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“通信をより身近に、エンタテインメントに活用する”――ソニーコンピュータサイエンス研究所“オープンハウス 2005”開催

2005年06月10日 19時00分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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東京・品川のJR山手線・五反田駅と品川駅を結ぶ、通称“ソニー通り”の中ほどにある(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所において10日、プレス関係者およびソニー(株)の社員や招待者を対象として、研究成果を披露する“オープンハウス 2005”が開催された。

ソニーコンピュータサイエンス研究所

同研究所は1988年に、コンピューターに関連した応用可能な基礎研究を人類、社会、ならびにソニーへ貢献するという目的で設立された研究施設。30名弱の研究員が個人の自由裁量に基づいて研究を推進し、必要があれば外部との積極的な交流も図るなど、製品開発(商業化)とは趣の異なる研究に特化した設備となっている。

会場には研究中の理論をパネルで紹介する“基盤研究”と、実際に体験できるデモを中心にした“インタラクションラボラトリー”などが併設された。特に興味深かったのは、ネットワークや携帯端末(ソニーの超小型パソコン『VGN-U50』など)を用いて、簡便な操作でアドホック通信(サーバーを介さずに端末同士の通信)で新たな活用方法を提案する展示だ。



ソニーコンピュータサイエンス研究所-パリに勤める田中 能の“SOCIAL MUSIC”
ソニーコンピュータサイエンス研究所-パリに勤める田中 能の“SOCIAL MUSIC”

ソニーコンピュータサイエンス研究所-パリに勤める工学博士でリサーチャーの田中 能(あたう)氏が研究・開発している“SOCIAL MUSIC”は、光学センサー、GPS(全方位位置測定システム)、および無線LAN機能を内蔵したVGN-U50を3台使って、状況に応じて音楽をリミックスして表現するというもの。音楽はサーバーからVGN-U50にストリーミング配信され、VGN-U50を持ちながら体を動かしていると、ユーザーを示すアイコン(シルエット)もゆらゆらとアニメーションして、“音楽に乗っている”状態が一目で分かる。このアイコンは接続する3つの端末で共有される。また、GPSで2つ以上の端末が近接すると、それに応じた楽器のリズム(ドラムやトランペットなど)が追加されて、「近くに友人がいる」ことが音楽を聴きながらでもわかるという。音楽データはサーバーで管理され、リミックスなどもサーバー上で行なう。そのため、端末は必ずしもVGN-U50ほど強力な必要はない(携帯電話などでも実現可能)とのこと。未来の携帯電話/携帯音楽端末では、単に音楽を“個の世界”で楽しむだけでなく、“空間を友人と共有する”といった楽しみ方ができるようになるかもしれない。

“スポットライトネットワーク技術を用いたアンビエント空間の実現”
下から照らし出された机に置くだけでネットワーク接続が行なわれる“スポットライトネットワーク技術を用いたアンビエント空間の実現”

ネットワークを簡便に利用するという意図では、西田佳史氏と塩野崎 敦氏の“スポットライトネットワーク技術を用いたアンビエント空間の実現”も面白い研究だ。会場には、半透明のすりガラスのテーブルの中央が下から照らし出された“スポットライト”の当たる空間を作り出し、そこにVGN-U50(IEEE 802.11b対応無線LANカード付き)を置くと、再生している音楽がネットワーク経由でコンポのスピーカーを鳴らす、というもの。無線LANなので非接触なのは当然だが、机の上(スポットライトの当たる場所)から持ち上げると自動的に接続が終了し、スピーカーからの音楽も止まる。これは、緞帳の裏に指向性の高い無線LANアンテナを2方向から当てて、ちょうどスポットライトの当たる部分で直交するように調整してあるため。ほかにも位置検出の手法をいくつか検討しているという。これが普及すれば、家に帰って端末を机に置くとそれだけで(クレードルや設定変更などの手間なしに)自動的にネットワークに接続している、便利なホームネットワークが実現されそうだ。

同じマークのメモリースティックを差すだけで、P2Pネットワークを実現するという“tranSticks”
同じマークのメモリースティックを差すだけで、P2Pネットワークを実現するという“tranSticks”

同じくネットワーク接続を簡便化する技術として、メモリースティックをP2P(ピア・トゥ・ピア)ネットワーク接続の鍵に利用する“tranSticks(トランスティック)”は、リテラシーの垣根を取り払う発想と言える。2つの同じマークを記したメモリースティックを、あらかじめネットワークで接続されたパソコン2台に装着すると、自動的にP2Pネットワーク接続が確立し、ファイル共有やプレゼンテーション資料の映像を同時に閲覧する、電子会議システム/TV電話ソフトを起動して顔を見ながら会話する、といったことが行なえる。メモリースティックの著作権保護機能を利用して、内容のコピー制御が行なえるほか、万一片方のトランスティックを紛失してしまっても、もう一方を使用停止にして別の組みのトランスティックを使えば、ユーザー自身が設定変更することなくP2P接続を利用できるなど、セキュリティー面にも配慮しているという。


なお、7月16日から24日の夏休み序盤には、東京・お台場のメディアージュ5F“ソニー・エクスプローラサイエンス”において、同様の研究成果を体験できる一般参加型イベント“ソニーコンピュータサイエンス研究所展”(入場料・大人500円/子ども300円)が開催される。

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