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高校生のプログラミングコンテスト“第8回SuperCon”開催――コンピュータ大好き“少年・少女”たちの夏の甲子園

2002年08月10日 18時21分更新

文● 編集部 田口敏之

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東京工業大学学術国際情報センターが主催する、スーパーコンピューターを使った高校生のプログラミングコンテスト“第8回スーパーコンピュータコンテスト SuperCon2002”の本選と表彰式が9日、東京都目黒区の東京工業大学百年記念館で開催された。協賛は日本SGI(株)、コンパックコンピュータ(株)、日本電気(株)、アジレント・テクノロジー(株)、(財)蔵前工業会。

SuperConとは、スーパーコンピューターを使用して、与えられた課題を解くプログラムを作成し、その解答の正確さや処理速度の速さを競うコンテスト。使用するスーパーコンピューターは、東工大が所有する米SGI社の『SGI Origin 2000』。同製品は、256個のMIPS R10000プロセッサーを搭載し、153GFROPSで処理を行なえる。第8回目となる今回は、全国から36チームの応募があり、その中から予選を通過した高校生チーム10チームと、東工大の大学生チーム3チームが本選に臨んだ。

仮想的に2種類に分類したアミノ酸の“疎水基(H)”と“親水基(P)”を2次元で配列し、基底状態のタンパク質構造を構成する
仮想的に2種類に分類したアミノ酸の“疎水基(H)”と“親水基(P)”を2次元で配列し、基底状態のタンパク質構造を構成する
モデル図
基底状態のHP配列のモデル図

本選期間中、出場者には“粒子タンパク質の基底状態探索”という課題が与えられた。これは、仮想的に2種類に分類した、タンパク質を構成するアミノ酸の“疎水基(H)”と“親水基(P)”を二次元的に並べてタンパク質構造(折りたたみ構造)を作り、配列の中で基底状態(安定した状態)と相関関係があるという、HとHが隣り合って接触する数(HH接触数)が最も多くなる配列を構成して、HH接触数を求めるプログラムを作成するというもの。

使用するプログラミング言語はC言語で、MPI(Message Passing Interface)ライブラリーを用いて、32個のCPUによる並列処理を行なう。参加者は、初日である5日に、UNIXやエディターの使い方、MPIライブラリーの使い方などといった講習を受け、8月6日から8日までの3日間のうち、朝8時から夜8時までの12時間、合計36時間で、本選用のプログラムを作成した。

本選では、

  • 問題A……2種類のHP配列(長さ36、長さ44)を構成した際の、それぞれの最適解を求める。プログラムの実行時間は3分以内
  • 問題B……2種類のHP配列(両方とも長さ100)を構成した際の、それぞれの次善の解を求める。プログラムの実行時間は5分以内

という、最適解を求める問題と次善の解を求める問題が2問ずつ、計4問が出題された。問題A、Bともに正解が100点で、プログラミング実行にかかった時間順序で10点ずつ減点される。なお出場者に、配列の長さやHとPの順序などは事前に知らされていない。

プレゼン
それぞれのチームが、自分たちのプログラムのアイデアとアルゴリズムなどについてプレゼンテーションを行なった

9日の本選では、それぞれのチームが、自分たちのプログラムのアイデアとアルゴリズムについてプレゼンテーションを行なった。今回、本大会では初めてとなる女性だけのチーム、八代工業高等専門学校“pooh”が本選に出場した。彼女らがプレゼンテーションの最後に、本大会のキャッチフレーズである“コンピュータ大好き少年たちの夏の甲子園”を、“コンピュータ大好き少年・少女たちの…”に変えてほしいという提案をすると、場内から拍手喝采が起こった。

女子チーム
本大会初の女性だけのチーム、八代工業高等専門学校“pooh”の3人。左から木村香奈さん、松下奈央さん、中村麻衣さん

本選で優勝したのは、熊谷西高等学校“RedStar”チームの大久保孝一郎さん。4問ともに最適な解を出し、400点満点を獲得した。問題を解く方法として、考えられる組み合わせを全て探索する“全探索”のアルゴリズムを採用し、検索中に無駄な組み合わせを切り捨てることによって効率化を図ったという。また問題Bでは配列が長くなるため、配列を一定の長さに区切って問題Aのアルゴリズムを利用したという。優勝者には、日本SGIからUNIXワークステーション『Silicon Graphics O2』が贈られた。

優勝した
優勝した、熊谷西高等学校の大久保孝一郎さん。後ろにあるのが、大会で使用したスーパーコンピューター『SGI Origin 2000』

優勝した大久保さんは、「1人でここまでこれるとは思っていませんでした。この結果には自分でも満足しているので、いい一週間が過ごせたと思います」と述べた。また将来について尋ねたところ「プログラミング関係の仕事に就きたい」という答えが返ってきた。

和泉氏
日本SGI代表取締役社長の和泉法夫氏

大会を終えて、日本SGI代表取締役社長の和泉法夫氏は「今回の問題となったバイオやゲノムなどの分野は、日本の科学技術の振興の上で大変重要なテーマだと思うので、非常にタイムリーな企画だったと思う。この大会には3回続けて参加しているが、年々素晴らしくなるので、これからも楽しみ」と述べた。

藤原英二工学博士
東京工業大学教授で学術国際情報センター長の藤原英二工学博士。高校生らに「毎年言っていることだが、是非東工大に来て下さい。だからといって、受験の時手加減するわけではありませんが」と呼びかけた

また東京工業大学教授で学術国際情報センター長の藤原英二工学博士は「若い時期にこういった何らかの問題に集中して取り組むのは重要なこと。研究をやっていると、集中力と目標に対してあきらめないという執念が大切。こういうこと経験されたことは、将来研究者になろうが、社会に出ようがかなり重要性が高い。これからも新しいことを提案していっていただきたい」と語った。

集合写真
全員で記念撮影

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