム会議」

「オランダの技術者たちのような貢献をしなければ、日本で開催されることはないだろうと思っていた。そうこうしているうちにIPv6が盛り上がり、日本人の参加者数も多くなってきた。今ではRFCの数も、米国以外の国では2位か3位になっている。参加者数も3桁を超しているし、これはやれますよということで日本での開催となった」

「7月1日の段階で、参加者数は1679名。アメリカからは約300名、韓国は120名――アジアで開催したかいがあった。例年の参加者数を見ると、やはり9月11日のテロ事件以降は落ち込んでいる。最高では約2800人になったこともあったが、国外で開催するIETF会議では1200人から1500人前後が目安。聞いた話では、プロトコルをディファインするのに必要なWGのキーパーソンは必ず来ると言っているので、きっとプロダクティブなIETFになるだろう」と語った。

(編集部 田口敏之)


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