フランスのカンヌで現地時間の17日より、モバイル業界最大規模の展示会“3GSM World Congress 2003”(主催IBC Telecoms and Media)が開催中だ。このところのテレコム業界の不振を受け、話題は3Gよりも、既存のネットワークで実現可能なMMS(マルチメディア・メッセージング・サービス)などに集まっている。また、OSでは対シンビアン(Symbian)戦略を強めるマイクロソフトが必死のアピールを行なっている模様だ。
日本からは(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモの代表取締役社長 立川敬二氏などもスピーカーとして参加している同イベント、今年は会期中約2万8000人の来場者を見込んでいるという。5日間にわたるイベントの前半のスポットライトは、OSの覇権を巡ってのマイクロソフトとシンビアンの対立といえそうだ。
マイクロソフトとインテルが17日に発表した“Microsoft and Intel Windows Powered Smartphone Concept Design” |
初日の17日、マイクロソフトはドイツのT-Mobileが同社の携帯電話用OS『Microsoft Windows Powered Smartphone 2002(Smartphone 2002)』を採用すると発表。欧州ではフランステレコム傘下のOrangeに次ぎ2社目、世界では4社目となる。提供開始は今年の夏を予定している。MSとT-Mobileはこのほかにも、マイクロソフトの“MSN Hotmail”と“MSN Messenger”をモバイルで提供するサービス“Pocket MSN”の計画も明らかにした。
また、現在唯一Smartphone 2002ベースのサービスを展開しているOrangeは、新バージョン(コードネーム“SPVx”)の提供計画を発表。同社は昨年11月に英・仏市場でビジネス層をターゲットに第1弾のサービス“SmartPhone SPV”を開始したが、新サービスではエンターテイメント機能を強め、ビジネス層以外の幅広いユーザーの獲得を狙うとしている。ちなみに、Orangeによると、『SmartPhone SPV』は現時点で4万台を販売したという
これに対し、現在携帯電話のOSとしては最大シェアを誇るイギリスのシンビアンは、韓国のサムスン電子社がシンビアンの株式の5%を購入して資本参加することを発表した。サムスンは携帯端末メーカーとしてはナンバー3。これにより、同社は最大手のノキアを筆頭に、モトローラ、ソニー・エリクソン、パナソニック、シーメンスなど主要な端末メーカーの支持を得たことになる。だが、サムスンはすでにマイクロソフトの『Windows Powered Pocket PC』ベースの携帯端末の提供を発表しており、これは引き続き行なう。実際、今回の展示会ではGSM/GPRS対応の『Windows Powered Samsung MIT SGH-i700』も発表している。
『Windows Powered Samsung MIT SGH-i700』 |
Series 60プラットフォーム対応の『Nokia 3650』 | 『P800』 |
また、ノキアはIBMやオラクルとの提携を相次いで発表、いずれもビジネスアプリケーションをモバイルで利用可能にするためのもので、シンビアンにとっては朗報といえる。
マイクロソフトはこの市場では後発となる。新規契約者数の伸びが頭打ちとなった携帯電話業界の既存のパイを奪うため、同社がとった戦略はオペレーターとの提携戦略。マイクロソフトのMobile Devices Marketing Groupのバイスプレジデント、Juha Christensen氏は初日、基調講演の壇上で「音声とデータの統合は大きな機会を提供するものだ。マイクロソフトにできることは、モバイルソフトウェアのプラットフォームを構築してデバイスとサービスの両市場を加速することだけではない。オペレーターやメーカー、アプリケーション開発者、ハードウェアベンダーらと関係を密にして取り組むことだ」と語っている。ちなみに、同氏は2000年までSymbianでexecutive vice presidentを勤め、その後MSに移籍した経緯を持つ。
今回のイベントでは、メーカーの後押しを受けるシンビアン対オペレーター戦略をとるMSという構図が改めて明らかになったといえる。シンビアンはノキアらの強力なバックアップを受けつつも、対MS以外にも経営や収益体制などで不安材料はある。シンビアンによると、2002年、同社OSを搭載した携帯端末は200万台出荷されたという。