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オンデマンド印刷のイベント“PRINT ON DEMAND 2003”開催――“オンデマンド アワード2003”が決定

2003年09月27日 04時24分更新

文● 千葉英寿

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印刷機材の展示会としては世界4大展示会のひとつに数えられる“IGAS 2003(International Graphic Arts Show 2003)”が東京ビッグサイトにおいて22日から開催されている。主催は印刷機材団体協議会、後援は経済産業省、東京都、日本貿易振興会、社団法人日本印刷産業連合会。4年に一度に開催されるアジア最大の印刷機材展だけあり、印刷業など多くの業界関係者が来場する中、中国や韓国など海外からの来場者の姿が特に目立った。また、24日には同会場近くの有明ワシントンホテルにおいてオンデマンド印刷にフォーカスした日本唯一のイベント“PRINT ON DEMAND 2003”が開催され、“オンデマンド アワード2003”を発表、表彰式が行なわれた。

22日にIGAS 2003が開幕
台風が海側をかすめた22日にIGAS 2003が開幕した

出版不況、コンテンツのデジタル化が進む中、印刷業にとっては小ロット・短納期、低価格化、高品質化などに加え、電子媒体への対応、ウェブとの連動などざまざまな課題が山積している。これに対応するために高効率なワークフローの確立や標準化が図られつつある。今回のIGAS 2003における技術トレンドはワークフローの刷新と液晶技術など新しい媒体技術への関心といえるだろう。

●PDF meets JDF

まず、前者のワークフローだが、そのひとつが透明化を実現したバージョン1.4の登場でPostScriptを経由せずに扱えるようになった“PDF(Portable Document Format)”を用いたPDFワークフローだ。“CTP(Computer To Plate)”化の進展にともなった1bit TIFFを用いたワークフローもクローズアップされているが、現状の作業環境や日本語フォントの課題などを考えるとPDFワークフローが中心となって進みそうだ。ただし、これはプリプレスの間でだけの話であり、プレスも含む一環した印刷業務のデジタル統合という視点から見れば、JDF(※1)ワークフローとの連携も必要と見られる。こうしたPDF meets JDFに関する展示は、各社で多く見られた。

※1 JDF Job Definition Formatの略。CIP4が制定したXMLベースの作業指示標準フォーマット

プリプレスからプレスまでのトータルで技術展開しているハイデルベルグ・ジャパン(株)では、CIP4/JDFベースのPDFワークフローを支援するシステムとして“Prinnect Printready System”を紹介していた。同システムはオープンアーキテクチャーのJDF対応モジュラーシステムを採用しており、導入当初はPDF作成までを自動化し、その後、プレス、ポストプレス工程まで拡大できる。さらに経営情報とのデータ共有化までを視野に入れた利用拡大を図ることができる。また、大日本スクリーン製造(株)はよりJDFワークフローによる印刷業務の統合、業務全体の最適化、そして生産工程の自動化という点について重点を置いた“Trueflownet”を紹介していた。

ハイデルベルグ・ジャパン TNGプロジェクトに併せてワークフローを紹介
1ホールぶち抜きの巨大なブースを展開していたハイデルベルグ・ジャパン大日本スクリーン製造ではアップルコンピュータ、アドビシステムズ、モリサワとともに進めているTNGプロジェクトに併せてワークフローを紹介

ワークフローについてのもう一点は、RGBワークフローへの対応だ。これまではスキャナーで直接CMYK画像を生成していたが、プロフェッショナル向けデジタルカメラの普及でRGB画像入力が定着しつつあり、これに対応した製品がいくつか紹介されていた。

大日本スクリーン製造はRGBからCMYKに最適化するソフトウェア『ColorGenius DC』とAdobe InDesign上でRGBからCMYKに差し替えるAdobe InDesignプラグインソフトウェア『YUKIMURA』をあわせたRGBワークフローを紹介していた。同様のRGB to CMYKワークフローに対するソリューションは富士フイルムグラフィックシステムズ(株)でも紹介されていた。また、エプソン販売(株)ではRAWデータに対応したデジタル現像ソフトウェア『Picture Lab』を紹介していた。同ソフトはデジタルカメラのRAWデータを補正し、RGB-CMYK変換やEPS出力をサポートしている。

富士フイルムグラフィックシステムズ 『Picture Lab』を出品
富士フイルムグラフィックシステムズのRGBソリューションコーナーエプソン販売(株)ではシンボリック・コントロール(株)の『Picture Lab』を出品した

●hpのデジタル印刷機が登場

このほか、展示会場で見られた動きとしては、CTPの高速化や大サイズ化、擬似網点方式を採用したDDCP、高品質化や可変データに対応したデジタル印刷機の進化が挙げられるだろう。

