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放送用機器の国際展示会“Inter BEE 2002”開催


2002年11月23日

(社)電子情報技術産業協会(JEITA)が主催する、放送用機器の国際展示会“第38回 2002年国際放送機器展”(略称:Inter BEE 2002、International Broadcast Equipment Exhibition 2002)が20日〜22日の日程で、日本コンベンションセンターにおいて開催された。入場無料ということもあり、会場にはプロの放送関係者だけでなく、放送業界に関心のある学生/一般人の入場者も数多く見られた。

会場で特に目立ったのが、デジタルハイビジョン放送向けのHD放送向けカメラなど業務用カメラの新製品、デジタルエフェクト関連製品、高画質MPEG-4(Advanced MPEG-4)技術のデモなどだ。

高解像度&高画質+αな注目製品
――業務用カメラ

水平走査線が525本の標準放送(SD放送)より多い、750pや1125iなどの高解像度/高画質な記録が可能なHD放送対応の業務用カメラは、ソニー(株)/ソニーマーケティング(株)、松下電器産業(株)、キヤノン(株)/キヤノン販売(株)など多くのメーカーのブースに展示され、もはや珍しい存在ではないという印象だ。

ワイヤレスカメラシステム
2.4GHz帯の無線で映像を伝送する日立国際電気の“ワイヤレスカメラシステム”。動作中はかなりユニットが熱くなる
受信機
こちらは受信機

そんな中、(株)日立国際電気に出展されていた“ワイヤレスカメラシステム”はひときわ目を引く存在だ。日立国際電気と英LINK社が共同開発したもので、2.4GHz帯の無線通信を使い、撮影した画像を内蔵MPEG-2エンコーダーユニットでデジタル信号に変換して離れた場所の受信機に飛ばすというもの。TELEC(財団法人テレコムエンジニアリングセンター)で技術基準適合証明を取得しており、免許不要で利用できる。カメラ後部、バッテリーユニットの後ろにバッテリーよりも一回り大きな送信機(重量は1.05kg)を装着し、40ms(約1フレーム)という低遅延で、見通し1km程度の距離まで無線で映像を飛ばすことができるという。通信速度は最大32Mbpsで、会場では10〜12Mbps程度の高画質/滑らかな映像をワイヤレスで送信できることをデモしていた。2003年の発売予定で、送信機と受信機のセットで1000万円程度になる見込み。

MPEGトランスミッター
ソニーの無線伝送システム。価格は360万円程度で、2003年春の製品化を予定

無線送信のカメラは、ソニーも参考出展している。同様にMPEG-2エンコーダーでA/D変換し、300〜500m程度離れた受信機で受けられるというもの。同社のテストでは、ゴルフ場のショートホール程度ならグリーン上で撮影した映像をティーグラウンドで受けることができるという。転送速度は最高10〜12Mbps程度で、ユニットの重量は1.7kg程度。2003年春に製品化の予定で、価格は360万円程度になりそう、とのこと。

高感度カメラ
NECの高感度カメラ『NC-D900W』

さすが業務用カメラ、というデモを見せていたのが日本電気(株)の高感度カメラ『NC-D900W』(参考出品)だ。暗幕の内側で、2ルクスというわずかな光に照らされた観覧車のおもちゃは、カメラ右手ののぞき窓から肉眼で見ても輪郭がぼんやりと分かる程度で、色はまったく識別できない。このカメラは+66dBの感度向上により、ごくわずかな光でもしっかりと色を再現できる(カメラ上部のディスプレーに表示される)。従来、暗視カメラと言えば赤外線でのモノクロ映像を想像するが、2003年2月に発売、4月出荷予定というこのカメラが普及すれば、その常識も覆ることだろう。価格は400万円を切る予定とのこと。

カメラバランスシステム
エス・ジェー・ピー/独ザハトラーのバランスシステム『Artemis Cine/EFP』。歩くのは少々つらそうだが、止まった位置でカメラを動かすのは片手でひょいと行なって見せた

