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【IDF Japan 2005 Vol.3】「人々はもう体毛より多くのトランジスターを持ち歩いている」――基調講演に見るインテルのモバイル戦略


2005年4月8日

ノートから携帯電話、ワイヤレスまで手がけるモビリティ事業本部

モバイル分野への取り組みについて語るモビリティ事業本部副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏
モバイル分野への取り組みについて語るモビリティ事業本部副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏

7日から開催された、インテル(株)主催の開発者向け会議“インテル・デベロッパ・フォーラム Japan 2005”(IDF-J)。2日目の基調講演では、デジタル・エンタープライズ、ソリューション、モビリティの3つのテーマについて、それぞれを担当する事業部のスタッフが講演を行なった。ここでは特に一般のパソコンユーザーにとってもホットな話題の多い“モビリティ”の講演について、レポートしたい。講演を行なったのは米インテル モビリティ事業本部副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン(Mooly Eden)氏。氏はMMX PentiumやPentium Mなど、特にモバイル分野において優れたデザインのプロセッサーを次々と世に送り出した、同社のイスラエル開発センターのセンター長兼ディレクターを勤めていた経歴を持つ、いわば同社随一のモバイル向けプロセッサーの専門家である。

“モバイルの時代”と題して行なわれたエデン氏の講演では、まず1995年には半導体全体の12%に過ぎなかったモバイル分野向けの半導体の割合が、2004年には35%まで増加しているという調査結果を示し、「製造されるトランジスターの3分の1は人が持ち歩くものになっている。私たちが持ち歩いているトランジスターの数は、人間の体毛の数よりも多い。これはすごいことだ」と、モバイル分野が非常に隆盛であることを、ユーモアを交えて語った。そしてインテル自身も今まで以上に低消費電力のデザインを重視しているとして、同社の事業再編で誕生した5つの事業本部のひとつであるモビリティ事業本部が担当する分野について、携帯電話やポータブルエレクトロニックデバイス向けプラットフォーム、ノートパソコン向けプラットフォーム、そしてモバイル向けブロードバンド技術(コンテンツ配信などのソフトウェア技術も含む)の3本の柱を挙げた。

1995年から2004年までのモバイル分野向け半導体の伸びを示すグラフ。すでに半導体の3分の1以上はモバイル向けである
1995年から2004年までのモバイル分野向け半導体の伸びを示すグラフ。すでに半導体の3分の1以上はモバイル向けである

携帯電話向けの取り組みについては、“携帯電話のスマートフォン化”という観点から話を進めた。エデン氏は携帯電話の通信速度や機能が高度になったことによって、第1世代携帯電話の頃は端末に搭載される半導体の価格は25ドル(約2700円)程度だったのが、W-CDMAなど現在の多機能なスマートフォンでは3倍の75ドル(約8100円)にまで上昇しているというグラフを示し、高度な機能と高速データ通信機能を持つ携帯電話が普及しつつある今こそ「インテルの活躍するとき」として、携帯電話向けのプロセッサーを重要な市場と認識している点を強調した。携帯電話向けプラットフォームのロードマップも披露された。それによると、2005年にはXScaleアーキテクチャーのCPU“Intel PXA27xファミリー”と“Hermon(ハーモン)”プラットフォームを、ハイエンドの携帯端末からミッドレンジの携帯電話に投入する。機能の少ないローエンドの携帯電話については、高度なCPUは搭載せず、Hermonプラットフォームだけでまかなう。また2006年にはそれぞれのプラットフォームの新製品も投入する。

ノートパソコンとカメラ付き携帯電話の連携を示すデモでは、携帯電話で撮影した画像をボタンひとつでパソコンに転送してみせた
ノートパソコンとカメラ付き携帯電話の連携を示すデモでは、携帯電話で撮影した画像をボタンひとつでパソコンに転送してみせた
2005〜2006年にかけての、携帯端末や携帯電話向けのプロセッサーとプラットフォームのロードマップ
2005〜2006年にかけての、携帯端末や携帯電話向けのプロセッサーとプラットフォームのロードマップ

