このページの本文へ

日本IBM、ミドルウェア/開発ツールの普及促進を図る“エバンジェリスト”第2陣8名を発表

2004年09月29日 00時00分更新

文● 編集部 佐久間康仁

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
エバンジェリスト(第1陣、第2陣)の顔ぶれの一部
記者発表会の会場壁に張り出された、エバンジェリスト(第1陣、第2陣)の顔ぶれの一部

日本アイ・ビー・エム(株)は29日、東京・渋谷の渋谷マークシティ内にある“SWCOC”(ソフトウェアセンター オブ コンピテンシー)にプレス関係者を集め、同社のミドルウェア/開発ツール/グリッドコンピューティングなどソフトウェア&サービス群を普及促進する“エバンジェリスト(伝道師)”に10月1日付けで8名を追加すると発表した。同様のエバンジェリストは今年5月1日付けで9名が任命されており、新たに加わる8名と合わせて合計16名が、ソフトウェアアーキテクチャー/コンテンツマネジメント/オートノミックコンピューティング/データベース設計・管理/サービス指向アーキテクチャー(SOA)など、それぞれの担当分野に関して執筆や講演などの活動を行なう。



10月1日付けで任命された新エバンジェリスト(8名、敬称略)

丸山 宏(まるやまひろし)
所属部署:東京基礎研究所 コンプライアンステクノロジー
専門分野:コンプライアンス・テクノロジー
浅井信弘(あさいのぶひろ)
ソフトウェア開発研究所 SWアーキテクチャー
ソフトウェア・アーキテクチャー
若尾正樹(わかおまさき)
ソフトウェア開発研究所
ウェブツール
石井宏和(いしいひろかず)
ソフトウェア開発研究所 情報マネジメント・テクノロジー
コンテンツ・マネジメント
小椋 隆(おぐらたかし)
ソフトウェア開発研究所 情報マネジメント・テクノロジー
インフォメーション・インテグレーション
小倉弘敬(おぐらひろゆき)
ソリューション開発 インテグレーション
ビジネスプロセス・インテグレーション
関 孝則(せきたかのり)
グリッドビジネス事業部
グリッド・コンピューティング
大内二郎(おおうちじろう)
ソフトウェア事業
オートノミック・コンピューティング

エバンジェリストはボランティア!!

執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦 浩氏
執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦 浩氏

発表会(お披露目会)には、執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦 浩氏、新エバンジェリストから若尾正樹氏と関 孝則氏らが出席し、エバンジェリスト制度の果たす役割やそれぞれが担当する分野の現状などを説明した。

最初に三浦氏が、「この会場であるSWCOCは、普段IBMのハードウェアを使っていない顧客やパートナー企業がテスト(実証実験)する場として提供してきたが、それを発展させてソフトウェア業界のコミュニティー活動の中心的な位置づけに高めていきたい。その中心的役割を果たす人材として、エバンジェリストを今年5月に初めて制度化し、9名を任命した」と同制度の位置づけを明らかにした。これまでの活用内容として、5月にエバンジェリストとして任命された米持幸寿(よねもちゆきひさ)氏が、自分の担当する“オープンアーキテクチャー&J2EE”を普及促進するためのセミナー“米持先進技塾(よねもちせんしんぎじゅく)”を実施したり、月に1度程度のペースでエバンジェリストと関連する技術者がSWCOCなどに集まって技術者同士の意見交換を行なってきたことが明らかにされた。



エバンジェリストの果たす役割 矢10月1日付けで任命される新たなエバンジェリスト8人の分野と目的
エバンジェリストの果たす役割10月1日付けで任命される新たなエバンジェリスト8人の分野と目的

エバンジェリストの役割は、こうしたセミナーを通じてIBMのミドルウェア/開発ツール群の販売促進を行なうとともに、未来のエンジニアを育成する教育・スキルアップの場を提供することも含まれており、現役大学生向けに開発ツールを安価に提供する“Rational SEEDプログラム”なども並行して実施しているという。

