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【レゾナント特集 Vol.2】パソコン-FOMA間のTV電話が実用化に向け試行サービススタート

2003年03月25日 00時00分更新

文● 松本 俊哉

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NTTが昨年11月に発表した“光”新世代ビジョンに描かれる新しいコミュニケーション環境『レゾナント』は、単にウェブブラウズやダウンロードが早くなるだけではない。双方向の高速通信が実現する、真のユビキタス環境や迫力の映像/音楽コンテンツをASCII24編集部が一足先に体験!

この1年ほどでカメラを搭載する携帯電話が急速に普及し、写真だけでなく動画もメール添付で送信できるようになっている。当初は10万画素程度だった解像度も30万画素を超えて、画像(撮影対象)の視認性がぐっと高まり、表情伝える程度の単なるスナップショットから、時刻表や地図、メニューなどより豊かな情報を伝えるコミュニケーションツールへとその役割が変わりつつある。しかし、ほとんどの携帯電話では写真や動画をメールに添付する以外の発信手段がなく、到着したメールに相手が気づかなければ、いつまでたってもコミュニケーションの進展はない。そこで、より積極的にビジュアルコミュニケーションを図ろうと登場したのが、TV電話機能を搭載した新世代の携帯電話だ。

FOMA端末『FOMA P2102V』
3月15日に発売されたばかりの、TV電話に対応する最新FOMA端末『FOMA P2102V』。動画撮影サイズは176×144ドットもしくは128×96ドット。TV電話の連続通話時間は約90分、待ち受け時間は約250分。本体サイズと重量は幅50×奥行き25×高さ104mm/約133g。本体色はシルバー/ブラック/レッド(写真)の3種類を用意

例えば、子供に頼まれてTV番組のキャラクターフィギュアを買いに出たとしよう。ところが、いざ売り場に行ってみるとあまりにも種類が多く、欲しがっていたものがどのキャラクターで、どんな大きさなのか判断がつかない。こんなとき、テキストだけのメールや電話では色や形のニュアンスを伝えきれず、メールに写真や動画を添付して送っても、お目当ての商品が見つかるまで撮影と送信を何度も繰り返すことになる。なによりメールでは、相手の返事を待っていなければならない“ストレス”がある。ここでもし、子供に売り場の商品をリアルタイムの映像で見せながら会話できたら、当人が直接希望するものを選べるうえに、返事待ちのイライラもなくなる。これこそ一番の解決策ではないだろうか。

パソコン-FOMA間でTV電話を実現する
新開発プラットフォーム

2003年1月、日本電信電話(株)(NTT)とエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドイニシアティブ(株)(NTT-BB)、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)の3社は、NTTドコモの第3世代携帯電話『FOMA』とオフィスや家庭にあるパソコンとの間で、リアルタイムに映像と音声の双方向通信が可能なプラットフォームを開発し、その試験サービスをスタートさせた。分かりやすく言うと、“FOMA端末とパソコン間でTV電話ができるようになった”ということだ。TV電話はFOMAの特徴的なサービスのひとつで、以前から対応端末間であればリアルタイムの双方向通信は可能だ(TV電話に対応しない機種もある)。しかし、FOMA間のTV電話には独自の“3G-324Mプロトコル”が使われているため、そのままではパソコンとの通信が行なえなかった。

3G-324Mプロトコルでは、映像をH.263または“MPEG-4 Simple Profile Level0”、音声をAMRで符号化する。また、パケット交換方式のIP網に対して、FOMA同士のTV電話は安定性と課金を考慮して64kbpsの回線交換方式を採用しているという違いもある。

今回の試験サービスでは、こうした壁を乗り越えるために2つの方法が考えられた。まずひとつは、パソコン向けの専用クライアントソフト“インスタントメッセンジャー”(以下IM)の提供だ。IMとは、インターネット経由でリアルタイムにメッセージを交換し合えるソフトのことで、テキストベースのチャットが主体だが、ホワイトボード(簡易ペイントツール)で手書きの文字や絵を共有したり、TV電話機能が搭載されているものもある。『Windows Messenger』『MSN Messenger』『Yahoo! Messenger』『ICQ』などが、代表的なクライアントソフトだ。

本サービスのIMは、パソコン-パソコン間の通信にWindows Messengerなどでも使われている国際標準のSIPプロトコルを採用し、映像はMPEG-4、音声はG.711で符号化している。独自プロトコルを避け、SIPの規格に厳密に準拠したことで、今後商用サービスが開始された際に新規のIMソフトメーカーの参入や、既存のIMとの相互乗り入れも容易だという。現時点ではファイアーウォールやNAT、NAPTに非対応で、UPnPもサポートしていないものの、将来的には、ファイアーウォールやルーターを越えられるようにする予定と説明している。

FOMA-パソコン間の接続図
FOMA-パソコン間とパソコン-パソコン間ではプロトコルが異なり、特に前者の組み合わせの違いを吸収するため、プロトコルとメディア変換を行なうサーバーが用意されている。FOMA側が384kbpsのパケット通信でないのは、より接続安定性を重視し、かつ通信費を抑える狙いがあるためだ。

もうひとつは、パケット交換のIP網と回線交換のFOMA網(実際にはFOMA網の次にISDN網を介している)の違いを吸収し、プロトコルとメディアを相互に変換するサーバーの提供だ。前述の専用IMは、パソコン-パソコン間はSIPを利用するが、パソコン-FOMA間の通信にはH.323プロトコルを採用している。映像は最大でCIFサイズ(352×288ドット)の送受信をサポートするものの、FOMA端末側はQCIF(176×144ドット)表示なので、パソコン側もQCIF表示に合わせている。また、音声は3G-324MのAMRとH.323のG.711の相互変換を行っている。プロトコルとメディアを変換するサーバーはNTTドコモによって開発され、変換による遅延を最小限に抑えるため、ハードウェアによるメディア変換が行なわれている。発生する遅延は500ミリ(0.5)秒程度で、タイムラグによって会話にストレスを感じることはない。

FOMAからパソコンにTV電話をかける手順は、通常の電話とは少し異なり、まず専用iアプリを起動(初回はダウンロード)し、そこからサービスへログイン、アドレス帳から任意のユーザー名を選択して呼び出しをかけるという手順になる。すると自動的にパソコン側からFOMAにコールバックがかかり、FOMA側が応答することで両者の接続が確立する。一度使ってみればさほど違和感なく通常の電話と同じ感覚で利用できるほか、アドレス帳(iアプリ)を見るだけで現在相手が通話可能な状態かどうか(インターネットに接続中、在籍中)を確認できるなど、パソコン用IMクライアントソフトに迫る使い勝手が実現されている。

FOMA-パソコン間での通話
屋外のFOMAから社内のパソコンに対してTV電話をかけ、会話しているところ。試験サービスで使われているIM(クライアントソフト)の動作環境は、CPUがPentium III-600MHz以上、メモリー256MB以上、サウンドカードはDirectSound対応、ビデオデバイスとしてUSB接続のPCカメラ、回線は1.5Mbps(ADSL)以上、対応OSはWindows XPとなっている

実際の両者の接続にはNTT研究所が開発したプレゼンスサーバーが介在しており、ユーザー認証を行なったり、パソコン側のIMのログイン状況などをチェックしている。なお、パソコンからFOMAを呼び出す場合も、同様の手順で行なう(コールバックではなく、直接FOMAに接続するという違いはある)。

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