ノートパソコンの分野については、“Centrinoモバイル・テクノロジ”の登場によって、2002年には10%程度だった無線LAN機能搭載ノートの比率が、わずか1年後には65%以上になり、2007年にはこの比率が90%以上になるだろうとの見方を示した。また無線LANプラットフォームの広がりによって、無線LAN向けの新しいサービスも登場しているとして、東京両国の国技館内で1月からインテルの協力により試験提供されている相撲についての情報配信サービス“SumoLiveTV”を例として紹介した。ちなみにSumoLiveTVは5月から正式サービスが開始されるとのことで、エデン氏は「ぜひ皆さんが国技館に行く時には、必ずCentrino搭載のパソコンを持っていってほしい」と語った。

携帯電話の機能向上にともない、搭載される半導体の価格も上がっているが、無線LAN対応ノートパソコンではその金額はより高く、機能も優れているとする
携帯電話の機能向上にともない、搭載される半導体の価格も上がっているが、無線LAN対応ノートパソコンではその金額はより高く、機能も優れているとする
インテルの協力によって国技館内で提供されている、Centrino搭載ノート向けの相撲の映像・情報配信サービス“SumoLiveTV”
インテルの協力によって国技館内で提供されている、Centrino搭載ノート向けの相撲の映像・情報配信サービス“SumoLiveTV”

ノートパソコンに大きな変革をもたらす“Napa”プラットフォーム

IDF-Jの展示ブースで披露されていた、Napaプラットフォームを搭載するノートパソコンのデモ機。見た目は流行りの15インチ級ワイド液晶パネル搭載の、オーソドックスな2スピンドルノートである
IDF-Jの展示ブースで披露されていた、Napaプラットフォームを搭載するノートパソコンのデモ機。見た目は流行りの15インチ級ワイド液晶パネル搭載の、オーソドックスな2スピンドルノートである

エデン氏の講演の山場となったのが、ノートパソコン向けの新しいプラットフォームに関する話題である。現在のプラットフォーム“Sonoma(ソノマ)”の跡を継いで登場する次世代のプラットフォームは“Napa(ナパ)”というコード名で呼ばれており、製品の登場は2006年第1四半期を予定している。Napaを構成する要素は次の3つのコンポーネントとなる。

CPU:Yonah(ヨナ)
インテル初のモバイル向けデュアルコアCPU。65nm製造プロセスで製造される。コアアーキテクチャーは現行のPentium M(Dothan:ドタン)に改良を加えていて、特にSSE命令に関するパフォーマンスが向上している。内蔵2次キャッシュメモリーはコアごとに1MBの合計2MB。
チップセット:Calistoga(カリストガ)
改良されたグラフィックス機能を搭載するチップセット。
無線LANチップ:Golan(ゴラン)
現行の無線LANチップセットより40%も小型化された無線LANチップセット。米シスコシステムズ社による相互接続性認証プログラム“Cisco Compatible Extensions”に対応。
Napaプラットフォームの新しい機能や要素
Napaプラットフォームの新しい機能や要素

エデン氏はNapaで実装される新しい機能について説明を行なった。まず“インテル デジタル・メディア・ブースト”については、CPUのアーキテクチャーに変更を加えて、マルチメディアアプリケーションのパフォーマンスを向上させている。マルチメディアアプリケーションで多用されるSIMD演算を行なうSSE/SSE2/SSE3命令を、CPUコアの内部命令(μops)に変換する“μopsフュージョン”を改良することで、並列化して実行可能としているという。またプロセッサー類の温度を監視する熱センサーに、デジタル式の高精度のセンサーを採用している。

Napaを構成する無線LANチップセット“Golan”は、小型化とセキュリティー機能の強化などがキーポイントとなっている
Napaを構成する無線LANチップセット“Golan”は、小型化とセキュリティー機能の強化などがキーポイントとなっている