最近は、業務用カメラでも小型/軽量化が進んでいるが、それでも予備バッテリーやモニター用の外部ディスプレーを一緒に携帯することを考えると、重くかさばることは変わらない。そんな悩みを解消するのが、“カメラバランスシステム”と呼ばれる体に取り付けたハーネスとバネ付きアームのセットだ。重量は肩と腰のベルトにかかり、腕はカメラアングルの移動のみに専念できるので、カメラ本体とディスプレー、バッテリーなどを合わせて25kg程度あるシステムでも、手早く操ることができる。写真は独ザハトラーの『Artemis Cine/EFP』で、輸入販売元の(有)エス・ジェー・ピーのブースでデモしていたもの。2003年発売予定で、予定価格は520万円程度。430万円程度のモデルも販売予定とのこと。

プレステ2でもMPEG-4再生が可能!?
――ソフトウェアの注目製品

アップルブース
意外なことにInter BEEへの出展は今回が初めて、というアップルコンピュータだが、見る人を惹きつけるデモのうまさはさすが

Inter BEEにブースを構えるのは初という、アップルコンピュータ(株)は、映画制作の現場にも使われたと言うデジタルエフェクトツール『Shake 2.5』のデモに多くの来場者が関心を寄せていた。

HD MPEG-2ソフト再生
Pentium 4-2.80GHz(HT対応機)で20Mbpsの高解像度MPEG-2データがほぼフルフレーム再生できていた

ほかにも、映像の合成/加工から、フィルムのキズや変色の補正まで、さまざまなメーカーがプロユースのソフトウェアも多数出展していたが、中でも特筆ものは、(株)アイ・ビー・イーのソフトウェアMPEG-2デコーダーだ。DVD-Video規格のMPEG-2ではなく、ビットレート20MbpsのHD放送向けMPEG-2データ(1920×1080ドット)をほぼフルフレーム(27〜29fps)で再生するエンジンを、「必要は物は世界中から探してくる。もし無かったら自分たちで作ってしまう」という同社の企業精神で、作り出したものだ。再生環境は、Pentium 4-2.80GHz搭載のHT対応機をインテルから借用し、HT機能を使用してデモを行なっていた。用途はHD MPEG-2エンコード結果の確認や、編集(同社はMPEG-2データの簡易カット/トリミング編集ソフトも作っている)時のリアルタイムディスプレーリングなど。「あと少し調整すれば、同じスペックでフルフレーム表示が可能になるが、要望があればすぐにでも出荷する」(説明員)とのことで、価格は10〜20万円程度を見込んでいる。

FACE STATION2
表情の変化をリアルタイムに読み取って、3D CGの顔に反映させる『FACE STATION2』のデモ

会場で随一の大きさと派手さを誇るソニーブースの正面では、深夜番組で見たことのある、リアルタイムに表情が変化する3D CGシステムの次期バージョン『FACE STATION2』(開発元:米アイマティック・インターフェーシーズ社、国内販売元:アイマティックジャパン(株))がデモ展示されている。カメラで被験者の表情をしばらく(数秒間)取り込んでおくと、目/鼻/口/耳/頬骨といった各パーツの左右端と中心など特徴的なポイントを自動的にクリップして、CGの顔が対応した表情に変化する。マーカーを顔に付けたり、キャリブレーション(最初の位置指定)といった手間が不要で、カメラのフレーム内に顔を収めておくだけでソフトが自動認識し、さらに撮影中の表情の変化を学習して、個々人の顔の動きやクセを覚え、より自然な表情の表現になるという。実際デモを見たところ、TVで見ていたCGよりも各パーツの動きに矛盾やぎこちなさがなく、気持ち悪いほどリアルだった。瞬きの回数やまぶたの開き具合に不自然さが残るものの、これらはパラメーターで微調整できるとのこと。価格はソフトウェア単体のウェブ直販価格が29万8000円(ほかにSI経由のシステム販売も予定)で、11月中に出荷を開始する予定。

