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バンダイ ロボット研究所が“ドラえもんの作り方”を発表!?――バンダイが考えるエンターテイメントロボットのあり方とは


2005年11月17日
バンダイが2004年に発売した『ドラえもん・ザ・ロボット』。2010年までにドラえもんのような友達ロボットを作るというプロジェクトの第1弾製品
バンダイが2004年に発売した『ドラえもん・ザ・ロボット』。2010年までにドラえもんのような友達ロボットを作るというプロジェクトの第1弾製品
バンダイのエンターテインメントロボット研究について語る、技術開発室マネージャーの芳賀義典氏
バンダイのエンターテインメントロボット研究について語る、技術開発室マネージャーの芳賀義典氏

16日から18日までパシフィコ横浜にて、組み込みシステム技術の総合展示会“Embedded Technology 2005”が行なわれている。カンファレンスプログラムでは、組み込みシステムに関わるさまざまな講演が行なわれているのだが、17日午前には一風変わった基調講演が開かれた。それが(株)バンダイ 技術開発室マネージャーの芳賀義典氏による、“エンターティンメントロボットの新しい視点〜「ドラえもん」の作り方〜”だ。なんとも刺激的で楽しそうなタイトルを掲げた、この講演についてレポートしたい。

芳賀氏はバンダイでエンターテインメントロボットの研究開発を行なう“バンダイロボット研究所”(BRL)の所長でもあり、同社が開発、あるいは製品化したロボットに深く関わっている。同社は“2010年までに本物のドラえもんを作る”という目標を掲げた、“Real Dream Doraemon Project”を進めている。2004年3月に発売された対話型エンターテインメントロボット『ドラえもん・ザ・ロボット』は、その第1弾とされている。

芳賀氏は講演の冒頭で、なぜエンターテインメント企業であるバンダイがロボット研究を行なうのかについて、「21世紀の玩具」と「新しい市場の開拓」という2つの目的を挙げた。最初の目標については、玩具とはその時点での最新技術を、玩具流にアレンジして商品化したものであると芳賀氏は語り、21世紀にはロボットも新しい玩具のカテゴリーになるとの見方を示した。さらに、ロボットは玩具を超えて新しいエンターテインメントの領域を作るのでは、という見方も示し、新しい市場領域への広がりも期待できるとした。

過去に開発されていた、首長竜型4足歩行ロボ
過去に開発されていた、首長竜型4足歩行ロボ
過去に商品化されたバンダイのロボット
過去に商品化されたバンダイのロボット
バンダイによるロボット研究は1995年から始まったという。それ以前の1985年にも、パソコン経由でプログラムする単純なロボット『ロボパル』が製品化されていたが、芳賀氏によれば「びっくりするくらい売れなかった」とのこと

ドラえもんのようなロボットを作る、という課題を実現するための方向性として芳賀氏は、自立性、インタラクティビティー、トレーナビリティーの3点を挙げた。自立性は「いつも動き回って、自分のことは自分である程度する」ものであってほしいということで、積極的に技術開発を行なっているという。またインタラクティビティーは「何かをすると、何かが必ず返ってくる」という、動物的なインタラクティビティーを実現したいとのことだ。最後のトレーナビリティーは最近重要視されてきた項目で、「教える、学ぶことができる能力」と、芳賀氏は定義している。こうした方向性を踏まえて進められているのが、先のReal Dream Doraemon Projectである。

本物のドラえもんは作れません(芳賀氏)

Real Dream Doraemon Projectは、2010年までに“ドラえもん的な友達ロボットを作る”プロジェクト。ドラえもんそのものは作れません、と芳賀氏
Real Dream Doraemon Projectは、2010年までに“ドラえもん的な友達ロボットを作る”プロジェクト。ドラえもんそのものは作れません、と芳賀氏

芳賀氏はReal Dream Doraemon Projectについて、「2010年までにドラえもんをモチーフとした友達ロボットを開発する」ことが本来の目的であるとして、「残念ながら本物のドラえもんは作れません。(中略)2100年代前半にプロトタイプが作られたものを、2010年に実現しようというのは難しい(笑)」と、会場の笑いを誘った。そして“ドラえもんのようなロボット”の要件として、いくつかを定義した。



キャラクターとしてのドラえもんの実体化
姿や機能、声や動きの再現
身近なパートナー型ロボット
人間との“自然で安定に見える”コミュニケーションを実現
個人や家庭に合わせたカスタマイズ
ドラえもんが野比家で生活するうちに言動が変化した=カスタマイズされたように、カスタマイズやプログラム性が必要
ネットワークエージェント機能
見る、聞く人を驚かせる製品

また同社がこのプロジェクトに取り組む意義の1つとして、芳賀氏は“子供に夢を提供する”を挙げた。バンダイの本社には等身大のドラえもん人形があり、訪れた家族連れが子供と一緒に写真を撮る光景が見られるそうだ。「動かない人形ですら子供たちに喜ばれるのだから、ぜひ夢のあるドラえもんを作って、子供と大人を喜ばせたい」と、芳賀氏は述べた。ちなみにドラえもん・ザ・ロボットは2万円程度の製品でありながら、すでに2万台以上が販売される人気商品だと言う。

ドラえもん・ザ・ロボットは、ユーザーの声を認識するほか、人の動きや周囲の音、触覚センサーなどを備えて、ユーザーとのインタラクションを行なう。おなかに引き出し式の4次元ポケットを備え、声を登録したユーザーだけが開けられる。またどら焼き型の“ドラヤキリモコン”で操作も可能
ドラえもん・ザ・ロボットは、ユーザーの声を認識するほか、人の動きや周囲の音、触覚センサーなどを備えて、ユーザーとのインタラクションを行なう。おなかに引き出し式の4次元ポケットを備え、声を登録したユーザーだけが開けられる。またどら焼き型の“ドラヤキリモコン”で操作も可能

講演は、本題であるエンターテインメントロボットのアーキテクチャーについても触れた。同社では過去の製品として、昆虫を模した反射動作で動くロボット(サブサンプションアーキテクチャー)の研究を元にした、猫風ロボット『BN-1 わがままカプリロ』などを商品化している。これは複数の赤外線センサーと処理能力の低い安価なマイコン複数の組み合わせで動作しているという。マイコンを組み合わせたハードウェア寄りの実装の理由について芳賀氏は、プロセッサーとマルチプロセスのソフトウェアを組み合わせるよりも、安価で処理が高速に行なえる利点があるとしている。

そしてBN-1のアーキテクチャーをさらに発展した実験機ロボットとして、2002年に製造された“BN-7”の実装例を示した。BN-7では対物/対人感知用の赤外線センサーやソナーなどの“低レベルセンサー群”と、走行用モーターなどの“低レベルアクチュエーター群”を、反射行動エンジンと呼ぶサブプロセッサーで処理する。これは“身体感覚”と称する単純だが迅速さを要する制御に応用し、たとえば人が横から近づくと、その方向を向くといった動作を行なう。サブプロセッサーの上には、よりこみ入った認識や学習処理などを司る“シナリオエンジン”や“デカルトエンジン”と称するCPUとソフトウェアで構成される“高度認識・論理行動プロセッサー”部分があり、CCDカメラや音声認識用のマイクなどの“高度センサー群”がつながっている。

2002年制作の実験機“BN-7”のアーキテクチャー図
2002年制作の実験機“BN-7”のアーキテクチャー図

そしてサブプロセッサーの処理で人の方に向いたBN-7は、高速なプロセッサー上でカメラ経由の画像認識や音声認識を処理を行ない、前にいる人物が誰なのかを認識する。人の方に向く動作は迅速に行なう一方で、向いてから対人識別を行ないリアクションを返すのは、ワンテンポ遅くても不自然ではないというわけだ。プロセッサー側とサブプロセッサーは互いに情報をやり取りできるので、プロセッサー側がサブプロセッサー側に命令して、動作を抑制するといったことも可能だという。ちなみにプロセッサーにはCeleron-800MHzを搭載したWindows 2000ベースのパソコンを、サブプロセッサーには秋葉原で有名な電子部品販売店(株)秋月電子通商の『H8/3069』を使用しているとのこと。

BN-7のブロックダイアグラム。当時市販のパソコンやマイコンボードを組み合わせて作ったという
BN-7のブロックダイアグラム。当時市販のパソコンやマイコンボードを組み合わせて作ったという

さらに現在では、BN-7では内蔵されていた高度認識・論理行動プロセッサー部を、無線LANでつながったパソコン側に委ねてしまう“BN-17”というロボットが開発されているという。“リモートブレイン”タイプと称されているように、高度な認識と処理を行なう部分は、ロボット外に持たせてしまい、ロボット内にはサブプロセッサーと、組み込みLinuxが動くARM系CPUを通信プロセッサーとして搭載する。これによりロボット自身の小型化と低価格化が実現できるというわけだ。このBN-17は、30日から東京ビックサイトで開催される“2005国際ロボット展”に出展されるという。

BN-7を発展させ、より商品に近い性格を持たせた“BN-17”のブロックダイアグラム
BN-7を発展させ、より商品に近い性格を持たせた“BN-17”のブロックダイアグラム

バンダイが目指す友達ロボットの姿とは?

現在から今後にかけての研究テーマとしては、人間からの働きかけを認知したり、ロボットが人間に意志を伝える“ヒューマンインタラクション”が主要なテーマになると、芳賀氏は語った。ロボットの対人認識を広げるために具体的に研究中の技術としては、武蔵工業大学の野原勉教授らと共同研究中の“複合センサーによる状況認識技術”や、(株)キーウォーカーと共同研究中の“話し言葉から意味抽出技術”などが挙げられた。一方で近い将来の技術予測として、「自由な空間で手を使う作業は苦手」「人間並みの認識機能は難しい」「人工知能の実現も困難」といった、技術上の限界も指摘。またドラえもんのように、明確なイメージが存在するロボットを商品化するゆえの難しさ(イメージに反する製品は商品性がない)も指摘された。

それらの限界や制約を踏まえたうえでの今後のアイデアがいくつか示された。1つには、BN-17のリモートブレインを発展させ、ネットワークの向こうのサーバーに知能部を持たせて、人間が間に入ってコンテンツの入れ替えを可能とするといったアプローチだ。そしてもう1つのアイデアが、「ドジでダメな私ですけど、教えてくれれば頑張ります、といった商品のカテゴリーを作ってしまう」というものだ。「(完成された人工知能を備える)ドラえもんには似合わないが」と芳賀氏は述べたうえで、失敗もするけれどロボットがユーザーのために何かをしてくれる、それを喜んだり可愛がってもらえる商品カテゴリーは作れないか、それがエンターテインメントロボットのカテゴリーの1つになるのではないか、という考えを披露した。

BN-17を発展させ、ネットワーク側にリモートブレインを置いたアイデア。ソフトウェアをサーバ側でアップデートすることで、人間によってロボットの頭脳をより高度にする
BN-17を発展させ、ネットワーク側にリモートブレインを置いたアイデア。ソフトウェアをサーバ側でアップデートすることで、人間によってロボットの頭脳をより高度にする
“未完成だけど”“学習して”“健気に働く”エンターテインメントロボットとは、ドジだけど頑張りやで健気なメイド・ロボみたいなもの?と示されると、会場は笑いに包まれた
“未完成だけど”“学習して”“健気に働く”エンターテインメントロボットとは、ドジだけど頑張りやで健気なメイド・ロボみたいなもの?と示されると、会場は笑いに包まれた

最後に芳賀氏は“こんな友達ロボットを作りたい”として、「いつも側にいて」「一緒に成長する」そんなロボットを作りたいとして、講演を締めくくった。確かに、案外そういう身近さを持ったロボットこそが、ドラえもん的な友達ロボットに最も求められる要素かもしれない。

(編集部 小西利明)


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