Napaで重要なポイントのひとつが、省電力機能の“インテル ダイナミック・パワー・コーディネーション(DPC)”である。これはデュアルコア化によって、今までのPentium Mに搭載されていた“拡張版SpeedStepテクノロジ(EIST)”に変更を加えなければならなくなったために導入されたものだ。エデン氏はアニメーションを元にDPCの動作についての説明を行なった。EISTはCPUの動作状態に応じて、動的にクロック周波数や動作電圧を変更することで、パフォーマンスを損なわずに消費電力を引き下げることができる。しかしYonahの場合、コアは2つあってもCPU自体に供給される電圧は1つなので、片方のコアの負荷が軽いのでクロックや動作電圧を下げたくても、もう片方のコアの負荷が高い場合は下げられない。CPU全体で負荷の高いコアに合わせたクロック、電圧管理を行なうのがDPCの機能というわけだ。つまり各コアの動作状況によっては、EISTと比べてバッテリー消費のロスが生じてしまう。2つのコアに異なる電圧を供給するためには、ボルテージレギュレーターをコアと同じ数だけ搭載する必要があるが、システム全体のコストアップにつながる。つまりデュアルコア化によって、従来どおりのEISTをそのまま使うことができなくなったため、苦肉の策として搭載された機能がDPCと言える。

コア1とコア2でパワーステートが異なる場合、Yonahは高い方にクロック周波数や電圧を合わせる
コア1とコア2でパワーステートが異なる場合、Yonahは高い方にクロック周波数や電圧を合わせる
CPUが休んでいる“アイドル状態”の設定も、負荷が高い=消費電力が高い側に設定される
CPUが休んでいる“アイドル状態”の設定も、負荷が高い=消費電力が高い側に設定される
DPCの動作を説明するスライド

これだけを聞くと、YonahになるとCPUの消費電力は増大して、バッテリー駆動時間が短くなってしまうように思えるが、これについてエデン氏は前日に行なわれた記者会見で、Yonahは現行のDothanよりも低消費電力であると述べた。これが製造プロセスが90nmから65nmへと縮小されるためであるのか、それともデュアルコア化によって最高動作周波数が引き下げられるのか、他にも理由があるのかは分からないが、Napaベースのノートパソコンのバッテリー駆動時間がどうなるかは、注目して見ていきたい事象である。

Napaではプラットフォームのさらなる小型化も促進されると、エデン氏は述べた。第1世代のCentrino(コード名Carmel:カーメル)のサイズを100%とした場合、現行のSonomaは87%のサイズに、Napa世代では69%と、約3分の2にまで小型化が可能と言う。エデン氏はパソコンメーカーが新たなデザインのモバイルパソコンを設計するための支援として、2003年から行なわれていた“インテル・モバイル・コンセプトPC プログラム”について触れ、コンセプトPCで生まれたデザインから発想を得たという、パソコンメーカー各社の新しいパソコンのデザインのいくつかをステージ上で披露した。それらはノートパソコンではなく、薄型の液晶ディスプレー内にパソコンの機能を内蔵したような超薄型で省スペースのディスプレー一体型パソコンも多い。現在日本で人気のある液晶ディスプレー一体型のパソコンは、プラットフォーム部分はデスクトップと同じものを流用しているので、意外に設置面積を必要とするものだが、講演で披露されたマシンはどれも液晶ディスプレー単体とさほど変わらないコンパクトさ。前日の記者会見でエデン氏は、日本のパソコンメーカーからは、「YonahやNapaをデスクトップで使いたい」という声もあると認めている。来年にはノート向けの低消費電力&低発熱のNapaプラットフォームを利用した、今までにないデザインのパソコンが登場してくるかもしれない。

世代を経るに従って、Centrinoプラットフォームも小型化が進んでいることを示すグラフ。65nm世代のNapaでは、130nm世代のCarmelの3分の2程度まで小さくなる
世代を経るに従って、Centrinoプラットフォームも小型化が進んでいることを示すグラフ。65nm世代のNapaでは、130nm世代のCarmelの3分の2程度まで小さくなる
Napaを使って大胆に薄型化されたパソコンを披露するエデン氏。どれも見た目はまるっきり単体の液晶ディスプレーのようだが、デュアルコアCPUを搭載する歴としたパソコン
Napaを使って大胆に薄型化されたパソコンを披露するエデン氏。どれも見た目はまるっきり単体の液晶ディスプレーのようだが、デュアルコアCPUを搭載する歴としたパソコン

