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日本IBM、“イノベーション”をテーマとしたプレスセミナーを開催――同社研究/開発拠点・大和事業所の施設見学も


2005年7月30日

日本アイ・ビー・エム(株)は29日、神奈川県大和市の大和事業所でプレスセミナーを開催し、“イノベーション”をテーマに代表取締役社長執行役員の大歳卓麻氏、取締役専務執行役員 開発製造担当の内永ゆか子氏がプレゼンテーションを行なった。また、28〜29日は同社内のイベント“Innovation Day 2005”が開催されており、セミナー終了後に、プレスを対象にイベントおよび大和事業所各種施設の紹介も行なわれた。

“Asia Pasific Technical Operations(APTO)”の組織概要
IBMの研究/開発体制

日本IBMの大和事業所は、同社の開発製造部門“Asia Pasific Technical Operations(APTO)”の中核となる事業所(このほかの拠点は滋賀県野洲の野洲事業所、神奈川県藤沢市の藤沢事業所)。APTOでは現在、研究/開発/製造/ソリューション営業・開発/テクノロジーサービス/テクノロジー営業を担当し、具体的な製品分野としては、ソフトウェア(ミドルウェア/ツール)/ハードウェア(サーバー/ストレージ/プリンター/ASIC/サブシステム/工業端末/製造機器)/技術支援・サービスに取り組んでいるという。開設は1986年で、今年が20周年にあたる。APTOの人員は7月時点で約2400人。


代表取締役社長執行役員の大歳卓麻氏。“Innovation Day 2005”特製のはっぴ姿で登壇

“企業に求められるイノベーション”と題したプレゼンテーションを行なった大歳氏は冒頭、「イノベーションは単なる“モノ”だけではなく、“事”“空間”“環境”“地球”などへ広がっている」と述べるとともに、同社の考える“イノベーション”の定義について説明。これによると、“イノベーション”とは、技術的な事象ではなく社会的な事象であり、“インベンション(発明)”と“インサイト(洞察)”が交差することで生まれるものだとしている。

国際競争力比較とアメリカにおける企業の特許取得数ランキング。国際競争力は20位台にとどまっている日本だが、特許取得数では多数の日本企業が上位にランクインしている。大歳氏は“インベンション”を“イノベーション”につなげ、企業の発展や社会変革に生かすべきだと強調

同氏は、この“イノベーション”は産業競争力に欠かせない要素のひとつとしているが、2000年以降国際競争力ランキングで20位台にとどまっている日本の現状を、「発明(インベンション)は得意だが、必ずしも収益には結びついていない」と分析している。実際に、アメリカにおける特許取得数ランキングの上位には多数の日本企業が入っており、総数の6割が日本企業だという。そこで同氏は、日本の産業の国際競争力を向上させるには、“インベンション”を生かすための“インサイト”を融合した“イノベーション”が必要だと訴えた。

大歳氏によると、IBMが“イノベーション”に対する取り組みは大きく次の3つになるという。

“インベンション”と“インサイト”の融合
技術動向(“インベンション”の動向)である“Global Technology Outlook”と市場動向(“インサイト”の動向)である“Global Market Trend”による戦略決定(2004年からはこれに加えて、IBMの技術者やコンサルタントおよび全世界のオピニオン・リーダーの協力により作成された“イノベーション”の動向調査“Global Innovation Outlook”も追加)
“種をまいて育成する仕組み”の整備
ダイバーシティー(多様性)とワークスタイルの変革
多様な価値観を持つ人材(女性、外国人、若者)の登用や、企業文化醸成/労働環境の柔軟性向上/ITインフラの整備により多様な働き方を可能にする“オンデマンド ワークスタイル”を構築、“時間”や“空間”といった制約から解放されたワークスタイルを推進