FlashMotion
従来は手動で輪郭を指定していたが、新しい『FlashMotion』では自動的に輪郭抽出が行なわれ、ほぼリアルタイムでの処理が可能になったという

東芝の『FlashMotion』は、コマ送りの映像を元の絵に重ね合わせて、ストロボ効果のような表現ができるというもの。以前は、背景と重ね合わせたいオブジェクトの境目を手動で指定していたのだが、フレーム間の差分情報を検出することでソフトウェア側での自動処理が可能になり、ほぼタイムラグなしに重ね合わせた映像を出力できるという。デモ機のシステムはPentium III-1GHz程度と、動画処理をリアルタイムに行なうには決してハイスペックではないが、カメラが固定されていれば、フレーム間の自動差分抽出技術がかなり正確に効く。ちなみに、従来の手動処理する製品はNHKに納品して、実際にTV放送でも使われていたそうで、今回の技術も近い将来、各局に導入され、スポーツ中継の新しい見方として定着するかもしれない。

MPEG-4 ASPプレーヤー on プレステ2
プレステ2上で高画質なMPEG-4データが再生できるプレーヤーソフトを沖電気が開発!
ストリーミング再生
日本ではSTBを家庭に導入するよりも、すでにあるゲーム機を利用したほうが現実的という判断は間違いではなさそう

2001年に策定された、高画質化に比重を置いたMPEG-4の拡張規格“MPEG-4 ASP(Advanced Simple Profile)”に対応するハード/ソフトウェアも、今回のInter BEEで目立つ存在だ。沖電気工業(株)は、このMPEG-4 ASPをソニーの家庭用ゲーム機『プレイステーション2』で再生するプレーヤソフトを開発、ブースでデモ展示が行なわれていた。ビットレート1.5Mbpsの映像をストリーミング配信し、ブロードバンド接続ユニットを搭載したプレステ2で再生した映像は、MPEG-2の高画質な映像に見慣れた目には、ややブロックノイズが気になるものの、解像感や動きの滑らかさは上々で、すでに一般家庭に広く普及しているゲーム機をストリーミング受信のSTB(セットトップボックス)代わりに利用できるこのソフトは面白い存在だ。パソコン用のMPEG-4 ASP再生ソフトはすでに配布が始まっており、同社のメディアサーバーは(株)ぷららネットワークスなど一部ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)に導入されているという。今後の動向が楽しみだ。

パソコン関連の展示会とは違い、我々が普段なかなか間近で見ることのない放送用機器を体感したり、目の前で見られるとあって、この業界に少しでも興味を持つ人には実に有意義な内容になっている。カメラを十数m上まで一気に持ち上げて制御するクレーンやリモコンなどの機械的なシステムから、手ぶれした映像を背景の共通するポイントを割り出して自動的にフレーム単位でトリミング位置を調整し、揺れがほとんど見られない映像に修正する“スタビライザー”と呼ばれる映像処理技術まで、アナログとデジタルが高度に融合した映像製作の裏側を垣間見られるイベントだ。

DRIVE-AWAY 150KM-1
閉じた状態から
DRIVE-AWAY 150KM-2
約2〜3分で
DRIVE-AWAY 150KM-3
完全に開く。衛星の位置確定などは自動で行なう。アンプは防滴処理が施されている
エーティ コミュニケーションズ(株)は、スウェーデンSWE-DISH SATELLITE SYSTEMS社の車載用配信アンテナ『DRIVE-AWAY 150KM』を展示。折り畳み式携帯電話かコンパクトのように、リモコンで開閉する(電動式)。完全に開くまでは2〜3分かかる。幅は150cmで重量は250kg。CNNやBBC、韓国KBS/YTNに導入済み。日本での価格は、写真の予備アンプ込みで6000万円程度


