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総務省、第8回“携帯電話周波数の利用拡大に関する検討会”を開催――結論は出さずに“両論併記”で

2005年02月03日 22時23分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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総務省は3日、第8回“携帯電話周波数の利用拡大に関する検討会”を開催した。携帯電話事業における競争の促進と周波数の有効活用の観点から、携帯電話用周波数の利用のあり方について検討を行なうことを目的とした同検討会も、今回で終了となる。総務省は今後、検討会で寄せられた学識経験者などからなる構成員、既存/新規参入を希望する携帯電話通信事業者の意見陳述人から寄せられた意見やデータ、そこで交わされた議論などをもとに、免許方針案の作成を行なう。

検討会開始前の事務局/構成員席
検討会開始前の事務局/構成員席
傍聴席に座るソフトバンク・グループ代表の孫 正義氏 イー・アクセス(株)代表取締役会長兼CEO、イー・モバイル(株)代表取締役社長の千本倖生氏
傍聴席に座るソフトバンク・グループ代表の孫 正義氏。800MHz帯を基本バンド、1.7GHz帯を補助バンドとして新規参入を目指す。「我々は何らかの形で、遅かれ早かれ、携帯電話事業に必ず本気で参入する。本気で価格競争も技術競争もしかける。利用者の数でKDDI/ドコモを抜きたい」(第7回検討会終了後の囲み取材より)イー・アクセス(株)代表取締役会長兼CEO、イー・モバイル(株)代表取締役社長の千本倖生氏も傍聴していた。1.7GHz帯での新規参入を目指す

同検討会は、新たに携帯電話用として使用する周波数帯(1.7GHz帯/2.0GHz帯、2012年以降における700/900MHz帯)の利用のあり方、既存の携帯電話用周波数の円滑な周波数移行などを検討課題としていた。また、無線局免許申請も行ない伝搬特性に優れた800MHz帯での新規参入を目指すソフトバンクBB(株)は、過去に意見陳述人として、既存事業者が800MHz/2GHz帯などのマルチバンドを利用することで、2012年以前に800MHz帯を新規参入希望者に割当てるべきと主張し、1つの争点となっていた。

第8回は、事務局から総務省に提出する報告書“携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会における意見の要旨 (案)”が発表された。内容は第1回~第7回の検討会でのやり取りをまとめたものだが、異なる意見は報告書にそのまま併記。例えば前述の800MHz帯の割当てに関しては、ソフトバンクの主張の後に、ソフトバンクBB以外の新規参入希望者の主張として、周波数再編の途中で800MHz帯を新規参入希望者に割当てることは現実的ではなく、新しい周波数である1.7GHz帯または2GHz帯で実現すべきという意見が記述されている。この要旨(案)について検討会構成員の1人である(株)日本経済新聞社の関口和一氏から、検討会としての大まかな方向性を示すべきという意見があがったが、検討会として対立する意見を1つ1つ確認しながら進行するスタイルを採っていないことなどをから、「両論併記」(検討会座長・土居範久氏、中央大学理工学部教授)とし、検討会の“結論”は示さないことになった。

閉会に際し、総務省総合通信基盤局長の有冨寛一郎氏は、今回の検討会のように議論を経てから総務省が最終判断を下すというプロセスはこれまでになく、「かなりいい検討素材をいただけたと考えている」と、検討会を高く評価した。なお同要旨(案)は、今回の検討会を受けて一部内容を加筆・修正し、来週早々にも事務局(総務省)のウェブサイトで最終版が公開される見込み。

「泣き寝入りするわけにはいかない」

検討会を傍聴していたソフトバンク・グループ代表の孫 正義氏は、終了後に総務省職員に詰め寄り、免許方針案の作成について「フェアにね」と念を押した。また、検討会の進行中にすべての傍聴人の発言は禁止されているため、報道陣の囲み取材を受け、「最初から総務省は現在の上位2社に偏って配分するという案(※1)を持っているわけですよね? それをそのまま強行するとすれば、所詮“できレース”だったということを結果的には感じてしまう恐れがある」と、けん制した。

※1 総務省が昨年8月6日に発表した“800MHz帯におけるIMT-2000周波数の割当方針案”では、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモグループ/KDDI(株)グループに割り当てられる方針となっていた。ソフトバンクBBは10月、自由競争が阻害されると、東京地裁に同方針案の実施の差し止めなどを求め提訴。その後、東京地方裁判所民事法廷における総務省とのやり取りで、同方針案が総務省のビジョンを示したに過ぎず法的拘束力を持たないことなどが明らかになったとして、仮処分申請を取り下げ、総務省に対して800MHz帯での無線局免許申請を行なった

また、閉会した検討会については、「(構成員、意見陳述人とも)意見がバラバラと分かれたままで、実質的な結論が出ていない。議論の過程であると受け止めている」との認識を述べ、「意見が分かれたままのものを、一方に有利なほうに、総務省が仮に決めるとすると、議論の結果と総務省の方針案の決定は、ズレていたことになる。そうならないことを願っている」とした。

孫氏は、前回の検討会終了後の囲み取材でも、検討会構成員選定のプロセスや検討会の議事の進め方などに不透明/不公平なものがあったと強く主張したが、「結局、最後はフェアな人たちだろうと信じたい。僕は性善説ですから」という。「しかし、もしアンフェアな結論を出されたとすると、我々としては泣き寝入りするわけにはいかない」と、着地点によっては何らかの行動に出る可能性があることをほのめかした。

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