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東京地裁、日本MMOの著作権侵害を認める中間判決──JASRACとRIAJ「高く評価できる」


2003年1月29日

(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)と(社)日本レコード協会(RIAJ)は29日、JASRACとRIAJ加盟レコード会社19社が(有)日本エム・エム・オー(日本MMO)に対して提起していた著作権侵害訴訟(※1)に関して、東京地裁の中間判決(※2)が下されたことを受けて記者会見を行なった。

※1 この訴訟で争われたのは、著作権のうち、複製権/送信可能化権/自動公衆送信権の侵害と、それに関する損害賠償についてである。以下、本記事中で著作権という場合、複製権/送信可能化権/自動公衆送信権を指すものとする。

※2 中間判決とは、民事訴訟法245条に基づき、損害賠償請求の原因と金額に関する争いがある場合などに、原因の部分のみについて判決を下すというもの。

記者会見参加者
左から、レコード会社訴訟代理人の前田哲男弁護士、RIAJ常務理事の生野秀年氏、RIAJ会長の富塚勇氏、JASRAC理事長の吉田茂氏、JASRAC常任理事の加藤衛氏、JASRAC訴訟代理人の田中豊弁護士

この裁判では、日本MMOが提供していたファイル交換サービス“ファイルローグ”によって著作権侵害が行なわれたこと、著作権侵害を行なったのはサービスを提供していた日本MMOであるということ、損害賠償責任を日本MMOと同社代表取締役の松田道人氏が負うことについて争われた。裁判の過程で東京地裁は、“ファイルローグ”で提供されていたファイル名やフォルダー名のリストに市販音楽CDのタイトルや実演者名を表記してはならないという仮処分を出しており、これを受けて日本MMOは4月16日よりサービスを停止している。

今回の中間判決は原告側の訴えを認めるもので、日本MMOと松田氏が損害賠償責任を負うという判断が下された。具体的な損害賠償額については、最終的な判断である終局判決を待たなければならない。なお、現在までの被害額は、JASRACについては2億8700万円あまり、レコード会社についてはRIAJの調査で1億9000万円程度になるという。

著作権侵害の主体は日本MMO

記者会見では、まずレコード会社の訴訟代理人である前田哲男弁護士が、中間判決の概要を説明した。

前田哲男弁護士
レコード会社の訴訟代理人 前田哲男弁護士

この中間判決で明らかになったのは、“ファイルローグ”サービスにおいて著作権侵害の事実があったこと、著作権侵害の主体は日本MMOであること、日本MMOと松田氏に賠償責任があるということだ。前田氏は「4月の仮処分で、著作権侵害の事実認定はある程度示されており、今回は昨年5月に成立したプロバイダ責任制限法(※3)が日本MMOに対する損害賠償にどう影響するかが争点となった。今回の判決で、日本MMOは自ら発信者の役割を果たしており、免責を受けられないと判断された」と、今回の中間判決について説明した。

※3 「特定電気通信役務提供者の損害賠償の責任の制限および発信者情報の開示に関する法律」のことで、特定電気通信事業者(ISPなど)は、流通している情報により生じた損害を賠償する責任がないこと、情報の流通によって損害を受けた人は関連する特定電気通信事業者に発信者に関する情報の開示を求められることなどが規定されている。

次に、JASRACの訴訟代理人である田中豊弁護士が、今回の判決の持つ意味について説明した。

田中豊弁護士
JASRACの訴訟代理人 田中豊弁護士

田中氏は、「今回の中間判決には法解釈論としての意味、ビジネスとしての意味、国際的な著作権保護に対する意味がある」と語り、それぞれの意味について説明した。

田中氏の説明によれば、まず法解釈論としては、ファイル交換ソフトとインデックスサーバーを利用する場合、ファイルを交換した利用者に限らず、ファイル交換ソフトやサービスを提供している主体(日本MMOやNapsterなど)の著作権侵害が認められた。つまり、新しい技術を利用してビジネスを立ち上げる際に、既存の権利を保護する技術を持たない場合にはサービスの提供は違法ということになる。また、米国のNapster判決と同様の判決が出たことで、日本のネットワークにおける著作権保護が米国に劣るものではなく、国際的な著作権保護の流れに対応した判断がなされたという。

