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TSMC、国内の大学を対象とした廉価試作サービスなどを発表――“TSMCテクノロジーシンポジウム 2004”開催

2004年09月17日 23時58分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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プレスカンファレンスに出席したTSMC関係者一同
プレスカンファレンスに出席したTSMC関係者一同

台湾のティーエスエムシー(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)社は17日、神奈川・横浜のパシフィコ横浜で同日開催している技術交流イベント“TSMCテクノロジーシンポジウム 2004”に合わせたプレスカンファレンスを、隣接するヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルで開催した。会場には、副最高経営責任者のF.C.Tseng(エフ・シー・ツェン)氏、ワールドワイド マーケティング&セールス担当上級副社長のKenneth Kin(ケネス・キン)氏、R&D担当副社長のPing Yang(ピン・ヤン)氏、ならびに日本法人・ティーエスエムシー ジャパン(株)(TSMC Japan)の代表取締役社長の馬場久雄氏らが出席し、同社の現況や日本国内での動向、ならびに当日発表した2つのニュースリリースの詳細を説明した。



副最高経営責任者のF.C.Tseng氏 ワールドワイド マーケティング&セールス担当上級副社長のKenneth Kin氏 ティーエスエムシー ジャパンの代表取締役社長の馬場久雄氏
副最高経営責任者のF.C.Tseng氏ワールドワイド マーケティング&セールス担当上級副社長のKenneth Kin氏ティーエスエムシー ジャパンの代表取締役社長の馬場久雄氏

当日発表されたのは以下の2つ。

  • 0.13μmプロセスウエハーの100万枚(8インチ換算時)出荷を達成
  • 日本国内の大学を対象に、試作サービスを廉価に提供する学教向け支援プログラム“アカデミー・プログラム”を発表

TSMC全体でのプロセス別出荷数の割合 同じく生産体制の割合の変化
TSMC全体でのプロセス別出荷数の割合同じく生産体制の割合の変化

0.13μmプロセスは、同社が2002年第1四半期に認証を受けて量産を開始した。以来、CPUやグラフィックスアクセラレーター、通信インフラ用機器や携帯電話向けプロセッサー/通信デバイスなど500近い製品に採用されているという。今年第2四半期では同社の売り上げ全体の約25%を占め、金額ベースでは約5億ドル(約550億円)に達する。現在は8インチウエハーファブ(工場)である“Fab6”と、12インチウエハーファブ“Fab12”で生産されており、今後第2の12インチウエハーファブ“Fab14”でも0.13μmウエハーの生産を立ち上げ準備中とのこと。

アカデミー・プログラムは、同社が定期的に行なっている試作支援プログラム“CyberShuttle(サイバーシャトル)”を学校関係者向けに最大50%引きで提供するというもの。1年間(予定)の期間限定プログラム。CyberShuttleは、ひとつのウエハー(マスクセット)に複数の顧客がそれぞれの回路を構築して、コストの分担を行なう仕組みで、デバイスのプロトタイプ作成やIP(知的財産、ここでは回路設計などに関する特許を意味する)ブロックの検証などに利用されている。提供されるシリコンウエハーは、0.13μm/0.18μmCMOSプロセス/0.35μmSiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスなど。なお、このサービスはTSMC Japanのアライアンスパートナー企業である、シリコンソーシアム(株)/大日本印刷(株)/凸版印刷(株)の3社を通じて2005年1月に提供開始される。

製造技術の変遷 チップデザインやパッケージングの複雑化 複雑化・多機能化するIPとその成功例
製造技術の変遷チップデザインやパッケージングの複雑化複雑化・多機能化するIPとその成功例
同じくTSMCが手がけた量産化済みの各チップのダイ写真(詳細は非公開) 設計製造工程は、従来のベルトコンベアー式分業から、技術を相互に交換交流しあっての開発に変化しているという TSMCが提供するリファレンスフローの変遷。最新のリリース5では、省電力設計も盛り込むという
同じくTSMCが手がけた量産化済みの各チップのダイ写真(詳細は非公開)設計製造工程は、従来のベルトコンベアー式分業から、技術を相互に交換交流しあっての開発に変化しているというTSMCが提供するリファレンスフローの変遷。最新のリリース5では、省電力設計も盛り込むという

プレスカンファレンスでは、副最高経営責任者のツェン氏が、「これまではムーアの法則にしたがって、2年ごとに半導体の集積密度が2倍になっているが、経済的あるいはアプリケーションの複雑化などの理由から、最近はこの動きに鈍化が見られるようになった。また、従来のパソコン向けCPUから有線/無線通信用チップへと、主な需要も移行しつつある。特に90nmプロセス以下になって、デバイスの設計やパッケージングも難しくなってきた」と述べ、同社のファンダリー(設計・製造)事業に高い技術力が必要とされている現状を改めて示した。その上で、「最近の正常事例としては、ATI(カナダのATIテクノロジーズ社)にLow-k膜(低誘電体層絶縁膜)を提案し、両者で技術交流を図りながら開発を進めて2003年12月に“ATI RADEON 9600 XT”の開発・発表を実現させた。このほかにも多くのメーカーと協業を進めており、多くの案件でダイサイズを10~15%削減できるなどの成果を挙げている」と同社の実績を語った。

TSMCの売り上げ高の変遷 用途(アプリケーション)の変遷 ファンダリー市場の金額シェア
TSMCの売り上げ高の変遷用途(アプリケーション)の変遷ファンダリー市場の金額シェア

キン氏は同社の業績について、「2002年から2003年で売り上げが26%の成長、今年も第2四半期までを昨年同時期と比較すると41%の成長を記録している。1992年から2003年までの年平均成長率(CAGR)は33%に達する」と同社の好調ぶりを具体的な数字を挙げて説明した。売り上げの内訳についても、「0.13μmプロセスが好調で、100万枚のマイルストーンを達成し、喜んでいる。さらに、0.15μm/0.18μmもそれぞれ13%、29%と引き続き堅調。アプリケーション(利用目的、用途)別に見ていくと、コンピューター業界からの受注が27%に減少してきて、それに代わり通信向けが45%を占めるに至った。またコンシューマーセクター(家電製品分野)も22%と好調で、これは今後も伸びていくと思われる」と分析した。最後に同社の今後の目標について、「2005年には0.13μmプロセスのウエハーが8インチシリコン換算で500万枚のキャパシティーを超える。また、今後は12インチシリコンウエハーの製造工場も増やしていく。Low-kプロセスの量産も順調で、8万枚の出荷を果たしている。さらに、より精密なプロセスルール、90nmへのマイグレーションも進めており、詳細は明かせないが現在80種類の製品が設計と生産のステージにある。今年中に、さらに40の製品が登場するだろう」と順調な業績をアピールした。

TSMC Japanの日本におけるシェア TSMC Japanの売り上げ高の変遷
TSMC Japanの日本におけるシェアTSMC Japanの売り上げ高の変遷

日本法人TSMC Japanの代表取締役社長の馬場氏が壇上に立ち、「日本でもアウトソーシングの形態が、従来のセカンドソースから戦略的なパートナーシップ、長期的な信頼関係の構築へと推移しつつある」と切り出して、日本における同社の役割を具体的に語った。さらに、「日本全体における専業ファウンドリーの市場規模は約3億5000万ドル(約385億円)で、TSMC Japanはその約50%のシェアで推移している。日本での年平均成長率は、1998年の日本法人設立から2003年までで約70%、前年上期と今期(2004年上半期)を比較しても、50%の成長を達成している。内訳は、ワールドワイドとほぼ共通だが、2002年に試作開始した0.13μmプロセスのSoC(システムオンチップ)が特に急増している」と日本市場の動向を示した。

日本における製造技術(プロセス)別出荷数量の推移 TSMC Japanのファブレス企業向けの売り上げ高の変遷
日本における製造技術(プロセス)別出荷数量の推移TSMC Japanのファブレス企業向けの売り上げ高の変遷

さらに、同社が主な顧客とするファブレス企業(工場を持たないメーカー)について、「日本のファブレスは、米国などと違い、規模としてはまだ立ち上がっていないのが現状。国内売り上げのうち、ファブレス企業が占める割合は10%程度で、TSMC全体の平均60~70%に大きく差が開いている。ただ、1999年からファブレス企業との取引が増えており、2003年からは急増している。今回発表したアカデミープログラムや、2002年12月から開始している“CAP(CyberShuttle Alliance Partner)プログラム”などにより、ビジネスモデルの変革が徐々に到来しつつある。具体的には、半導体サプライヤーとユーザー(半導体を利用して組み立てるメーカー)に、事業の選択と集中を図るための戦略的アウトソースを提供できるということ。特にデジタル民生機器の旺盛な需要から、最近は市場が活性化していると感じる。また、日本企業の優秀な点として、高いワンパス率(設計後最初の歩留まりが高い)ことがあげられる。今後も日本にある潜在的な市場の拡大に向けて努力していきたい。単に顧客に不足する技術や生産能力を提供するだけでなく、顧客とともによりよい製品作り、開発を進めて行きたい」と日本企業への期待感を示した。

CAPプログラムのテープアウト数と大学関係が占める割合 CAPプログラムに参加するユーザーの内訳
CAPプログラムのテープアウト数と大学関係が占める割合CAPプログラムに参加するユーザーの内訳

また、馬場氏は日本におけるCAPプログラムの実績についても、「2004年7月末現在で、累計テープアウトが122件。試作以外にもデザイン(回路設計)のサービスやアセンブリー、テストなどの付加価値サービスを提供している。従来から大学などの引き合いも多く(約33%)、その際にアカデミープログラムを用意しないのかという声があったので、今回期間限定ながら始めたもの。将来の日本の半導体産業を担う大学生/大学院生に、産業界からTSMCとして貢献できればと思っている」とアカデミープログラム開始の意義を語った。

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