東京・有明の東京ビッグサイト(東ホール)において、7日までの日程でICカードやリーダー、ICタグ、関連技術などの総合展示会“IC CARD WORLD 2003”が開幕した。主催は(株)日本経済新聞社。入場料は1500円(一般)。IC CARD WORLD 2003は東2ホールで行なわれ、このほかに第32回店舗総合見本市“JAPAN SHOP 2003”、“建築・建材展 2003”、第19回流通情報システム総合展“RETAIL TECH JAPAN 2003”、“SECURITY SHOW 2003”などが併設されている。
会場で特に目を引くのが、非接触型ICカードの応用製品、ならびに接触型&非接触型を組み合わせたハイブリッドタイプのICカード製品だ。非接触タイプのICカードには、大きく分けて、ISO(国際標準化規格機構)で標準化されたTypeA、TypeB(どちらもISO14443)と、独自方式ながら小額決済システム“Edy(エディー)”やJR東日本の乗車システム“Suica(スイカ)”などに採用され、すでに実績を重ねているソニー(株)の“Felica”の3タイプがある。いずれも共通する原理は、プラスチックカードにコイル(アンテナ)とICチップを埋め込み、コイルに磁界を与えることで誘導電流を起こしてICチップのデータを読み書きする、というもの。最近はアンテナやチップの高性能化/小型化が進み、カードとほぼ同じサイズのカードリーダーに近づけるだけで読み出しが可能になっている。また、会場ではEdyを300円(引換券を持っている招待者には無料)で発行し、会場内に置かれた自動販売機の缶入り飲料(通常価格120円)を100円で販売するサービスを展開して、Edyの便利さ手軽さをアピールしていた。
ただ、確実により多くの情報を交換したい場合には、接触タイプのほうが優れている場合もある。そこで、USBタイプのカードアダプターに非接触式カードをセットして、非接触型カードリーダーに近づける(触れる)方法と、USBコネクターに直接差し込む方法の2つを実現する製品が、大日本印刷(株)のブースで展示されていた。非接触型カード自体も、第3世代携帯電話“FOMA”のSIMカード(電話番号や個人情報を記録した小さなICカード)と同等の小ささで、通常のICカードから切り離して使うため、USBカードリーダーはごく小さくて済む(大人の親指程度)。
もうひとつの傾向が、ICカードの個人認証の省力化だ。インフィニオンテクノロジーズジャパン(株)のブースで見かけたのが、指紋による個人認証のためのセンサーチップを使ったICカードで、オランダの病院で実験的に導入されているという。仕組みはICカード(ICチップのメモリー内)に指紋データや個人情報を登録しておき、ICカードリーダーに差し込んだ状態でカードの反対側にある指紋センサーに指を乗せ、同一人物かどうかを照合するというもの。ただ、このセンサーはコストが高くなる(指紋センサー1つで3000円程度)ため、一般的なクレジットカードへの応用は難しいだろうと同社説明員も話す。より現実的な方法は、面ではなくラインセンサーをカード上に実装して指を滑らせることで、これなら1000円以下のコストで済み、暗証番号を覚えたり定期的に変更する面倒もない。同様の指紋による個人認証システムは、大日本印刷のブースでも見られた。
ビザ・インターナショナルグループのICカードグループ ディレクターの山本正行氏 | ビザ、ソニー、インフィニオン3社の役割を示すスライド |
そのインフィニオンテクノロジーズは、同日東京ビッグサイトの会議室で記者会見を行ない、ビザ・インターナショナルグループ、ソニーと共同で非接触方式と接触方式のICカードを1チップで実現するソリューションを発表し、ビザ・インターナショナルグループが年内に同システムを利用したクレジットカードの発行を目指すことを明らかにした。非接触ICカード方式はソニーのFelicaを利用し、将来的には小額決済機能を盛り込む予定としている。ビザ・インターナショナルグループのICカードグループ ディレクターの山本正行氏は「1チップで非接触/接触の両機能を実現することにより、例えばデータの共有(クレジットカードで引き出した金額をそのまま小額決済に当てる、小額決済分で不足した額を自動的にクレジットの引き落としに回す)など従来にはない利用法が考えられる。また、いずれは交通乗車券システムとの連動もあるだろう。いずれにしても、仕組みを用意しておくことで幅広い利用法が考えられる」と3社協業の取り組みに意欲を見せた。