田中氏はこれらの点に加え「今回の裁判は賠償責任と賠償額を分けて審理することで、迅速な裁判が行なわれた」との評価を示した。

「著作権を盗むことに罪悪感を感じないのは恐ろしいこと」とRIAJ

引き続き、RIAJ会長である富塚勇氏が、今回の判決を受けてのコメントを発表した。

RIAJ会長 富塚勇氏
RIAJ会長 富塚勇氏

富塚氏は田中弁護士と同様、今回の中間判決は明快で、国際的な著作権保護の流れにも対応した正当な判決であると評価した。一方、「こういった判決があるにも関わらず、技術の進歩や消費者の権利と称して著作権の侵害行為を行なう人が非常に多い。著作権を盗むことに罪の意識を感じない人が多いのは恐ろしいこと」と、RIAJの立場から音楽ファイルの違法配布に対する問題を提起した。その上で「人権である著作権を理解していない人が多いことが問題で、こういった判決を契機に著作権教育が必要になる」と、今後の対策の必要性を訴えた。

JASRAC理事長の吉田茂氏は、今回の中間判決について「わが国の著作権制度に照らして当を得た判決」であると評価するコメントを発表した。

JASRAC理事長 吉田茂氏
JASRAC理事長 吉田茂氏

吉田氏はコメントの中で「ファイル交換による違法行為が蔓延しているが、このような違法行為を排除して著作物を適正に利用することは、音楽文化の振興に必要な要件であることを理解してほしい」と語り、現在JASRACが取り組んでいる、著作物の違法利用監視システムや電子透かしの実用実験、ISPとの連携による違法な著作物流通の排除といった、違法行為排除の取り組みを紹介した。今後については「関係団体と連携をとりながら、著作権の保護と利用の円滑化を図り、(JASRACの)使命である音楽文化の普及、発展に貢献したい」と締めくくった。

ビールが有料なら音楽も有料であるべき

記者発表会終了後、JASRAC理事長の吉田茂氏に、現在のファイル共有技術などを前提に、音楽利用の利便性促進についてどのような取り組みを行なうのかについて伺った。

吉田氏は、「音楽流通技術の進歩とそれに対する課金技術の進歩にこれまでは“ずれ”があった。音楽ファイル流通の技術があるにもかかわらず、適正な著作権使用料徴収の仕組みがなかったため、利用者の利便性が損なわれ、違法なファイル共有が行なわれてきたという側面もあるだろう」と、利用者の利便性を促進する必要性があることを認めた。その上で「現在JASRACでは、ウェブサイトでの音楽ファイル利用に関する料金体系や、利用申請や料金支払いを容易にするためのウェブサイトなどを用意し、利用者の利便性を損なわずに音楽を利用できるシステムを用意している。今後もさまざまな技術を検討するつもりだ」と語った。

また、個人のウェブサイトなどを通じて無料で音楽を配布する場合にも、1曲あたり月額150円が課金されるといった料金体系に関しては、「1曲あたり月額150円という料金を安いと見るか高いと見るかは利用者次第。しかし、利用料を明確にしたことで、配布を取りやめる人も出てきている。適正な料金については人によって異なるが、さらなる議論が必要」と、継続的に議論することを示唆した。一方で「たとえば、カラオケ店でビールを飲みながら音楽を利用するといった場合、ビールにお金を払うのは当たり前でも音楽にお金を払うことに違和感を感じる人もいる。音楽もビールと同じように、楽しむにはお金を払う必要があることを理解してほしい」と語り、著作権利用料に関する理解を進めることが必要との考えを示した。

(編集部 阿蘇直樹)


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