デジタル印刷機分野での動きとしては、日本ヒューレット・パッカード(株)が『hp indigo press』を出展していた。オランダのindigo社は2002年に米ヒューレット・パッカード社に買収されており、以前より国内総代理店を務めていた東洋インキ製造(株)が引き続き販売を担当していた。コンシューマー機でシェアを伸ばしているHPだが、現時点でもっともプロフェッショナルなプリンターといえる、デジタル印刷機まで手を広げた形となっている。

hp indigo press
日本HPの『hp indigo press』。hpのエンブレムが配され、コンシューマー向けプリンターと変わらないテイストのカラーリングでデザインされている
imagePROGRAF W6200 凸版印刷(株)はリライタブルプリンターを紹介
キヤノン販売(株)は6色インクタンクによる新顔料Pgインクを採用したA1ノビサイズのラージフォーマットプリンター『imagePROGRAF W6200』を出品していた凸版印刷(株)はリライタブルプリンターを紹介していた。モノクロのリライタブルプリンターとこれに対応した専用ペーパーで、約1000回繰り返し書き換えができるというもの。同社では実証実験として、プリンタとペーパーのパッケージを19万8000円で提供している
人間コピー機 屏風もコピー
人間コピー機として話題になった『アゼロオリジネータ』。会場ではコンパニオンの実物大ポスターを出力していたが、実際の用途として屏風や掛け軸といった大きな美術品の複製やデータ化において製版カメラに勝る実力を持つ。実物大で出力された屏風も展示されていた

●Z会テキストをカラーバリアブル印刷で提供

また、デジタル印刷機に関係が深いオンデマンド印刷にフォーカスした日本唯一のイベント“PRINT ON DEMAND 2003”がIGAS会場近くの有明ワシントンホテルにおいて開催された。こちらは例年は機材展示も同時に行なっているが、今回はIGASに会期と会場を合わせたことで、機材展示などはIGASに任せた形とし、カンファレンスやセミナーを行なっていた。

24日にはオンデマンドプリンティングの認知度向上とサービス内容の充実を目的とした“オンデマンド アワード 2003”の発表、表彰式が行なわれた。オンデマンドアワードは、戦略的ビジネスを展開している企業ならびにプロジェクトを表彰するもので、おもに印刷会社や複写業、サービスビューローなどの印刷関連業種からのエントリーから選出される。選考にはJPCの猪俣裕一理事長を委員長に、日本印刷技術協会の小笠原治理事、米CAPベンチャーズのグループ・ディレクターであるチャーリー・コア(Charles Corr)氏らがあたった。

今回のオンデマンドアワード大賞は、(株)増進会出版社とトッパン・フォームズ(株)のプロジェクトである“カラーバリアブル通信教育テキスト”が受賞した。応募部門はワン・トゥ・ワン・コミュニケーション部門。

本プロジェクトは、Z会の名で知られた学生向けの通信教育講座において中学生受講者6万人に対し、10万パーツから選択した10~350ページのバリアブルパーソナルテキストを提供する世界最大規模のカラーバリアブル印刷だ。学力や使用教科書に合わせた受講者に最適化した個別テキストを提供することで、受講者に好評を博しており、受講更新率が上昇したという。受賞の理由として、これほど大量のカラーバリアブル印刷は前例がなく、オンデマンド印刷の可能性を現時点において極めた点を高く評価している。

大賞はZ会とトッパンフォームズのプロジェクトが受賞
大賞はZ会とトッパンフォームズのプロジェクトが受賞。CAPベンチャーズのチャーリー・コア氏からトロフィーが授与された

このほか、CAPベンチャーズ賞に入賞した企業は以下のとおり。
(株)東京文久堂による“随時アップデート対応型案内”は、会社案内を随時アップデート可能にするサービスを提供している。応募部門はデジタルプリント部門。(株)精工の“高付加価値型パッケージ印刷”は、テストマーケティング用などのパッケージ印刷に特化し、本番用印刷は受注しない方針を取ることで、PODが無料サービスの付属物と扱われるのを避けている。最後は年賀状ソフト『筆まめ』で知られるソフトウェア会社の(株)クレオとパワープリント(株)のコラボレーション“年賀状ソフトと連携した大量宛名プリント”。筆まめユーザーがローカルやクレオのサーバーに残した住所録データベースから、パワープリントに依頼するしくみとなっており、個人にとっては面倒な年賀状制作における宛名面プリントの大量処理を実現している。

各賞受賞者と審査員の面々
各賞受賞者と審査員の面々

オンデマンド印刷も浸透が遅いことを指摘されているが、着実に現実的なソリューションが開発されつつあることがよく理解できた授賞式となった。

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