アジア最大のコンピューター見本市“COMPUTEX TAIPEI 2004”が1日(現地時間)、台湾の台北市内にある世界貿易センターで開幕した。会期は5日までとなっている。米Advanced Micro Devices(AMD)社は開催初日の午前11時、会場そばにある多機能ショッピングビル“ニューヨークニューヨーク”7Fのインペリアルボールルームにて記者発表を行ない、ながらく噂されてきた939ピンソケットに対応した新Athlon 64を正式発表した。
ソケット939はすでに多くのメーカーの協賛を得ているとして、解説に立ったSam Rogan(サム・ローガン)氏は台湾ASUSTeK Computer社、台湾Gigabyte Technology社、台湾Micro-Star International(MSI)社のマザーをかざして見せた |
今回発表されたのは、性能が高い順に、以下の4製品。
- 『AMD Athlon 64 FX-53プロセッサ』(939ピン)
- 『AMD Athlon 64プロセッサ3800+』(939ピン)
- 『AMD Athlon 64プロセッサ3700+』(754ピン)
- 『AMD Athlon 64プロセッサ3500+』(939ピン)
939ピンプラットフォームについての特徴は以下のとおりだ。
- ・デュアルチャネルメモリーインターフェースを内蔵
- これによって、対Pentium 4で差をつけられていたメインメモリーのリードライト性能を同等以上に持っていくことができた(同じDDR400利用時でも、Athlon 64はメモリーコントローラーをCPUに内蔵しているためレイテンシーが低く、その分高効率)
- ・アンバッファードタイプのメモリーが利用可能
- ソケット939環境では、いわゆる普通のDDRメモリー(アンバッファードタイプ)が利用できる。AMD Athlon 64 FX-53プロセッサーはすでにソケット940版が存在する。これはレジスタードタイプが必須だったが、939版を選べば安価なアンバッファードを使えることになる。Athlon 64にとっては利用可能なメモリーの種類という意味では変更はない。
- ・ハイパートランスポートが1GHz(2Gbps/ピン)動作に
- Athlon 64にとってのFSB(Front Side Bus)に相当する、CPUのハイパートランスポートインターフェースのクロックが、従来の800MHzから1GHzに高速化された。ちなみにこのバスはDDR動作で、バス幅は16bitなので、実効クロックで言えば従来の1.6GHzが2GHzになったことになる。バンド幅で言えば、従来の6.4GHz(これはFSB 800MHzのPentium 4と同じ)から、8GHzに高速化された。Athlon 64ではメモリーコントローラーをCPUに内蔵しているため、FSBの能力はフルに外部デバイス(ビデオカード、HDD、LANなど)に割り当てられる。FSBの高速化は、ビデオカードへの書き込みのレイテンシー削減に役立つため、3D描画の若干の高速化が期待できる。
このほか、Q&Aセッションでは、今回の939ピン化は、単に940ピンから1ピンを削って誤挿入を防止しようとしたというのではなく、安価な4層基板でも安定した動作を可能にするためピンの再配置を行なった、と解説された(従来の940ピンのレイアウトでは6層基板が必要だという)。また、全プロセッサーにおいて、NX機能をサポートし、Windows XP SP2を適用することで、ウイルスの50%が利用しているというバッファーオーバーフローというテクニックを排除できる(つまり感染が防げる)ことも強調された。
ソケット939プラットフォームの特徴。メモリーインターフェースがデュアルチャネルになることと、FSBであるハイパートランスポートの能力が2Gbpsになることがわかる |
3Dゲームのパフォーマンス比較。FX-53は3800+よりもかなり高速であることがわかる |
メディア処理のパフォーマンス比較。ここでは3800+がFX53に肉薄している |
クロック周波数と内部キャッシュ容量については発表されなかったが、
- デュアルチャネル化によって性能が上がること
- Athlon 64FX-53のほうがAthlon 64 3800+より性能が高いこと
- 940ピンのAthlon 64 FX-53は2.4GHz動作で1MBキャッシュ内蔵であること
以上から、
- AMD Athlon 64 FX-53プロセッサ(2.4GHz/1MB)
- AMD Athlon 64プロセッサ3800+(2.4GHz/512KB)
- AMD Athlon 64プロセッサ3700+(2.4GHz/1MB)
- AMD Athlon 64プロセッサ3500+(2.2GHz/512KB)
という線でほぼ間違いないものと思われる。
Athlon 64FXは、『Pentium 4 Extreme Edition』同様、金に糸目をつけない人向けなのでひとまずおくとしても、メインストリームのAthlon 64が従来最速だった3400+から一気に400もアップしたのは強烈な印象を与える。インテルが3.4GHzで止まっていること(特にプレスコットコアについては、アナウンスした3.4GHzが未だに出荷されないこと)を考えると、順調な高速化の進展が際だつ。
ゲストスピーチに立った米マイクロソフト社のジミー・チェン(Jimmy Chen)氏は、Windows XPの64bit対応版が今年の第4四半期に出荷されるとアナウンスした。また、同社内に、32bitアプリの64bitポーティングのための情報を提供するラボを設置したことも明らかにした。
旧DECでAlphaを設計し、AMDではAthlonを設計した伝説のアーキテクトのダーク・メイヤー(Dirk Meyer)副社長も登場。個人が扱うPCにおいてもますます大容量のデータを取り扱う、データコンピューティングが本格化した今、いずれ32bitアーキテクチャーは限界に達すると述べた |
企業における、ウイルスによる被害は一人当たり153ドル(約1万6900円)、という推計が出ているという。NX機能によって、ウイルスの半分は動作しなくなることが予想されている |
なお、Athlon 64 FX-53のソケット939バージョンについては、Akiba2GO!の最新パーツ性能チェック(Vol.25)で、まもなくその性能を詳しくお届けする。また、発売中の月刊アスキープラス7月号では、独自に入手したソケット939版Athlon 64についても驚きのスピードテスト結果を掲載しているので合わせて参考にしてほしい。