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芸術は主張だ!――全出展作品を順位付けする採点システムを初採用した芸術の祭典“GEISAIミュージアム”開催!!

2003年12月15日 23時00分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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GEISAIミュージアム

東京の新しい観光スポット“六本木ヒルズ”が人ごみでごった返す日曜の昼下がり、さらに体温と湿度の高い人々が六本木森ビル24階に集まった。六本木ヒルズのキャラクターをデザインした村上 隆(むらかみたかし)氏がチアマン(応援団長)として音頭をとったアートのフリーマーケット“GEISAIミュージアム(げいさいみゅーじあむ)”が14日、六本木森ビルで開催された。主催は村上 隆氏が率いるアート制作会社(有)カイカイキキ、およびGEISAI実行委員会。公式入場者数は4824名。



芸術を100点満点で評価し
順位付けする難しさ

GEISAIミュージアムへの出展数は合計277作品。これを審査員となる5人が持ち点100点満点で評価し、その合計点で順位付けする“全順位完全決定システム”が今回初めて採用された。GEISAIはこれまで4度の大会を開催しているが、全作品を順位付けするのは今回が初めてで、それだけ審査員も慎重に評価を進めていた(そのため、審査結果の発表は当初の予定時刻の午後3時を40分以上も押してしまった)。

審査員1 審査員2
審査員の方々。左から、逢坂恵理子氏、北原照久氏、南條史生氏、蓑 豊氏岡本太郎氏の養女で、岡本太郎記念館の館長を務める岡本敏子氏。手にしているのは、審査員賞の副賞として手渡された“岡本太郎作 水差し”

審査員5名のプロフィール(敬称略)と審査後のコメントは以下のとおり。

逢坂恵理子(おおさかえりこ)
水戸芸術館 現代美術センター芸術監督
「点数をつけることに抵抗もあったが、仕上がりのよさに重点を置いて採点した。自分の作品が(277の作品中で)相対的にどれくらいの位置づけなのか理解できると思う。それを励みにして、今後の作品作りに生かしてほしい」
岡本敏子(おかもととしこ)
岡本太郎記念館 館長
「せっかく会場にこれだけ大勢の若い才能が集まったのだから、大いにコミュニケーションして、刺激しあって、ディスカッションしてほしかった。自分の作品を展示して終わり、じゃなくて見に来た人に積極的に主張すべき」
北原照久(きたはらてるひさ)
横浜ブリキのおもちゃ博物館 館長
「作品を熱く語る、夢を語る、アピールする、そんな作品が見てみたい。夢を実現するのに一人では限界がある。ここを仲間を見つけて協力を得る場所に利用してほしい」
南條史生(なんじょうふみお)
森美術館 副館長
「多くの作品を見て、(これまでに見てきた)1980年代や1990年代とも違う、今のトレンドを感じたが、それだけではなく個性も大事にしてほしい。グランプリに選ばれた作品は確かに素晴らしいが、個人賞に選ばれた作品にも重要な意味がある。それを忘れないでほしい」
蓑 豊(みのゆたか)
金沢21世紀美術館(仮称、2004年4月開館) 館長就任予定
「時代性を素直に受け止め、そのとき、その場、その人の空気を吸って作品に取り入れていってほしい。表現方法の技を磨くことが芸術ではない。作るきっかけになった“思い”や“考え”をいかに相手に伝えるかを磨いてほしい」

グランプリに選ばれた作品はコレだ!

上位3名の入賞者
グランプリおよび2位、3位に入賞した3名のアーティスト。中央がグランプリの木下雅雄氏、左が鈴木淳夫氏、世界劇場 きざわこーき/キダタカシ氏(全部で1人の名前)
チアマンの村上 隆氏
グランプリの木下雅雄氏を表彰する、チアマンの村上 隆氏。“死ぬまで芸術やりますか?”のはっぴを着て、祭りムードを盛り上げていた

木下雅雄氏の彫刻作品(合計365点)

因幡の白兎か、はたまた筋肉標本か。皮をむかれたウサギ頭の女性(?)、堂々と直立している。作品の高さは2m近い。隣には小さなクマがちょこんと立っている。均整の取れたプロポーションと美しい立ち姿に、(ウサギなのに)しばし目を奪われる。

木下雅雄氏の彫刻作品1 木下雅雄氏の彫刻作品2


鈴木淳夫氏の絵画作品(合計345点)

高さ2m、幅5m程度の大きなキャンバスに、白/黒/白の厚みのある絵の具を重ね塗りして、そこを小さく削って白と黒の微妙な水玉状の模様を表現している。塗りや削りの微妙な加減で、黒と白の面積が異なり、複雑な表情を醸し出している。

鈴木淳夫氏の絵画作品1 鈴木淳夫氏の絵画作品2


世界劇場 きざわこーき/キダタカシ氏の
インスタレーション(立体作品)(合計343点)

計算した型に固められたコンクリートと、自然に曲がり伸びた古木の枝(流木)を組み合わせた立体造形作品。椅子、机、チェストなどが自然と人工の不自然な組み合わせによって、安定した形に収まっている。一見アンバランスではあるが、触ってみると四脚がシッカリと地面を支えている。

世界劇場 きざわこーき/キダタカシ氏のインスタレーション(立体作品)

そのほか、展示作品で気になったものをいくつか紹介しよう。乾いてひび割れたアスファルトが水と空気を求める、メッセージ性の強いオブジェ“水をください”。阪野礼子氏の作品。

阪野礼子氏の“水をください”阪野礼子氏の“水をください”

子どもが何度も繰り返し通り抜けて気に入っていた、窪川みえ氏の“手提げ袋トンネル”。長さ6mに渡る狭いトンネルの内側にびっしりと手提げ袋が貼り付けられている。子供のころに押入れや納屋を冒険したような懐かしい気分になれる。

窪川みえ氏の“手提げ袋トンネル”窪川みえ氏の“手提げ袋トンネル”
マサル×ブリア氏の“片鱗”
マサル×ブリア氏の“片鱗”

会場では数少ない、パソコンソフトによるマサル×ブリア氏の作品“片鱗”。画面上でマウスカーソルを動かすと特定の部位で詩の一片が飛び出して、忘れていた自分の記憶を完成させていく。ビジュアルの断片と詩の断片が互いに補完し合い、詩の全体が完成するとビジュアルも完成する。全部で19枚のCD-ROMで構成され、26歳までの自分が呼び覚まされる。ウェブサイト(http://hyougensyatachi.web.infoseek.co.jp/)でも同様の手法で表現したコンテンツが公開されている。



ヌカガ氏の“グルテン”前回(GEISAI-4)の金賞作品、ヌカガ氏の“グルテン”も参加して、会場を闊歩していた。なんだか、キモかわいい

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