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「ブロードバンドはインフラの中のインフラになる」と孫正義氏――“SOFTBANK COMMERCE Convention 2002”で

2002年07月05日 19時15分更新

文● 編集部 田口敏之

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ソフトバンク・コマース(株)は3日、“NetWorld+Interop 2002 Tokyo”に併せて、幕張メッセのイベントホールで、業界著名人によるコンベンション“SOFTBANK COMMERCE Convention 2002”を開催した。その中でソフトバンク(株)代表取締役社長の孫正義氏は、“通信革命~ソフトバンクグループのブロードバンド戦略”と題して、ブロードバンドの今後について語った。

孫氏
ソフトバンク(株)代表取締役社長の孫正義氏

同氏は「ネットバブルは終わったとよく言われているが、まだ始まったばかり。社名の終わりに“~トロニクス”などと付けただけで株価が倍になるような時代もあったが、そういう状況は長く続かないし、実体のないものが消えるのは当たり前。だからといって、エレクトロニクスが途絶えたかというと、全然そんなことなはない」

「インターネット、ブロードバンド、デジタル情報革命。これらが人類の21世紀、22世紀と続くであろう科学テクノロジーの進展の中核を担うであろうことは間違いない。我々は一貫してIT革命を信じ、新たな革命的なサービスを、絶え間なく提供していくべきであろう。その中でヤフー(株)とソフトバンクは、No.1の企業集団を目指したい」

「21世紀の主役はデジタル情報革命が担う。これは単に10年や20年のことではない。グーテンベルクは印刷機を発明し、それまでは直接会うか手紙を送るかという1対1の情報伝達が基本だった時代に、1対多数の情報伝達手段を提供した。その後、グラハム・ベルが電話を発明し、また無線機やTVなど、さまざまな発明が世界を変えてきた」

「そしてデジタル情報革命は、消費者にパソコンという新しい道具を提供した。インターネットによって時間も距離も関係なく、必要をさまざまな形で得られるようになった。インターネットにはパソコンだけでなく、やがてあらゆる電子機器を接続できるようになるだろう。通信を行なうのもパソコン対パソコンではなく、いつでもどこでも誰とでも、というユビキタスなものになるだろう」

「そのうち腕時計の裏側で、脳の微量な電気信号を読み取り、テレパシーのように通信できるというバイオコミュニケーションも可能になるかも知れない。そのための基礎技術も、すでに開発されている。これから50年、100年という年月の中で、そのような技術が生まれてくる。ブロードバンドはそのための基礎インフラとなるだろう」

ユーザー
ブロードバンドの普及の予測

「ブロードバンドを導入する世帯は、3~4年のうちに3000万世帯を超えるだろう。現在、ダイヤルアップで接続しているナローバンドのユーザーが2500万世帯ほどいるので、もしかしたら切り替えは、もっと早いかも知れない。e-Japan重点計画で言っている4000万世帯という目標は、決して無茶な数字ではない。なぜダイヤルアップからブロードバンドに早く切り替わるのかというと、ダイヤルアップだと通信料だけで5000円はかかり、通信事業者に支払う料金と合わせると、月7000円ほどになってしまう。一方ADSLは、平均的な料金では、通信料もすべて込みで3000円前後」

「日本は世界で唯一、ナローバンドよりも安くブロードバンドを提供している国である。いつからそうなったのか、なぜこのように革新的な価格が生まれたのかは、私の口から言うまでもない。革命というのは既得権益を持たない民衆から生まれる。韓国や米国にはまだ世帯数でおよばないが、日本も決して捨てたものではない。数年のうちに、日本が世界一のブロードバンド大国と言われるようになってもおかしくはない」

「ブロードバンドは、電話をはじめとして医療、音楽、テレビ、eコマースなどの基盤となり、人類社会のインフラの中のインフラになるだろう。ソフトバンクは、ブロードバンド事業者の中でナンバーワンを目指す。他のADSL事業者は、NTTのナローバンド時代のインフラを用いて、安易なブロードバンドインフラのスタートを切っているが、革命的なものは安易からは生まれない。弊社はNTTのインフラを用いず、100%IPで接続できる回線を作った。ピンと来ないかもしれないが、専門家なら、これがどれだけ革新的なものなのか理解できるだろう」

ナンバーワン「ブロードバンド上のプラットフォームとしてもナンバーワンになりたい。ブロードバンドを線路に例えると、プラットフォームは駅。線路だけでは鉄道事業は成り立たない。乗り降りするための駅が必要」と孫氏

「そしてブロードバンド上のプラットフォームとしてもナンバーワンになりたい。ブロードバンドを線路に例えると、プラットフォームは駅。線路だけでは鉄道事業は成り立たない。乗り降りするための駅が必要。そのために、Yahoo!やE*TRADEなどといったサイトを提供している。そしてプラットフォーム上で提供するコンテンツやサービスでも、ナンバーワンの企業集団を作りたい」

ラインアップ
ブロードバンド戦略

「商品ラインアップも充実させる。先日、“Yahoo! BB”で12MbpsのADSL接続サービスを発表したが、今後、法人向けサービスとしてVPNサービスを本格的に開始する。また、ネットワークデータストレージサービスも開始する予定。ブロードバンドを生かして、CD-ROMからデータを読み込むよりも速いネットワークストレージとのアクセスを可能にする。今後は、ローカルなHDDにデータを格納するのは間違った作法になるだろう」

「21世紀、22世紀を見込んだ国家体系として、常時接続が可能な社会が生まれてほしい。そのために日本政府は作らなくても良いダムに回す予算があるのなら、それを少しでいいからこちら回してほしい。順番を少し変えるだけで、何十兆円という日本の産業基盤を立ち上げることができる。日本の将来のためにも、政府には早く目覚めてほしい。世界一のブロードバンド大国を目指すのは今からでも決して遅くない」と語った。

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