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アイファイヤー、無機ELに関するプレスカンファレンスを開催――「2005年に30インチクラスのTVを市場投入したい」

2003年06月19日 18時36分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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無機ELディスプレーに関する材料や技術を開発するカナダのアイファイヤー・テクノロジー(iFire Technology)社は19日、都内でプレスカンファレンスを開催し、技術提携を結んでいるティーディーケイ(株)(TDK)三洋電機(株)大日本印刷(株)(DNP)との研究開発、および製品化に向けての開発経過などを発表した。

社長のアンソニー・B・ジョンストン氏ら
プレスカンファレンスの列席者。左から社長のアンソニー・B・ジョンストン氏、事業開発担当 上席副社長の石井正純氏、プロダクト・プランニング副社長のドン・カークナー氏

会場には、今年1月に就任した社長のアンソニー・B・ジョンストン(Anthony B.Jonston)氏、事業開発担当 上席副社長の石井正純(いしいまさずみ)氏、プロダクト・プランニング副社長のドン・カークナー(Don Carkner)氏が列席し、同社の動向や最近半年で改良が進んだ新技術の解説などを行なった。

最初にジョンストン氏が、無機ELのディスプレー市場における位置づけや2006年ごろまでの市場規模について、「無機ELは(液晶やPDP=プラズマディスプレーパネル、有機ELに比べて)低コストに開発・生産でき、大型化も容易。現在、HDTV対応(1280×768ドット表示)で30インチ以上の大型パネルを製造するための技術開発に注力しており、2005年ごろに最初の市場出荷を目指している。そのための技術開発を、三洋やDNPと共同で進めている。ただ、これは非独占的ライセンス契約にとどまり、(アイファイヤー自身は工場を持たず、材料や技術開発のみを行なうため)生産過程においては新たな協業が必要となる。日本は液晶やPDPにおいて高い製造技術を持つ会社が多いので、これからも日本の企業と積極的に協力を仰ぎたい」と述べた。特にDNPは柏市の工場(以前はPDP開発を行なっていた)で製造段階の前工程にあたる、厚膜誘電体(電極)の生成を行なっており、カナダのトロントにある後工程(発光体や発色層などの生成)を行なう工場の拡大にも協力している、とのこと。

“CBB(Color By Blue)”の構造 無機ELパネルの基本構造
“CBB(Color By Blue)”の構造を説明するパネル無機ELパネルの基本構造を示すパネル

カークナー氏は、無機ELパネルの最新技術という“CBB(Color By Blue)”について詳細な説明を行なった。それによると、従来の無機ELパネル(8ヵ月程度前まで)は発光層にRGBそれぞれで異なる色を出す蛍光材料を用意して塗り分け、その上にRGBフィルターを載せる“Triple Pattern Process”という技術を用いていた。2002年夏に、発光層を青色蛍光材料一色にして、青⇒赤、青⇒緑の色変換層を透過させる(青は従来どおり青色フィルターを採用)ことで、TPPよりも高い発色性や応答性、製造コストの低下が実証されたため、現在はCBB方式に全面的に切り替えた。特に白色について従来よりも色むらや偏り(赤みや青み)の少ない発色が得られるようになった、と話す。

CBBの技術デモ 17インチの無機ELディスプレー
蛍光体の青い光と、色変換素材を通して赤く変化した光を見せるデモも記者に披露された17インチの無機ELディスプレーのデモ

会場には17インチサイズでフルカラー表示の無機ELディスプレーがデモンストレーションのために用意され、鮮やかな静止画や動画などの再生を集まったプレス関係者に公開した。実際に見た印象では、赤が特に鮮明で、視野角の広さ(上下左右から見ても色の反転などが起こらない)も確認できたが、全体的な発色(色のバランス)については改良の余地があるという印象を受けた。

最後に記者とのQ&Aセッションが行なわれ、生産台数目標については「当初は3、4万台を2005年初頭に市場投入したい。その後、パートナー企業と工場が完成次第、年間25万台の製造を見込んでいる」、寿命(使用可能時間)については「2万時間程度と見られる。ただし、技術改良によって改善していけるだろう」と答えた。

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