このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

日本が誇る大輸出産業“アニメ”を盛り上げる――世界最大級のアニメフェア“東京国際アニメフェア2005”レポート

2005年04月04日 17時59分更新

文● 千葉英寿

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で3月31日、世界最大級のアニメフェア“東京国際アニメフェア2005”が開幕した。主催は東京国際アニメフェア実行委員会(委員長は東京都知事の石原慎太郎氏)。会場には、大手から中小まで数多くのアニメ制作会社やゲーム/映画制作会社をはじめ、関連サービスや技術を提供する企業、アニメーターなどのクリエイターを養成する学校など、アニメ業界に関係した企業・グループが多数ブースを出展した。これらの中にはコンテンツを制作する手法や提供するサービスなどにおいて、さまざまな形でデジタル技術が浸透し、展示内容にもそうした部分を見つけることができた。

“日本のアニメビジネス”はいまや、国を挙げて推進する“コンテンツ産業の中心的存在”として、成長の歩みを早めている。日本製のアニメは世界中のアニメの約6割を占めると言われており、その中の8割を生み出している東京都がアニメを“地場産業”と位置づけて、アニメ産業の振興と育成を図るべく、アニメ関連企業・団体とともに実行委員会を組織して開催しているのが本展示会の実像だ。

4回目となる今年は、大手/中小のアニメ制作会社を中心とした197の出展企業・団体による“見本市”、特別企画展“やなせたかしとアンパンマンの世界”などのテーマ展示や各種シンポジウム、ステージイベントなどの“イベント”、優秀なアニメ作品を選定して表彰する“コンペティション”という3部構成となっている。また今年の新企画として、日本のアニメ創成の礎となった20人の功労者を称える特別功労賞“日本のアニメをつくった20人”の表彰式典が加わった。

見本市の各ブースではTVや映画、パッケージなどで展開を予定している最新アニメコンテンツを来場者にPRするとともに、国内外のバイヤーとの商談も行なわれていた。海外からの出展者も目立ち、会場には米国をはじめ、韓国や香港、台湾などのアジア方面からの来場者も多数見られた。

『機動戦士Zガンダム―星を継ぐ者―』 総監督の富野由悠季氏
以前の制作手法で作られたアニメと現在のデジタルアニメでは、質感などに決定的な違いがある。こうした課題をクリアして完成したのが『機動戦士Zガンダム―星を継ぐ者―』だ。 (C)創通エージェンシー・サンライズ・バンダイビジュアル

会場入口に入ってすぐに目につくのが、巨大なスクリーンを配した(株)バンダイ/バンダイビジュアル(株)/(株)サンライズなど、バンダイグループが集結した“バンダイブース”だ。スクリーンには常時、各社の作品映像が流されており、サンライズ制作による5月公開予定の映画『機動戦士Zガンダム―星を継ぐ者―』のメイキング映像には多くの来場者が見入っていた。

映像には総監督の富野由悠季(とみのよしゆき)氏が登場し、本作の制作過程の話を中心に語った。本作はTV版の映像をダイジェスト化し、CGなどで新たな映像を加えて、新解釈によって再構成したもので、制作はまずTV版のDVDを検証して必要な映像部分を抽出し(作業は富野氏自身がアップルコンピュータのノートパソコン“PowerBook G4”とビデオ編集ソフト『Final Cut Pro』で操作していた)、新たに絵コンテを起こしたシーンやCGを加えたシーンなどとTV版の映像をマッチさせるために“エイジング(Aging、映像に古びた印象を加える特殊効果)”という手法で修正を加えている(こちらはWindowsベース)、と語っていた。

Production I.Gのブース
Production I.Gのブース

日本TV放送網(株)/(株)スタジオジブリ/松竹(株)とともに出展していたプロダクション・アイジー(株)(Production I.G)のブースでは、映画『イノセンス』の資料などを展示するとともに、今年劇場公開予定で制作中の『XXXHOLiC(ホリック)』(原作:CLAMP)を紹介していた。さらに2日目(今月1日)には世界最大のアニメ専門チャンネルの“カートゥーンネットワーク”と共同制作するアニメ作品『IGPX』を発表。同作品は近未来、時速400kmで疾駆する人型高速競技メカ“IGマシン”によるレーシングスポーツが大人気な2048年が舞台という近未来電脳スポーツアニメーションだ。

Production I.Gのアニメ作品『XXXHOLiC』今年劇場公開予定というProduction I.Gのアニメ作品『XXXHOLiC(ホリック)』(原作:CLAMP)のキャラクター衣装を身にまとったスタッフ
子供に人気のある『ふたりはプリキュアMax Heart』東映(株)ブースでは子供に人気のある『ふたりはプリキュア Max Heart』のキャラクター(マスク)が登場
人気アニメ『鋼の錬金術師』
(株)アニプレックスブースでは昨年TV放送され、今年は劇場公開を控えている人気アニメ『鋼の錬金術師』に登場する軍服を着たスタッフがバック配布のサービスをしていた
『コミカル・イソッピィ』を中心としたタカラブース
『コミカル・イソッピィ』を中心としたタカラブース