新しいモバイルノートを実現する“On-The-Go”

次世代のエンターテイメントノート“On-The-Go”のコンセプトと、必要となる技術要素
次世代のエンターテイメントノート“On-The-Go”のコンセプトと、必要となる技術要素

斬新な超薄型パソコンを披露したのに続いて、エデン氏はさらに次世代のモバイルノートのコンセプトについても語った。“On-The-Go”をキャッチフレーズにしたこのモバイルノートは3つのユーセージモデルを前提としており、エンターテイメントコンテンツをダウンロードして楽しむ“Download&Go”、他のパソコンに蓄積されたコンテンツと同期して楽しむ“Synch&Go”、外出先から自宅のパソコンに接続してコンテンツを楽しむ“Outside In”といった使い方を追求している。“On-The-Go PC”として披露されたデモマシンは、ワイド液晶ディスプレーを搭載した小型薄型の“タブレットPC”といった外観をしており、タッチスクリーンを備え、ビジュアルチャット用にカメラやマイクも内蔵しているという。使用シーンのイメージ映像では、自動車の車内に持ち込んで、車の天井から下がった設置用のパネルにOn-The-Go PCをはめ込んで、車載ディスプレーのように使うシーンが描かれていた。

デモで披露された薄型でキーボードレスのモバイルパソコン“On-The-Go PC”。実際に登場する際には、既存のモバイルノートやタブレットPCとの違いをどうアピールしていくのか興味深い

娯楽よりの話題が続いたが、エデン氏は次世代のノートパソコンによるデジタルオフィスについて、リモート管理技術“iAMT(インテル アクティブマネージメントテクノロジ)”を例にデモを交えて説明を行なった。米国サンタクララにあるインテルの社内ネットワークに東京のノートパソコンから接続するというシチュエーションで、ノートパソコンは社内ネットワークだけでなく、IT管理部門とも専用の接続を行なっている。東京のノートパソコンが電子メールを通じてワームに感染すると、iAMTに対応した管理ソフトがそれを検知して、感染を拡大させないように社内ネットワークから切断する。一方でIT管理部門との接続は維持されており、管理者はそのパソコンがワーム感染したことを把握できる。管理者は対象のノートパソコンに接続して、ワームを削除してシステムを回復させる。これで回復したシステムは再びネットワークに接続可能となる、というデモであった。これらはiAMTや仮想マシン技術といったNapa世代で予定されている新機能が、ビジネスシーンでも有用であることを示すものだ。

またエデン氏はモバイルの時代に重要な最後の要素としてワイヤレス技術を取り上げた。現状ではWi-Fi(IEEE 802.11)やBluetoothが主流で、これにUWB(Ultra Wide Band)、RFIDといった技術が加わろうとしているが、さらに同社が精力的に投資を行なっている広域高速ワイヤレス技術“WiMAX(IEEE 802.16)”も2007年以降には登場する。エデン氏は「これら複数のワイヤレスインフラは、互いに共存するとインテルは考えている」と述べ、エンジニアはユーザーが意識せずに複数のインフラや課金を切り替えて使えるように努力しなくてはならないと、ソフトウェア面での取り組み重視した意見を述べた。

ごく近距離のRF IDやBluetoothから、LANレベルのWi-Fi、都市内を結ぶWiMAX、そして第3世代携帯電話など、近い将来に複数のワイヤレス技術が共存する時代が来るとして、ユーザーが快適にこれらを使えるような努力が必要と述べた
ごく近距離のRFIDやBluetoothから、LANレベルのWi-Fi、都市内を結ぶWiMAX、そして第3世代携帯電話など、近い将来に複数のワイヤレス技術が共存する時代が来るとして、ユーザーが快適にこれらを使えるような努力が必要と述べた

(編集部 小西利明)




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