光伝送システム
キヤノン(株)の光伝送システム。1080pのHD信号にエンコード、約594Mbpsに圧縮して、最大直線2kmまで空間伝送が可能だという。光伝送と言われると、どうしても遮ってみたくなるが、当然その間は映像配信が途切れてしまう
プロンプター内蔵カメラ
富士写真光機(株)/富士写真フイルム(株)は、スタジオ撮影で原稿を見るために下を向くことなく、常にカメラ目線でも原稿が読めるプロンプター内蔵カメラをデモ展示。下の液晶ディスプレーに原稿が表示され、それがマジックミラーに写って正面を見ながら読める。マジックミラーの後ろにカメラが仕込まれており、この操作は右手のリモコンで行なえる、というもの
MEDIAEDGEデモ
カノープス(株)は、ネットワーク型映像配信システム『MEDIAEDGE』を、圧倒するほどの数のマルチスクリーンを使ってデモ展示。クライアント側にSTBを使った同社の映像配信システムは、大学や劇場ロビーなどですでに導入実績があるとのこと


メディアランナー
ヒビノドットコムは、車に載せたスクリーンでの上映以外に、インターネット経由でストリーミング配信なども行なっている。現在は氣志団/怒髪天/THE PRIVATESなどを放送中
ランニングビジョン
エム・アンド・アイ ネットワークは、声に合わせてキャラクターが動きを変えるリアルタイムCGシステム『Hello Stage』も開発、提供している。なぜか最初から用意されているキャラには、カエルやトラのかぶり物が含まれている。ユニークなチョイスだ
HD-107
この放送中継車は、トレーラーの右側(写真奥)のほうがズンと飛び出して、中に乗り込むと中継用機材が満載されているという仕組みになっている
Inter BEEでは、表示されるデバイスもプロ用の機器が多数展示されている。左は、ヒビノドットコム(株)の“メディアランナー”、中央は(株)エム・アンド・アイ ネットワークの190インチ“ランニングビジョン”。左はディスプレー用の車両ではなくHD放送対応の放送中継車で、(株)テレテックの『HD-107』


BR-DV6000
日本ビクター(株)は、今年のCEATECにも出展していたハイビジョン対応DVカムコーダーのほか、DVビデオカセットレコーダー『BR-DV6000』を参考出品。オプションのネットワークボードを追加することで、DVテープの映像をリアルタイムMPEG-4変換し、ネットワーク上のパソコンにストリーミング配信が行なえる
CX50-100U
(株)ジーベックスは、DLPリア投射方式の50インチプロジェクター『CX50-100U』を4面組み合わせた、100インチ相当の大画面スクリーンを展示。輪郭の非表示領域が1mmと狭く、1024×768ドット相当の高精細表示の特徴と合わせて、監視システムなどに利用されているとのこと。価格は1面あたり400万円


リモコン
操作するコントロールパネルには、ズーミングやカメラの向き以外に、フォーカス位置などの調整も行なえるツマミが多数ある
カメラ
三脚に据えた状態でも、カメラはかなり自在に動ける
レール
上下にスライドするレールに取り付けられたカメラ。高さは5m程度
クレーン
クレーン本体の高さは、およそ10m程度
コントロールパネル
コントロールパネルには、テレ/ワイドのズーミングと、カメラの向きを変える十字キーのみで、レバー自体は前後左右には動作しない

クレーンシステムをじかに操作するなど、めったにない機会だろう。操作系はフライトシムのジョイスティックにも似た簡単な装置だ。上の3枚はサトウ・アイ・システム(株)のリモコンシステムで、三脚に据えつけたカメラを細かく操作するため、コントロールパネルのツマミやボタンは多いが、手の動きに合わせてレイアウトされている。下の2枚はスズキエンタープライズ(株)が展示した和蘭エグリップメント社のクレーン。

(編集部 佐久間康仁)


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