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日本IBM、“TRLメディアセミナー”を開催――アクセシビリティやナレッジ・マネジメント関連の研究成果を発表

2003年08月05日 22時14分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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日本アイ・ビー・エム(株)の研究部門である東京基礎研究所(TRL:Tokyo Research Laboratory)は5日、東京・水天宮の箱崎事業所にプレス関係者を集め、これまでの研究成果を発表する“TRLメディアセミナー”を開催した。セミナーは昨年に続いて2回目で、同社における基礎研究所の位置づけや役割を紹介するとともに、“アクセシビリティ・テクノロジーの歩み”“ライフサイエンスにおけるナレッジ・マネジメント”“eCRMのためのプリバシー管理”をテーマにした講演と関連技術を披露した。

東京基礎研究所所長の鷹尾洋一氏東京基礎研究所所長の鷹尾洋一氏

最初に、東京基礎研究所所長の鷹尾洋一(たかおよういち)氏が全世界で8ヵ所、3000名強のスタッフ(IBM全社員の1%にあたる)が携わる基礎研究所について説明した。基礎研究所は米国に3ヵ所、日本を含むアジア地域に3ヵ所、欧州とイスラエルに各1ヵ所あり、それぞれが“分散コンピューティング”“サーバー&組み込みシステム”“サービス&ソフトウェア”など5つのカテゴリにおいて研究開発を行なっている。今年は特にサービス&ソフトウェアの比重が高く、リサーチ部門全体の半数が携わっている(日本は8割のスタッフが担当する)ことなどを明らかにした。

浅川智恵子氏アクセシビリティー・センターの浅川智恵子氏

続いて、アクセシビリティー・センターの浅川智恵子氏が、障害者を含むすべての人が情報機器を扱えるようにするための技術“アクセシビリティ・テクノロジ”について、これまでの研究成果と今後の目標を示した。浅川氏は、現在直面している課題として、画像や動画/音声などのマルチメディアコンテンツを多用するウェブサイトが増えることにより、従来のテキスト読み上げによるウェブアクセス(IBMでは『ホームページ・リーダー』を1997年に製品化・発売)だけでは対応できなくなってきていることを挙げた。その対策として、代替テキストの埋め込みを標準化していくとともに、弱視や色弱の人がどのように見えるかをシミュレーションする『Accessibility Designer(aDesigner)』を開発していることを明らかにした。aDesignerではウェブページ構成の解析も行ない、読み上げソフトを使った場合、ページ内の末端にある情報を知るまでにどれくらい時間がかかるかを明示して、ページ内リンクを用意するなど、アクセシビリティーを向上するための指針を示す機能を持つ。aDesignerは、主要な機能の実装は行なっているものの現在60%程度の開発状況とのことで、今後社内/社外でのテストを繰り返しながら完成度を高めていくという。

武田浩一氏ナレッジ・インフラストラクチャー担当の武田浩一氏

ナレッジ・インフラストラクチャー担当の武田浩一氏が講演した“ライフサイエンスにおけるナレッジ・マネジメント”では、生体や医療科学に関する膨大な文書データベース“MEDLINE”(1200万件以上の文献で構成され、インデックスデータだけで38GBに及ぶ)を意味や類似度によって解析/グループ化し、関連性を可視化したり必要な情報を抽出するための技術・研究を紹介。研究自体は始まって4~5年ほどだが、急速に進化している学問で、意味解析/情報抽出のコンテストも行なわれている(IBMの研究チームも参加)。今年からは、MEDLINEのほかに特許文書やニュース記事などにも応用範囲を広げて、研究を進めているとのこと。

沼尾雅之氏サービス&ソフトウェア担当の沼尾雅之氏

eCRM(ITを用いた顧客情報管理)における個人情報管理の必要性を説く、サービス&ソフトウェア担当の沼尾雅之氏は、現在の情報管理方式では不必要な情報まで取得できてしまう問題を指摘した。従来のユーザーごとに権限を設定する方式では、情報管理として機能不足で、今後は扱われる個々の情報にもユーザーごとの閲覧許可/禁止を設定し、アクセス判定(ユーザー認証)を多重化する“コンテキストを考慮したアクセス制御”が必要になると説明した。IBMではこれを自社のエンタープライズ向けサーバー製品群(DB2/WebSphere/Tivoli Privacy Managerの組み合わせ)によって実現するという。

現在開発中の『Accessibility Designer(aDesigner)』の画面 ThinkPad G40の冷却機構
セミナー後に別室でデモンストレーションされた『Accessibility Designer(aDesigner)』の画面(開発中のもの)同じデモ会場に展示された、ノートパソコン『ThinkPad G40』が内蔵するデスクトップ用Pentium 4-3GHzの冷却機構。従来のモバイルPentium 4用冷却機構(手前)では2.80GHzまでしか対応できないため、サーバークラスのCPU向けに作られている冷却パイプと放熱フィンの一体成型を採用したという

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