EMCジャパン(株)は18日、情報/ストレージ管理関連ソフトウェアをテーマとしたプレス・ラウンドテーブルを開催し、米EMC社・ソフトウェア部門“EMCソフトウェアグループ”担当の上席副社長兼チーフ・マーケティング・オフィサーのディビット・マイラム(David Milam)氏が、ビジネスの現況と今後の戦略について説明を行なった。
米EMC社のEMCソフトウェアグループ担当の上席副社長兼チーフ・マーケティング・オフィサー、ディビット・マイラム氏 |
現在EMCがカバーするソフトウェア製品の主なカテゴリーは、ストレージのインフラ/管理、情報/コンテンツの管理、サーバー/ストレージの仮想化、ネットワーク管理、など。米EMCの2004年第4四半期の収益は23億4500万ドル(約2500億円、前年同期比+27%)で、このうちソフトウェアによる収益は全体の27%にあたる6億3700万ドル(約660億円)。前年同期に比べて43%の成長を遂げているといい、EMCの事業の中でも特に成長の大きな分野だという。
マイラム氏によると、EMCソフトウェアグループの目指す戦略的ゴールは、“エンタープライズ向けソフトウェア企業で上位5社に入ること”“情報インフラソフトウェア供給企業で世界第1位になること”の2点。マイラム氏が示した資料によると、エンタープライズ向けソフトウェア企業のランキング(2004年12月16日時点)で同社(7位)の上位に座しているのは、米マイクロソフト社(1位)、米IBM社(2位)、米オラクル社(3位、米ピープルソフト社の買収による上積みを含む)、独SAP社(4位)、米シマンテック社(5位、米ベリタスソフトウェア社の買収による上積みを含む。米シマンテックの買収前の順位は8位、米ベリタスソフトウェアは9位)、米コンピュータ・アソシエイツ社(6位)。目標として掲げる“トップ5入り”には、その差約15億ドル(約1600億円)内の米シマンテック、米コンピュータ・アソシエイツを逆転する必要があり、これに向けて「ソフトウェアのビジネスを強化していく強い意志を持ち、自社開発と買収による製品の強化をさらに進めていく」としている。
同氏のプレゼンテーションの後に行なわれた質疑応答では、合併によりEMCを逆転した米シマンテックとの製品や戦略の違いに関する見解を問う質問が出たが、マイラム氏は米シマンテックを「セキュリティーと、(米ベリタスソフトウェアが持っていた)バックアップの分野における強力な企業」だと評した。しかし、米シマンテックは「(情報/コンテンツ/ストレージ/ネットワーク管理などの)全ジャンルにおいて強いわけではなく、ILMについて語ることは少ない」と指摘し、「(セキュリティーやバックアップなど特定分野の)ポイントツール的ソリューションを提供する企業ではないか」と述べた。また、バックアップ・ソリューション分野では競合相手になるとしているが、「(米ベリタスソフトウェアの持っていた市場には)少なからず合併に伴う混乱もある」と見ているといい、米ベリタスソフトウェア製品からEMC製品への乗換えを促進する「アグレッシブなキャンペーン“Safe Switch”を展開している」ところだと述べた。
ストレージ管理ソフトウェア(写真左)と情報/コンテンツ管理ソフトウェア(右)の製品ラインナップ |
ILMの基本的な例。情報のライフサイクルに応じて管理方法や参照方法、保存するストレージなどが移り変わっていく |
顧客への具体的なアプローチ戦略としては、IT部門に向けた“社内のプラットフォームとなるソリューション”としてアプローチする方法と、より会社の上層部(マーケティングなどを取り仕切るヴァイス・プレジデント級役員など)に向けた“基幹業務システム・ソリューション”としてアプローチする方法の2系統の考え方を示し、前者では、外部のERPやポータルサービスなどとの連携を、後者では、研究/開発から製造、販売、サービスまでの全ビジネスプロセスを包含できるトータルな基幹システムの提供するとしている。
ECMの展開する統合管理プラットフォーム |
エンタープライズ向けのコンテンツ管理プラットフォームの展開においては、
- コンテンツの有効な管理(ライフサイクル管理)
- コンプライアンス(法令遵守)への対応
- コラボレーション能力の向上
- 統合環境
の提供を強調。エンタープライズ環境で、複数の業務管理システムが運用されている状況を、EMCのコンテンツ管理システムによりデータベース化し、“サイロ”状に分断・乱立する管理システムやプラットフォーム、データベースを有効に統合していくことをポイントとした製品の展開を進めていくという。
マイラム氏がたびたび強調した“統合”による、技術面の利点(写真左)とビジネスにおける恩恵(右) |
同氏は、これらの戦略や製品展開の実現に向け、「EMCや買収した企業のソフトウェア資産の優秀な部分を有効に連携」させ、「ソフトウェア業界で存在意義を高めていくための努力を続けていく」としている。また、買収により中小・中堅企業~SOHO分野での製品ラインナップの充実も進んでいるといい、今後は、従来の大企業中心の展開だけでなく、中小規模企業向けの展開も一層の強化を図っていくとしている。
また、ILMの実現については、「現時点で埋めなければならない“穴”はないといえばない」と述べ、同社の構想を実現するだけの製品や技術がほぼ出揃ったとの見解を示したが、「ILMはまだ歩み始めたばかり。今後はさらにその考え方に深みを増していかなければならない」として、製品の充実に意欲を示した。