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三菱電機、2004年度研究開発成果披露会を開催――ドーム型プロジェクターから紫外線レーザーによる微細加工技術まで

2005年02月16日 15時07分更新

文● 編集部 小西利明

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披露会にて公開された研究のひとつ“ドーム型シームレスマルチプロジェクタ映像表示システム”。6台のプロジェクターを使って半球状のスクリーンに継ぎ目のない3D映像を表示している 披露会の主会場となった情報技術総合研究所 第2研究棟。このほかに3つの小会場も併用して開催された
披露会にて公開された研究のひとつ“ドーム型シームレスマルチプロジェクタ映像表示システム”。6台のプロジェクターを使って半球状のスクリーンに継ぎ目のない3D映像を表示している披露会の主会場となった情報技術総合研究所 第2研究棟。このほかに3つの小会場も併用して開催された

三菱電機(株)は15日、神奈川県鎌倉市大船にある同社情報技術総合研究所にて“2004年度 研究開発成果披露会”を開催し、同社の情報通信技術を中心とした研究開発の成果についての発表を行なった。この披露会は毎年1回この時期に開催されているイベントで、公開された技術は大半が今後事業化されていくという。

三菱電機執行役社長の野間口有氏
三菱電機執行役社長の野間口有氏

会の冒頭の挨拶で、同社執行役社長の野間口 有(のまぐち たもつ)氏は研究所のミッションについて、「事業サイドでは発想の及ばない新しい着想をする、創造性を発揮する」ことが重要とし、そうした取り組みのいくつかを披露すると述べた。そのうえで“強みをより強化する”という同社の戦略に対する研究開発の貢献を評価し、スタッフの労をねぎらった。公開された技術は多岐に渡り、通信技術やセキュリティー、デジタル映像技術といった馴染みの深いものから、有害物質に変化する揮発性物質を除去する環境配慮の技術まで、初公開となる10件を含めた計20件の研究成果にものぼる。以下はカテゴリーごとの一覧である。それでは注目の研究開発について紹介しよう。



映像・デジタル画像処理
業務用大型映像音響システム総合実験スペース
ドーム型シームレスマルチプロジェクタ映像表示システム
MPEG-4 AVC/H.264リアルタイム映像符号化装置
ブルーレイ・ディスクプレーヤー用再生制御ミドルウェア
セキュリティー
マルチヒット画像検索技術
アナログ耐性を持つ電子透かし技術
世界最長距離96kmの量子暗号フィールド試験
光ファイバーセンサー応用セキュリティシステム
オールIPデジタル遠隔映像監視システム
通信
GE-PONシステム
小型光送受信機
次世代設備ネットワークシステム
プログラムダウンロード方式ホームネットワークアダプタ
UWB方式による高画質動画伝送システム
ZigBee(ジグビー)対応 産業プラント設備監視システム
デバイス・機器
高効率の揮発性有機化合物(VOC)分解・除去技術
深紫外固体UVレーザー
高周波無線回路向けRF-MEMSスイッチ
自動車情報・テレマティクス
次世代ITSアプリケーション対応の高速交通情報予測技術
車載情報システムの新しいユーザーインターフェース

パソコンと6台のプロジェクターを使ったドーム型プロジェクター技術

“ドーム型シームレスマルチプロジェクタ映像表示システム”のデモの様子。半球型のスクリーンの周囲に、プロジェクターが設置されている
“ドーム型シームレスマルチプロジェクタ映像表示システム”のデモの様子。半球型のスクリーンの周囲に、プロジェクターが設置されている

“ドーム型シームレスマルチプロジェクタ映像表示システム”は、半球状のスクリーンの内部に、6台のプロジェクターから投影される3D CG映像を継ぎ目なく合成して表示する映像システムである。既存のパソコンやパソコン用周辺機器を活用して、安価にシステムを構成しているのが特徴だ。まずスクリーンを見る視点の位置に2つのウェブカメラを設置して、6台のプロジェクターから位置合わせ用のパターンを投影する。半球状のスクリーンに投影された映像は、当然球の丸みに沿って歪むので歪みを計測しておき、投影用の3D CGを歪みに合わせてリアルタイムに変形させることで、視点から見て正しい形に投影を行なう。

歪みパターンを計測するカメラ。カメラ自体は市販されているパソコン用USBウェブカメラとのこと システムの概念図。6台のパソコンがそれぞれプロジェクターにつながり、さらに制御用パソコンを1台使用する
歪みパターンを計測するカメラ。カメラ自体は市販されているパソコン用USBウェブカメラとのことシステムの概念図。6台のパソコンがそれぞれプロジェクターにつながり、さらに制御用パソコンを1台使用する

映像を表示するのはごく一般的なパソコンで、デモシステムではPentium 4-3GHzとグラフィックスカードに“GeForce FX 5900”を搭載したパソコンを使用して、3D映像を分散レンダリングしていた。表示システムは3Dグラフィックスの標準APIである“OpenGL”用に作られたデータに対応しており、曲面に合わせて映像を変形させる機能は、GeForce FX 5900のプログラマブルピクセルシェーダーを使用しているという。専門のハードウェアや3D表示ASICなどを使わずに、パソコンベースのシステムで実現しているのが大きなポイントと言えよう。実際に表示を見てみると、映像同士の継ぎ目などはまったく感じられず、半球状の広いスクリーンによって、なかなか臨場感のある映像を実現していた。デモ映像はやや映像のフレームレートが低く感じられたが、グラフィックスカードの性能向上によって、より高速な表示も可能になるとの説明があった。

3D表示や制御を行なうのは、特にハイエンドというほどでもない普通のパソコン
3D表示や制御を行なうのは、特にハイエンドというほどでもない普通のパソコン

この技術は産業用シミュレーターの開発・販売を手がける三菱プレシジョン(株)との共同開発によるもので、システム開発を三菱電機が行ない、コンテンツ制作などは三菱プレシジョンが担当するとのこと。すでに国立身体障害者リハビリテーションセンターに、“車椅子シミュレーター”としての納入が決まっていると言う。そのほかにもアミューズメント施設用途のほか、イベント用途などが想定されている。

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