(株)タカラのブースでは、公式ウェブサイトタカランドとイラストレーターの松下 進氏、“デジハリDNA(デジタルハリウッド卒業生)”とのコラボレーションによるフルCGアニメーション作品『コミカル・イソッピィ』を紹介していた。同作品は今月から、モバイル放送(株)のモバHO!内『ch001 TAKARAND』で放送されるもので、童話・イソップ物語をモチーフにしたコメディ・アニメーションだ。“北風と太陽”や“金の斧・銀の斧”といったイソップ物語をベースに新たなイソップの世界を作り上げている。キャラクターデザインは松下 進氏、アニメーション監督は本塚浩一氏。同作品はモバHO!で公開後、DVD-Videoでも発売される。



ブースには相当数のモバHO!端末“東芝モバビジョン”が用意された
ブースには相当数のモバHO!端末“東芝 モバビジョン”が用意されていたが、取材当日は放送開始前ということで、実作品は視聴できなかった

デジタルアニメーション制作支援ソフト“RETAS!シリーズ”を提供している(株)セルシスのブースは、アニメを携帯電話で読む“よむアニ”を紹介していた。同様のソリューションとしては、3月に(株)トムスエンタテイメントが“アニ読メ”としてEZwebでサービスを開始しており、『巨人の星』『アタックNo.1』『ガンバの冒険』『あしたのジョー2』『キャッツ・アイ』『名探偵ホームズ』などの著名作品を配信している。紙媒体のアニメコミックを携帯サイトを見るのと同様の感覚で楽しめる新しいメディアの登場と言えるだろう。ブースの説明員によれば、「現時点ではサービスを提供しているのは、トムスエンタテイメントのみですが、本展示会の出展社数社から引き合いがきており、年内にも(他社からコンテンツの)提供が開始される予定です」とのことだった。

セルシスは“よむアニ”を前面に押し出していた
RETAS!や“COMIC STUDIOシリーズ”などの制作ツールを開発・発売しているセルシスだが、今回は“よむアニ”を前面に押し出していた

携帯電話向けのコンテンツは、(株)手塚プロダクションをはじめ、ほかのブースでも紹介されていた。手塚プロダクションの提供する携帯コンテンツはiモード向けが“手塚治虫+i”とEZweb向けの“手塚治虫+ez”でマンガ(静止画)/Flash(インタラクティブコンテンツ)/ムービー(動画)などの形式で提供されいる。



“アニ読メ”で配信されている『キャッツ・アイ』“アニ読メ”で配信されている『キャッツ・アイ』。シーンに応じて効果音とバイブレーションで臨場感を伝える携帯らしい工夫もなされている。 (C)北条司/Coamix・TMS
『ぼくの孫悟空』“手塚治虫+i”ではムービーも提供されている。画面は『ぼくの孫悟空』。 (C)Tezuka Productions

このようにアニメは、さまざまなメディアで提供されているが、制作手法もデジタル化によって多様化している。3DCGを使ったアニメはメジャー作品でも積極的に取り入れられており、一般化してきているが、そうした中でユニークな存在が“Flashアニメ”だろう。マクロメディア(株)のリッチコンテンツ作成ツール群“Macromedia Flash”を使って作成されたもので、インターネットで配信するコンテンツや教育系のコンテンツなどに活用されている。

オリジナルキャラクター“CANDY BOKU”
(有)クリエイティブオンデマンドはFlashで作成したオリジナルキャラクター“CANDY BOKU”を紹介。教育分野での引き合いが多いということだった
いしいひさいち氏作品のFlashアニメ
(株)オペラハウスは、(株)朝日新聞社のニュースサイト“アサヒ・コム”で展開中の“ののちゃんシアター”などで知られるいしいひさいち氏作品のFlashアニメを紹介しており、ブース担当者は「スタッフは元々アニメ制作経験者でデジタル技術にも長けておりバランスがとれているのが強みです。今後はFlashアニメの分野を拡大したい」と語った

日本放送教会(NHK)のブースでは、(株)NHKテクニカルサービスが開発した70インチの立体ハイビジョンビデオプロジェクター『NKV-70H3D』を出品していた。同プロジェクターは3D偏光メガネを使用して立体ハイビジョンを楽しめるもので、立体映像ソースを収めたハイビジョンVTRを再生する“2画面デコーダー”(ひとつの映像を右目用と左目用に分離)と2台のプロジェクター(スクリーン上に左目/右目用の2つの映像をズレた状態で交互に投影)を内蔵している。

NHKブースに展示された“3D Hi-Vision”
NHKブースに展示された“3D Hi-Vision”。会場に用意された3D偏光メガネで楽しむことができる

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン