このページの本文へ

イー・アクセス会長の千本氏、「日本の携帯電話普及率を必ず100%以上にする」

2005年11月10日 22時43分更新

文● 編集部 伊藤咲子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
イー・アクセスおよびイー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏
イー・アクセスおよびイー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏

イー・アクセス(株)と子会社のイー・モバイル(株)は10日、総務省電波管理審議会の9日の答申を受け、モバイル事業への参入に関する記者会見を開催した。会見に出席したイー・アクセスおよびイー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生(せんもとさちお)氏は会見に先立ち、イー・モバイルの1.7GHz帯の周波数を使用する特定基地局の開設についての認定を、総務大臣の竹中平蔵氏から本日交付されたことを発表した。

総務省の昨日の答申についてはこちらの記事が詳しいが、イー・モバイルが認定される方式(抜粋)は以下のとおり。



申請者
イー・モバイル
運用開始予定期日
2007年3月15日
方式
W-CDMA方式
提供する電気通信役務
音声伝送およびデータ伝送
指定する周波数の範囲
1854.9MHzを超え1859.9MHz以下
2010年度における特定基地局の総数
基地局:1万5210局/陸上移動中継局:2696局
カバー率50%を達成する予定年度
関東:2006年度/その他:2007年度
2011年度末の加入数見込み
505万

イー・モバイルは、2007年3月に東名阪を中心にデータ通信サービスを、2007年度末(2008年3月)までに全国エリアで音声サービスを開始する。目標とする加入件数はサービス開始5年で500万。500万加入をカバーする総設備投資額は3000億円を想定している。

無線局免許取得までの歩み イー・モバイルに対する周波数の割り当て
無線局免許取得までの歩みイー・モバイルに対する周波数の割り当て

株式による資金調達については、親会社であるイー・アクセスから450億円、(株)東京放送(TBS)から100億円(8月発表)がすでに発表されている。会見では千本氏から、さらに米ゴールドマン・サックス・グループ(9月に資金調達について協議中と発表)や、吉本興業(株)を中心とする吉本グループ、そのほか数社から出資を受けることが発表された。出資額は上記の出資企業すべてを合わせて800~900億円に上り、新たな出資先を加えて「年度内に1000億円の資本金を株式により調達し、その後、金融機関から借入金による資本調達を考えている」という(ゴールドマン・サックス・グループ以下の企業の個別の出資額など詳細は現時点で未定)。

なおTBSおよび吉本グループは、動画を中心とする多数のコンテンツを保有しており、イー・モバイルのコンテンツ戦略のパートナーとして今後協議を進めるという。特に会見では吉本興業の関連会社である(株)ベルロックメディアの名前が挙がっていた。

イー・モバイルの事業計画の概要 コンテンツに向けた戦略提携
イー・モバイルの事業計画の概要コンテンツに向けた戦略提携

基地局の建設は年明けの開始予定で、イー・モバイルは日本全国でのネットワークの敷設を「確実に約束する」(千本氏)としているが、単独で全国をカバーするネットワークを築くまでにはやはり時間がかかる。同社はサービス開始から当面の間、既存事業者とのローミングの提携を希望しており、「具体的な交渉は、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモから『免許を取ってから』と言われており、今回の免許取得を機に、進展していくのではないか」(代表取締役社長兼COO 種野春夫氏)と見ている。千本氏は、100MHz程度の帯域幅を所有する(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモを10車線の高速道路、5MHzの帯域幅を割当てられたイー・モバイルを1車線の道路になぞらえ、競争の中でも「ある程度フェアな調整をやってもらってもいいのではないか」と期待した。

携帯電話市場は飽和していると言えない

千本氏
日本電信電話公社出身の千本氏は、第二電電、DDI東京ポケット電話(株)の設立に参加した1人。「新しい技術の波が出てきた時には、今まで想定できなかったようなことがたくさん出てくる」

質疑応答では、飽和しつつある携帯電話市場でどのようにシェアを獲得するのかと、より具体的な戦略を求める質問が挙がった。千本氏はこの“飽和”という認識に対して厳しく反論し、「NTTドコモに汚染された質問」とまで述べた。千本氏はまず、NTTドコモが独占していた携帯電話市場に第二電電(株)ら“新電電”が参入して後に“au”になったという過去の事例、国内の携帯電話普及率は70%程度であるが「100%以上の国が恐らく最低5つ以上ある」ことなどを切り返した。さらに、「これから世界では技術がどんどん進化する。特にブロードバンド関連では、WiMAXを含め、3Gでも“HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)”であるとか、さまざまな技術が出てくる。だから、過去の“電話に基づくモバイル”で言えばそう(飽和)かもしれない。しかし、新しい技術が出てくる時に、過去の延長線上で『飽和している』というのは、30年の、革新的な経営者の考え方からすると明らかに間違い」と述べた。なお、WiMAXの対応は当初の計画には入っていないが、「標準化された段階で本格的に検討したい。ただ準備の勉強はかなりしている」とした。

端末は国内、海外のメーカーと交渉をしているという。端末やサービス、料金などより具体的な戦略については、競争上の理由から詳しく述べられなかったが、「必ず日本の普及率を100%以上にする。料金はもちろん大事だが、料金以外のファクターをいくつか組み合わせた新しいサービスを考えている。2年後に期待していてください」と述べた。千本氏は前述の世界の携帯電話先進国と比べて日本が明らかに遅れている点としては、自由に差し替えて使えるSIMカード、国際ローミング、PDA/スマートフォンタイプの端末などを例として挙げているので、その中にもヒントがあるかもしれない。

なお、イー・アクセスは9日に発表されたNTTグループの中期経営戦略について、98%のシェアを持つNTT東日本/西日本と59%のシェアを持つNTTドコモの連携、マイラインで6割のシェアを持つエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)とエヌ・ティ・ティ レゾナント(株)との統合などについて、独占回帰を思わせ「公正競争上極めて問題がある」(千本氏)と“深刻な懸念”を表明した。





カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン