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EZナビウォークで味わう、秋の八丁堀“路地+カルチャー”

2005年10月07日 20時22分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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八丁堀の路地を行く
八丁堀の路地を行く(取材:10月3日)

東京・八丁堀の路地裏に、大型路線バスを使った現代アートの美術館が乗り入れられ、その中で有名サウンドプログラマーのライブパフォーマンスが繰り広げられる――。これは、アートディレクターの佐藤直樹氏らによる任意団体“CET(Central East Tokyo)”による都市型イベント“セントラル イースト 東京 2005(CET05)”のひとコマだ。CET05は、神田/馬喰町/浅草橋/日本橋/大手町/八丁堀といった東京東部のエリアに散在する空きビルや空きスペースを利用して、国内外の現代美術作家の作品を展示したり、パフォーマンスやシンポジウムを一般公開したりしている(一部有料)。会期は1日から10日まで。

作家の顔ぶれは、Alexander Gelman(アレクサンダー・ゲルマン)氏、Paul Davis(ポール・ディヴィス)氏、塩崎庄左衛門氏、クリエーター集団の“Enlightenment(エンライトメント)”など100組以上。デザイン/アートのマニアでなくても、例えばEnlightenmentのヒロ杉山氏は、エステの広告で使われた油絵風タッチの木村拓也の作者だと紹介すれば、ピンとくる読者も多いはずだ。有名作家以外にも、慶應義塾大学や東京電機大学の研究室などが出展している。



日本橋インフォメーションセンター 日本橋インフォメーションセンター
エリアごとにCETのインフォメーションセンターが設けられており、パンフレットがもらえる。日本橋のインフォメーションセンターは、“日本橋三井タワー”の真向かい、三井第三別館4階(東京都中央区日本橋室町2-2-1)にある日本橋のインフォメーションセンターではAlexander Gelman氏やEnlightenmentなどの作品を集めた特別企画展を開催中。時間は土日祝日が10~20時。最終日は18時まで。入場料は500円
ディレクターの池田史子氏
ディレクターの池田史子氏

こうしたアート系の都市型イベントは、原宿・青山・恵比寿・代官山・中目黒など、すなわち東京西部で開催されることが多い。しかし、CETのディレクターの1人で、“TOKYO DESIGNERS BLOCK”など都市型アートイベントを立ち上げてきた池田史子氏によれば、東京東部には(1)新鋭アーティストでもやり繰りできる家賃の安さ、(2)江戸時代から続く“職人の町”としての文化的背景――といった東京西部にはない魅力があるという。池田氏は、ニューヨークのSOHOを例に上げ、「空き物件にアーティストが住み着いて、その土地の経済を活性化するモデルを東京東部で作りたい。“あそこ”に行けば“これ”があるというものをいくつ作れるかが勝負」と話した。



EZナビウォークで路地奥の作品に出会う

学生ボランティアも多数参加している
モデルは学生の岑 康貴さん。岑さんは武山研究室に所属しているのでいわば出展者なのだが、学生のボタンティアも多数参加しているという

今年のテーマは、路地裏から生まれた数々の文化をリスペクトし継承・発展するという意味で、“ロジカルトーキョー”“路地の論理(ロジック)は、いつの時代も革新的(ラディカル)”と付けられている。東部での開催は今年で3年目になるが、ボランティアで運営に携わるスタッフの数はのべ400人以上になる。事務所に登録しているスタッフ以外でも、「展示の様子を見に行ったら、近所の蕎麦屋のおばさんが手伝っていた」ということもあるという。

CET05では、KDDI(株)の携帯電話機向けGPS歩行者ナビゲーションサービス“EZナビウォーク”を、公式ナビツールとして採用している。

例えば、公式パンフレットには展示作品ごとにQRコードが印刷されており、見たい作品のQRコードを携帯電話機で撮影すると、専用ウェブサイトのURLが表示される。専用ウェブサイトは、米シックス・アパート社のブログシステム『Movable Type』をベースに開発されており、オフィシャル情報が読めるだけでなく、一般参加者による口コミ情報が読み書きできる。ここでさらにウェブサイトの“ロジナビボタン”を押下するとEZナビウォークが起動し、現在地から作品が展示されていく場所にたどり着くことができる。作品を見たあとは、その近くにある他の作品の場所を調べることができ、EZナビウォークを使って効率よく周回することができる。展示作品の中には、地元の人しか分からないような路地の奥に置かれたものもあるので、こうしたナビゲーションツールがあるのは非常にありがたい。



QRコードを読み取る 道案内はEZナビウォークにお任せ ペイントされたバスとテントの群れを発見
展示作品の1つ、“MOBIUM(モビウム)”のQRコードを読み取る道案内はEZナビウォークにお任せ目的地に到着。路地を入るとペイントされたバスとテントの群れを発見
ペイントは仏人アーティストが施したもの バス内部はサロンになっている 作家の河村陽介氏
ペイントは仏人アーティストが施したものバス内部はサロンになっている作家の河村陽介氏。お気に入りの場所は運転席
これがMOBIUMだ! 今回は東名高速に乗って岐阜からやってきたという。バスの中はサロンになっており、作品を展示したり、イベントを開催したりしている


プロジェクトのソーシャルネット

「プロジェクトのソーシャルネット」というのは池田氏の言葉だが、周囲を巻き込んでアメーバ的に広がっていくのは、CETのイベントの1つの特徴だという。

慶応大学経済学部助教授 武山政直氏
慶応大学経済学部助教授 武山政直氏

EZナビウォークの採用は、CET事務局が考えた企画でも、KDDIが持ち込んだ企画でもなく、慶応大学経済学部助教授 武山政直氏の研究室のプロジェクトと融合したもの。武山氏は、経済地理的観点から、「街の活性化を目指した、生活密着型の情報サービス基盤の構築」(武山氏)を研究しており、昨年は、学生とともにQRコードとウェブログを使った“口コミ・ナビゲーション”の実証実験を八丁堀で行なった。昨年の実証実験とCET05を通じ、「すでにある技術を組み合わせ、少し頑張れば文系の学生でもできる」プラットフォームを作ったのが、武山氏の自慢だ。今後は、こうした情報サービス基盤の定常的な運営や、“おサイフケータイ”などを使った電子マネーの取り込みが課題になるという。



池田氏と武山氏
「CETと口コミ・ナビゲーションプロジェクトは、Win-Winの関係なんです」(池田氏)

なお今回、池田氏と武山氏に取材を行なった“路地カフェ”は、CET05に出展された1つの作品でもある。八丁堀駅から徒歩1分の元印刷工場で築40年、風呂なし/ガスなし/水道なしだった木造2階戸建を、設計事務所のエイトラウンジが約20万円の工事費で改築した。コーヒーや軽食を出すだけでなく、携帯電話機で撮影した写真をウェブサイトに掲載し、1枚1枚をつなぎ合わせて路地のパノラマ写真を作るというプロジェクト“ロジ写真”を行なっている。興味があるけれども参加できないという読者は、このウェブサイトで八丁堀の路地の雰囲気を味わってはいかがだろうか。

路地カフェの入り口 コーヒー1杯300円 コーンを使った机
路地カフェの入り口。CETのポスターが貼られ、QRコードが掲載されていたコーヒーは1杯300円工事現場などで見かけられるコーンも机の脚に


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