ニュース / トピックス
アスキーとMSXアソシエーション共同開発チーム、FPGAで作った“1チップMSX”を公開――製品化は来年3月を目標
2004年10月29日
最後のMSXから10年目の復活
 |

PLD WORLD会場内で展示されていた『1チップMSX』。FPGAによるエミュレーション上で、見事に動作している |
(株)アスキーとMSX愛好者による任意団体“MSXアソシエーション”の共同開発チームは29日、東京国際フォーラムにて開催された“ALTERA PLD WORLD 2004”会場にて、日本アルテラ(株)のFPGAチップを使用した“1チップMSX(仮称)”を出展。別フロアにて行なわれたプレゼンテーションには多くの来場者がつめかけた。“FPGAでMSXを再現する”と題して行なわれたプレゼンテーションでは、『MSX MAGAZINE永久保存版』を手がけるアスキーIT編集部編集長の佐藤英一氏と、MSXアソシエーション理事の横居英克氏により、1チップMSXについての説明が行なわれた。
 |
1チップMSXのプレゼンテーションには、150人以上の来場者がつめかけ、MSXがいまだに根強い人気を誇っていることをまざまざと見せつけた |
|
 |
(株)アスキー アスキーIT編集部編集長の佐藤英一氏(右)と、MSXアソシエーション理事の横居英克氏(左) |
|
アスキーとマイクロソフトが共同で開発した、家庭用8bitパソコンの統一規格“MSX”全世界での累計出荷台数で500万台を記録したMSXだが、今年は製品化された最後のMSXが発売中止になってから、ちょうど10年目にあたる。パソコンとしてのMSXは10年前に終了したものの、現在では世界各地の熱心なユーザーグループの努力によって、Windows用公式エミュレーター『MSXPLAYer』が公開されているほか、関連書籍やMSXのROMカートリッジをWindows上のエミュレーターで遊ぶための周辺機器『MSXゲームリーダー』(完売)も発売されるなど、MSXを楽しむための環境は着実に継承され、新たな発展をとげつつある。
1チップMSXはそうした取り組みの大きな成果と言えよう。MSXを再現する意義について横居氏は、「仕様がオープンであること、また過去のソフトウェアが比較的きちんと保存されていること」を理由に挙げた。技術的な難易度よりも「こうしたコンディションが整わないと、復活させるのは難しい」という。そのうえで横居氏は、「日本のコンテンツ産業は非常に重要だと言われているが、はたして過去のプラットフォームが、今どれだけ実働できるのか」と疑問を述べた。
|
|
公式エミュレーターとMSX用ゲームソフトを収録した書籍や、パソコンでROMカートリッジを使うための周辺機器など、MSX再現のための試みは精力的に行なわれてきた |
1チップMSXはアルテラのFPGA『Cyclone EP1C12Q240C8』(240ピンPQFP)を核に、イメージ展開用の32MB SDRAMやSDカードスロット、MSX ROMカートリッジスロットや各種インターフェースを備えたボードで構成され、“MSX1”をエミュレーションにより再現する。Cycloneはプログラマブルプロセッサであり、VHDL(Very high-speed integrated circuit Hard-ware Description Language)というハードウェア記述言語を用いて、MSX1の機能を実装されている。ROMカートリッジインターフェースを備えているので、当然だがMSX1用のゲームカートリッジを差せば、ちゃんとゲームが動く。FPGAによるエミュレーションとはいえ、パフォーマンスは本物のMSXパソコンとまったく劣らないどころか、後述するようにある意味では上回っている。
 |
1チップMSXの構成。これは試作ボードのもので、製品版とは異なる可能性がある |
|
 |
Cyclone上に実装されているMSXの機能。CPUやメモリーだけでなく、ビデオコントローラーやPSG音源の機能も実装されている |
|
 |
1チップMSXの試作ボード。MSX自体の機能をCyclone 1つで実現したため、意外にシンプルな構成 |
|
 |
試作ボードの基盤イメージ。キーボードコネクターはパソコンのPS/2キーボードコネクターを使用 |
|
 |
1チップMSXを実現しているCyclone FPGA |
|
 |
ボードにROMカートリッジを差すとこのとおり。手前にはMSX用ジョイスティックのインターフェースが2つ並ぶ |
|
自分なりの“MSX3”を自分で作ることも?
1チップMSXはVHDLというプログラム言語で構築されているため、たとえばMSX2をVHDLで作れば、1チップMSXを“1チップMSX2”にアップグレードすることも可能だという。構想の段階ということだが、実際に1チップMSX上でMSX2のゲームを動作させるデモも行なわれた。それどころか1チップMSXを購入したユーザーが自分でVHDLを改良して、まったくオリジナルのMSXを作ることも可能である。「昔からコアなMSXユーザーの間では、“MSX3とはどうあるべきか”という議論があった。(1チップMSXを使って)どうぞ自分でやってください」(横居氏)。製品化されるときには、VHDLを改良して、たとえば“スプライトの同時表示数を倍にする”といった改良のポイントについて解説した本も提供されるということだ。
 |

試作ボードを片手に、ユーザー自身による拡張の意義について熱弁を振るう横居氏 |
ユーザーが1チップMSXを改良するには、開発環境も必要になる。横居氏はCycloneをプラットフォームとして選んだことについて、パフォーマンスや低コストという理由だけでなく、フリーで公開されているソフトウェア開発環境『Quartus II Web Edition』だけで開発できたことが重要だったと強調した。実際に1チップMSXも、無償公開されているソフトウェアだけで開発されたという。将来1チップMSXが市販された際に、ユーザーは無料で1チップMSXに改良を加えることが可能になるわけだ。
そしてまた横居氏は、「ハードウェアを理解したうえで、ソフトを書ける技術者が不足してきているのではないかと危惧している。であれば、ハードの仕組みの基礎的な部分を理解する教材として、MSXは単純でよいのではないか。仕様を公開すれば、ここをいじれば機能を拡張できるとか、そういうことから始まる」と、1チップMSXがハードウェアを学ぶ学生や技術者にも良い製品であると述べた。
1チップMSXの製品化の時期や価格は未定である。また公開された試作ボードそのままの仕様ではなく、一部コネクタ類を削減して、価格を抑えた形になる可能性も指摘された。佐藤氏によれば、流通経路は書店での販売を検討しているとのこと。また「来年の3月くらいには発売したい」とのことだった。往年のMSXユーザーだけでなく、学習教材としてもおもしろそうな物だけに、製品化の実現を期待したい。
 |

1チップMSXの想定ユーザー層。愛好者はもちろんだが、楽しんでハードを学べる教材としても有用そうだ |
(編集部 小西利明)
|