ウェブツール担当エバンジェリストに就任予定の若尾正樹氏
ソフトウェア開発研究所所属で、ウェブツール担当エバンジェリストに就任予定の若尾正樹氏

続いて、若尾氏が“開発ツールの最新動向”と題して、開発ツールに求められる機能や今後の動向などを説明した。若尾氏は、「開発ツールは従来、実行環境のおまけ的な存在として見られがちだった。例えばウェブアプリケーション実行環境“WebSphere Application Server”における開発ツール“WebSphere Studio”のように、数ある開発環境のひとつとしか見られなかった。しかし、現在は多くの開発者が開発ツールに2つの役割、“簡単により早く”“統合開発プラットフォーム”を求めるようになってきた。IBMではかつて自社製品として開発・提供していたウェブアプリケーション開発環境“Eclipse(エクリプス)”を、オープンコミュニティー“eclipse.org”に移管してオープンソース化して広く提供している。移管後も積極的に機能強化を図っており、今後も統合的で使い勝手のいいツールを提供していきたい」と、開発ツールの重要性や将来性を切々と語った。



ウェブツールの具体例としてWebSphere StudioとJSFを使って開発の実例を説明 多人数がかかわる現在の開発体制を支援するというプラットフォーム戦略
ウェブツールの具体例としてWebSphere StudioとJSFを使った開発の実例を説明多人数がかかわる現在の開発体制を支援するというプラットフォーム戦略
グリッドコンピューティング担当エバンジェリストに就任予定の関 孝則氏
グリッドビジネス事業部所属で、グリッドコンピューティング担当エバンジェリストに就任予定の関 孝則氏

最後に関氏が“グリッド標準化の最新動向”というタイトルで、過去と現在、将来のグリッドコンピューティングについて解説した。関氏は普段からテクニカル営業サポートとして顧客に直接グリッドコンピューティングの優位性や利便性を説明しているという。関氏は、「以前からIBMが掲げている“オンデマンドコンピューティング”とは、従来の垂直分業型から水平統合へ、パートナー同士が協業しながら、ビジネスを柔軟に変えていく必要のある時代が到来したことを示すもの。それに対応するには、分散したリソースを背うt属し、アプリケーション同士の連携も図らなければならない。グリッドコンピューティングを“単なる仮想コンピューティング”と言い換えられる場合があるが、現在進めているグリッドは、異機種同士を仮想化することで大量の計算を必要するアプリケーションを分散処理するより高度な技術のこと。大量の計算といえば、従来は科学技術計算が主だったが、IBMではこの分野で秀でていたGlobusと共同でビジネスシーンにおける異機種分散の可能性を探り、2002年に“OGSA(Open Grid Services Architecture)”をグリッドコンピューティングの標準化団体“GGF(Global Grid Forum)”に提案した。同時に、標準化を待たずに大量の計算を必要とする企業や団体には、グリッドを実現するシステムの構築もすでに手がけている。また、IBMのミドルウェア群、データベースシステム“DB2”やウェブ管理ツール“Tivoli(チボリ)”などは、異機種同士の仮想化・再構成などグリッド的な機能をいち早く取り入れている。将来はデータセンターやイントラネットでの仮想化、さらに組織を超えた仮想化へと発展していくだろう」と将来の展望を明らかにした。



オンデマンドコンピューティングの必要性を示すパネル 異機種同士の仮想化・連携をオープンアーキテクチャーとして提案 現在のウェブサービスに不足しているグリッド用ツールをIBMが順次提供するという
オンデマンドコンピューティングの必要性を示すパネル異機種同士の仮想化・連携をオープンアーキテクチャーとして提案現在のウェブサービスに不足しているグリッド用ツールをIBMが順次提供するという
グリッドコンピューティングをいち早く適用する企業もあるという DB2やTivoliなどのサーバー・ミドルウェア製品群は、グリッドコンピューティングの機能をすでに実現しているという グリッドの今後の展開
グリッドコンピューティングをいち早く適用する企業もあるというDB2やTivoliなどのサーバー・ミドルウェア製品群は、グリッドコンピューティングの機能をすでに実現しているというグリッドの今後の展開

説明会の後でエバンジェリストらに直接話を聞く機会を得たが、エバンジェリストに選出される条件としては「ソフトウェア開発の立場で重要な地位を占め、スキルを持つことに加えて、本人がコミュニティーに積極的に寄与する人格(性格)であることなども求められる」という。また、「現在の18人体制でほとんどの分野をカバーできているので、今後も必要に応じて増やしていくが、今回のような大幅な増員はないだろう」と今後の展開も明らかにした。

なお、エバンジェリストに選出されても給料や待遇面などでの優待は特になく、ボランティアで活動しているという。普段の仕事は従来どおりにこなし、空いた時間を使って社外活動(執筆やセミナーなど)を行なう許可が出されているというもので、ノルマや任期などは設けられていない。また、こうした厳しい条件もあって、社外からのエバンジェリスト選出については今のところ予定していないという。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン