大和事業所を訪れたプレス関係者が一度は目にして驚嘆する、歴代ThinkPadが一堂に会した渡り廊下の図 |
過日の【特報!?】『ThinkPad 20M(仮称)』でもお伝えしたとおり、日本アイ・ビー・エム(株)は11月28日、プレス関係者を集めて神奈川県・大和市にある大和事業所の見学会を開催した。現在発売されている同社のノートパソコン“ThinkPadシリーズ”は、すべてこの大和事業所で設計・開発されており、さらに製品完成に至るまでの耐久試験やユーザビリティー(使い勝手)に関するテストも行なわれるなど、本来は重要機密事項の多い場所なのだが、ThinkPadシリーズの累計2000万台出荷を記念して、特別見学会の運びとなった。
ポータブルシステムズ担当 Distinguished Engineerの小林正樹氏 | ユーザー・エクスペリエンス・デザインセンターの嶋 久志氏 | ポータブル・システムズ ポータブル製品品質保証担当の児玉 昇氏 |
見学会の前半は“ThinkPadの開発思想と最新技術の動向”“ThinkPadのユーザーエクスペリエンス(所有者の経験・体験)”“ThinkPad Qualityを裏付けるもの”と題し、ポータブルシステムズ担当Distinguished Engineerの小林正樹氏、ユーザー・エクスペリエンス・デザインセンターの嶋 久志氏、ポータブル・システムズ ポータブル製品品質保証担当の児玉 昇氏による講演が行なわれた。
小林氏は、ThinkPadは“IBMが考えるモビリティ”を具現化したものであり、IBMの考えるモビリティとは
- 軽量、小型薄型
- 堅牢製(持ち歩いても壊れない)
- バッテリー駆動時間
- 状況に応じた高速通信を内蔵
- 人間工学に基づく使いやすさ
- TCO、ソフトウェアを充実して高度な機能を簡単に提供
という6つを満たすこと、と説明。「例えば『ThinkPad T41』が採用するFlexView液晶ディスプレーは高視野角の特徴がよく語られるが、色再現性の高さや多方向から見たときの色の反転の少なさもあって採用している。会議室などで数人が1台のパソコンを囲んで話し合う際に、どの方向から画面を見ても同じように見えるためだ」と述べ、高スペックを追求するだけでなく使い勝手を考慮してパーツ選択を行なっていることを紹介した。
ThinkPadのトレードマークである赤ポッチ“トラック・ポイント”の形状も、現在の“ソフト・ドーム”“クラシック・ドーム”“ソフトリム”の3タイプに落ち着くまで、いくつもの試作品が登場しては消えていった |
また、児玉氏は品質保証担当としての役割について、
- 品質目標の設定
- 評価計画の作成と実践
- 製品開発・発表・出荷の各段階での承認
- 出荷後の市場での問題の把握と再発防止
といった主要なプロセスに関わる重要なポストであることを示した。IBMでもすべての部品を内製しているわけではなく、一部パーツは外部からの調達も行なっているが、この場合でも設計・開発・製造にIBMの技術者が携わることで、内製と変わらない品質基準を満たす製品の調達を行なえることや、開発責任者に自覚と責任を持たせるために、3年前から優秀な技能者を表彰する“クオリティチャンピオン制度”を設けて、ノウハウや事故・問題の解決、再発防止策などの情報を“Lessons&Learnedデータベース”に蓄積していく施策を執っていることを明らかにした。チャンピオンに認定された人は、製造や出荷などの各フェーズで承認を行なう(責任を持つ)とともに、問題の把握や解決策の評価、検証なども行なう。
開発プロセスでは、開始および完了において児玉氏の承認(図でいう△)が発生する | デザインクオリティチャンピオンはあらゆる開発部門で1名ずつ選出される。熱設計や無線アンテナのチャンピオンも存在する | チャンピオンは、設計者と各部署のリーダーにノウハウを授けたり問題解決の手助けをするなどして、知識のデータベースを構築していく役割を果たす |