このページの本文へ

【ISEF2004 Vol.2】日本の女子高生の2プロジェクトが入賞! “不思議な振動現象”と“携帯ソリューション”――米国の次は中国へ!?

2004年05月17日 21時42分更新

文● 遠竹智寿子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

米国オレゴン州で開催された国際学生科学フェア“Intel ISEF”において、日本から参加した岩見綾花さん(埼玉県立浦和第一女子高校3年)が、グランドアワードの3位と“アメリカ化学会賞(American Chemical Society, Honorable Mention Award)”のダブル受賞という快挙を果たした。一方、もう一人の女子参加者である磯村梓さん(筑波大学国際総合学類1年・高校3年時にノミネート)は、協賛団体によるスペシャルアワードのひとつである“中国科学技術協会賞(China Association for Science and Technology)”を受賞し、同協会が中国で開催する科学コンクールへの参加権と中国旅行を副賞として手にした。2人のプロジェクト内容、フェア一般公開日のブースとアワード受賞の様子をお伝えする。

岩見綾花さん
化学部門でグランドアワード3位を受賞した岩見綾花さん(17歳)。“針金を使った化学振動現象”と題し、不思議な振動現象について詳しく研究した
磯村梓さん
中国科学技術協会賞を受賞した磯村梓さん(19歳)。コンピューター・サイエンス部門で“ケータイ速報キャッチャー”と題したソリューション研究で大きな副賞を獲得した

2人は17日にはビル・ゲイツ氏と対面予定

岩見さんと磯村さんの2人は、ISEFとの提携コンクールである“日本学生科学賞”(読売新聞主催)の研究部門、ソリューション部門に入賞し今回の参加となった。「ISEF参加で米国に行けることは入賞後に聞かされびっくりした」(岩見さん)。日本学生科学賞の協賛が、米マイクロソフト社であることから、2人は17日(現地時間)には米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏を訪問することにもなっている。「ビル・ゲイツ氏に会えるのはすごく楽しみ。できればサインをもらいたい」(磯村さん)。

第1回JSEC(ジャパンサイエンス&エンジニアリングチャレンジ)からの参加者3組は残念ながら入賞に手が届かなかった。しかし、JSECでは医療、社会、生命学など幅広い分野で門を開いており、今後も日本からの幅広いジャンルでのISEF参加が期待できる。

現在17歳の岩見さんは、苦手な化学を克服しようと高校1年の終わりに化学部に入部、そこで先輩が行なっていた実験が今回のプロジェクトの基盤となった。実験を引き継いだ岩見さんは、常に不安定な実験結果を不思議に思っていたところ、針金の説明書きに“亜鉛メッキ”のコーティングについての記載を発見し、それを取り除くことで安定した結果を取れることが分かったという。先輩が積み重ねてきたデータをすべて一から取り直すため、毎晩深夜まで実験を重ねた。「後輩や友達、先生、家族のみんなの励ましや協力がなければできなかった」と話す岩見さん。「物理などサイエンス系科目の成績はそれほどよくないです。実は今でも化学は苦手」とか。

普段はおしゃべりなので英語で伝えたいことが言えなくてすごく悔しかった
「普段はおしゃべりなので英語で伝えたいことが言えなくてすごく悔しかった」(岩見さん)
風間大輔さん 他の日本人参加者はおしくも入賞を逃した
写真左は、2000年度ISEF参加者である風間大輔さん(東京工業大学)。今回はISEF日本同窓会、日本サイエンスサービス(NPO法人)のメンバーとして支援のため渡米した他の日本人参加者はおしくも入賞を逃したが、世界レベルのコンクールに参加でき、ノーベル賞受賞者などに審査を受けたことは貴重な経験だろう

現在大学1年生に進学した磯村さんは、卒業プロジェクトの研究テーマを考えていた東京学芸大学教育学部附属高等学校3年在籍時に「通学のときの電車延滞の速報やインターネットにアップされた受験情報をアクセスしなくても自由に受け取れたら便利なのに」と考えた。プログラムの経験は今までなく、詳しい担任の先生にやさしいVisual Basicの本を借りて学んだという。「これからプログラムやシステムに関係することをやろうとはあまり思っていません。まだはっきりしないけれど“国際公務員”の仕事に興味がある」と話す。スキューバダイビングが好きで、学校ではバレー部、バトミントン部に所属、学際実行委員を引き受ける活動派だ。

