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ソニー、ラインヘッド方式のインクジェットプリンターの開発を発表

2003年03月06日 19時17分更新

文● 行正 和義

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ソニー(株)は6日、都内で記者会見を行ない、用紙幅サイズの固定ヘッドを採用したインクジェットプリンターを開発したと発表した。現在製品化に向けて開発を進めている。

固定ヘッドプリンター
ソニーが開発中の、固定ヘッドを採用したインクジェットプリンター。本体はアルミケースの内側に置かれており、実物はまったく見ることができなかった

現在主流のシリアル方式のインクジェットプリンターは、紙送り方向と直角に動く印刷ヘッドを用いて、ヘッド上のノズル幅分の印刷を行ない、ヘッドの往復と紙送りを合わせて用紙全体に印刷する。それに対して、ラインヘッド方式は用紙幅と同じ長さにノズルが並んでいるため、動作部分は紙送り機構のみとなり、シリアル方式よりも高速に印刷が行なえるという。2000年7月にキヤノンが“特定業務用BJプリンター”としてラインヘッドプリンター(名刺やハガキ、ラベルなどの印刷用)を商品化しているが、ソニーではA4サイズのフルカラー印刷を実現したのが特徴。

LD Shot
“LD Shot”によるインク滴の左右への打ち分け

ラインヘッド方式の弱点として、ノズルの加工精度の誤差などからドットの着弾位置がわずかでもずれた場合、均一な色の部分では紙送り方向に平行な筋が出てしまうという問題がある。シリアル方式のインクジェットプリンターでは、ノズルの幅よりも短く紙送りを行なって1箇所に複数回インクを載せることで着弾ムラによる問題を解決しているが、ラインヘッド方式では逆方向の紙送りを何度も行なうと印刷速度が遅くなってしまう。そのため、同社では独自の“LD Shot”(Lateral Deflection Shot)方式を開発し、サーマルインクジェット方式のヒーター部を2つに分け、インクを加熱するタイミングを微妙にずらすことでインク滴の吐出方向を左右に打ち分けている。1ラインを複数回(2~3回)のインク吐出で描画することにより、インク滴並びの不均一やノズルの詰まりなどが目立たなくなるという。

印刷ヘッド
試作プリンターの印刷ヘッド(顕微鏡撮影による拡大写真)

試作機はC/M/Y/Bkが各5014ノズルで600dpiの解像度を持ち、デモンストレーションではA4フルカラー印刷が約6秒という高速印刷をアピールしていた。発表会で公開された印刷サンプルは、普及型の4色インクジェットプリンターと大差ないレベルの印刷品質であった。開発中のテスト機ということもあって、わずかに紙送り方向の筋が残る場所があり、特に約1cmおきの縦筋が気になったが、これは印刷ヘッドそのものをA4幅(約20cm)の一体構造ではなく、約1cmのノズルを繋ぎ合わせて作られているためとのこと。商品化にあたっては精度向上と画像処理(印刷結果をフィードバックしてのキャリブレーション)などで解消する予定だと説明している。

LD Shotによる補正 1 LD Shotによる補正 2 LD Shotによる補正 3
LD Shotによる補正の効果(筋ムラの補正)LD Shotによる補正の効果(ライン抜けの修正)LD Shotによる補正の効果(印刷サンプルでの比較)

製品化のスケジュールや製品価格に関してはまったく未定で、ノズル数が多いことから普及価格帯(2~3万円台)のインクジェットプリンターに比べると、高価な製品になるだろうとのことだが、シリアル方式よりも高速に印刷でき、静粛な駆動音や小型化の可能性など、期待できるテクノロジーと言えるだろう。

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