“インベンション”が“イノベーション”に発展した歴史的な例。社会変革に結びつくには成熟と時間が必要だとしている

同氏は、“インベンション”が“イノベーション”に至る過程では、“インベンション”による過剰参入や投資フィーバーなどが一度破綻し、業界基準や法律、金融システムなどの整備を伴って成熟し、やがて“イノベーション”に移り変わるという歴史的な流れを紹介している(産業革命、蒸気機関と鉄道の誕生、など)。IT分野においてもこの流れは同様だといい、コンピューターの誕生と進化(=“インベンション”)は“.comバブルの崩壊”により低迷期に入ってしまったが、グローバルなデジタル・ネットワークやフレームワークの成熟などにより、今後、真の意味での“イノベーション”へとつながり、さらに大きな“社会変革”につながっていくとの考え方を示した。



取締役専務執行役員 開発製造担当の内永ゆか子氏
APTOの活動内容

続いて登壇した内永氏は、APTOおよび大和事業所の概要や取り組みについて説明。内永氏が挙げたAPTOの取り組みの大きな柱は次の3点。

“IT Everywhere”の実現
いわゆる“ユビキタス”環境の整備に向けた取り組み。センサー・ネットワーク、RFID、ネットワークデジタル家電、ICカードなどの製品開発に向けた研究開発やイノベーションサービス、製造業の研究開発など。
センス・アンド・レスポンド・サービスとビジネス・トランスフォーメーション
ソリューションおよびサービス事業。オンデマンド・ビジネス、これを支えるITアーキテクチャーや先進インダストリーソリューションの開発/提供など。
上記の基盤となる研究・開発
“変化に即応できるビジネス”を実現する基盤技術の研究と開発

APTOが重点的に取り組んでいる2分野の概要

APTOでの研究開発/イノベーションサービスの重点分野としては、特にデジタル家電分野と“ディープコンピューティング”(スーパーコンピューター“Blue Gene”を核としたHPC分野)が挙げられているが、いずれの展開においても、今後は一層ソフトウェアの重要性がより高まるとしている。具体的なキャリアーまたは端末メーカーについては言及しなかったものの、内永氏のプレゼンテーションやその後に行なわれた同事業所内にあるユーザーインターフェースなどを含んだデザイン研究/開発部門“ユーザーエクスペリエンス・デザインセンター”では携帯電話端末の例が紹介されていた。


セミナー後に行なわれた施設見学では、同事業所内のイベントスペースに展示されていたAPTOの取り組み/製品の紹介、施設地下に設けられている無線ICタグ検証施設“RFID ソリューション・センター”、デザイン部門“ユーザーエクスペリエンス・デザインセンター”などが公開された。



スーパーコンピューター“Blue Gene/L”のキャビネット(写真左)。残念ながら中身は入っていないとのこと。写真右はキャビネットに収納されるNode Board(右)と、Node Boardに取り付けるCompute Card(左)。Compute Card上には2つのプロセッサーとメモリー(512MB)が搭載され、Node Boardには16基のCompute Cardが接続される。“Blue Gene/L”のキャビネットには32台のNode Boardが収納される。Node Board 1台あたりの処理能力は最大毎秒180GFLOPS、キャビネット1台(Blue Geneの稼動最小単位)の処理能力は最大毎秒5.7TFLOPS。IBMでは、次期スーパーコンピューター“Blue Gene/P”で、毎秒1P(ペタ)FLOPSを目指すという
IBM/オムロン/ジオ・サーチが共同で開発した地中物体可視化システム“Mine Eye”は、地中の地雷を発見するためのシステム。IBMではシステムの小型化、データ取得の高速化/効率化、UI改善などを行ったという。イノベーションによる社会貢献活動の一環
大和事業所地下の“RFID ソリューション・センター”の実験室。室内外の電磁波を遮断する構造になっており、この中では当然携帯電話は利用できない。ここでは、RFIDの読み取り実験が披露された
デザイン部門“ユーザーエクスペリエンス・デザインセンター”
“ユーザーエクスペリエンス・デザインセンター”の役割。UI開発/研究、ブランドデザインなど、カバー領域は広い
センター内には、ユーザーが実際に製品を使っている様子を観察し情報を収集する部屋も用意されている。規模は大きくないが、研究/開発拠点と隣接している点がメリットだという

事業所内の渡り廊下には歴代ThinkPadシリーズの展示が!

(編集部 内田泰仁)


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