携帯電話ソリューション 学生科学コンクールへの出場資格が
磯村さんの携帯電話ソリューション。シンプルな発想をVisual Basic 6を使って形にした中国の政府関係機関が行なう最大規模の学生科学コンクールへの出場資格を得た
浴衣を着て日本をアピール
一般公開日には浴衣を着て日本をアピールし、質問攻めになっていた

審査の様子(12日)

協賛企業や団体別に奨学金やインターンなどの副賞がそれぞれ用意されている 訪れたスペシャル審査員
NASA(アメリカ航空宇宙局)のほか、米イーストマン・コダックなどの企業も訪れて審査する。協賛企業や団体別に奨学金やインターンなどの副賞がそれぞれ用意されている訪れたスペシャル審査員たちは学生たちに名刺を手渡していく

フェア一般公開日の様子(13日)

一般公開
近隣の小中学校の生徒を中心にした一般客がフェアを訪れた。カテゴリーは、コンピューター・サイエンス、エンジニア、物理学、化学、数学、老人学、環境学、宇宙学、地球学など14科目にも渡る。ブースは800以上、とても見きれない
凝ったプレゼンテーション 弟のためにアルファベットを覚えるソフトを開発
凝ったプレゼンテーションも多い5歳の弟のためにアルファベットを覚えるソフトを開発。「教えることを目的にゲームを作るからつまらないんだ。だから、ゲームから先に作って、教える内容を加えたんだ」
人工手足から知覚を送信する実験 今回はロボット関連が多かった
人工手足から知覚を送信する実験今回はロボット関連が多かった。香港の14歳の子が作った家庭用見張り番ロボット。PDAで外出先から操作できるそうだ。本体はゴミ箱、市販のカメラなどを利用して作成

審査の様子(14日)

アワード発表当日の学生たちは緊張気味だ。というのも事前に入賞者の名前を公表せず、会場で始めて各入賞者の名が明かされるからだ。名前を呼ばれた入賞者は1人1人、観客席を通り、壇上へと上がっていく。グラミー賞などに見られるスタイルである。そのため受賞者の感激と会場の盛り上がりも一際だ。

学生たちは正装で 報道陣に囲まれる
学生たちは正装で集まる受賞と同時に各国からの報道陣に囲まれる
多くの女の子たちが入賞
多くの女の子たちが入賞を果たしたが、女子644人、男子783人という参加者数の割合からするとおかしくない結果だ

グランドアワード最優秀賞

賞金500万円、Centrino搭載ノートパソコンなどを副賞に含むグランドアワード最優秀賞には、次の3人の研究が選ばれた。

Yuanchen Zhuさん Sarah Rose Langbergさん
コンピューター・サイエンス部門で“コンピュータ・グラフィックスのレンダリング技術”について研究し、高画質な3Dグラフィックスをよりスピーディーにレンダリングする技術を開発した中国・上海のヤンチャン・ツー(Yuanchen Zhu)さん(19歳)が最優秀賞を受けた 地球・宇宙科学部門で“海洋地帯における地球化学分析”をテーマに研究し、海洋での地球の起源の謎について調査した米国フロリダ州のサラ・ローズ・ランドバーグ(Sarah Rose Langberg)さん(17歳)。海洋底からのビデオ映像などで研究を行ない、数学的シミュレーションを利用してまとめた
Uwe Treskeさん物理学部門で“低コストで製作可能な高解像度の顕微鏡”について発表したドイツ・ザクセンアンハルトのウベ・トレスカ(Uwe Treske)さん(18歳)。電球のタングステン・フィラメントと一般のパソコンで使用されているサウンドカードや発泡スチロールをリサイクルして、低価格で作れるマイクロスコープを開発した。費用は100ドル程度(約1万1500円程度)だったという

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン