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今年も楽しいアートが続々!!――パナソニックセンター東京と日本科学未来館で“デジタルアートフェスティバル東京2005”が明日開幕

2005年12月08日 22時22分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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(社)日本放送協会(NHK)のBS2/BShiで現在放送されているデジタルアート作品や新たな才能を発掘する番組“デジタル・スタジアム”の“デジスタ・アウォード2005”受賞作品を体験できるアートイベント“デジタルアートフェスティバル東京2005”が、東京・有明のパナソニックセンター東京および日本科学未来館で9日に開幕する。主催はデジタルアートフェスティバル東京2005実行委員会。期間は今月13日までの5日間。入場は無料。明日の開幕に先駆けて8日には、パナソニックセンター東京に展示された内容をプレスおよび招待者向け公開するプレビューイベントが開催された。

会場のパナソニックセンター東京
会場のパナソニックセンター東京

パナソニックセンター東京では、1Fと2Fに実際に触ったり体験できるインタラクティブ・インスタレーション部門の作品が配置され、4Fでは映像部門の作品が上映されている。ここでは、展示作品から特に興味深かったものについて、写真を中心に紹介していこう。



MorphoTower/児玉幸子氏

“MorphoTower” 児玉幸子氏
“MorphoTower”作者の児玉幸子氏

“MorphoTower”(モルフォタワー、動きが連続的に変化するモーフィングとオブジェの塔の組み合わせ)と名づけられたこの作品は、磁力を持つ液体(磁性流体)が螺旋状に溝を掘られた鉄の塔を流れ落ちていく。その塔が回転すると、遠心力と磁力の相互作用で棘状の形状が秩序的に作り出され、やがて流れ落ちていく。刻々と変化する形状、吸い込まれるような黒い液体、彫刻のように質感のある凹凸は、いつまでも見ていたくなる魅力を持つ。

なお、児玉氏のアート作品は今月3日から17日まで、科学技術館で行なわれているイベント“ウニのかくれんぼ ダイナミック・フルイド展”でも見ることができる。



お茶ット道/末田 航氏・石井孝治氏

お茶ット道 チャットでパケット送信中には、火鉢の下のインジケーターが点灯する
“お茶ット道”。モデルは作者の末田 航氏チャットでパケット送信中には、火鉢の下のインジケーターが点灯する

茶道の道具が並ぶ奥の壁には、液晶ディスプレーがはめ込まれた掛け軸。そして手前には携帯電話を手にした末田氏が立つ。この不思議な空間は、チャットと茶道の新たな出会いをアート作品にしたもので、チャットしてパケット通信を続けている間だけ、お湯を沸かす電熱器が通電されるというもの。つまり、お茶をたしなむためにはチャットを続けなければならない。そのうちにお茶という目的を忘れてチャットに没頭したり、お茶をいただいて楽しんでいるとお湯が冷めてしまったり。茶室では向かい合って携帯電話でチャットにいそしむ人々というシュールな空間が展開する。

末田氏は、実はこの作品の前にもパソコンでチャットを続けている間だけ発熱するホットプレートという作品も作ったのだとか。チャットを続けないと肉が焼けないホットプレート。一石二鳥のコミュニケーションと言うべきか、はたまた……。



3D MUSCLE/中山雄太氏・川田正明氏

3D MUSCLE 隣のパソコンですぐに撮影結果を立体視できる
“3D MUSCLE”隣のパソコンですぐに撮影結果を立体視できる

平行法(左右の目でまっすぐ前の、左右に視差がついた異なる写真を見る立体視のひとつ)による立体写真を、2台の携帯電話機で撮影してその場で立体視させてしまうという、名前の通り“力技(ちからわざ)”なアート作品。2台の携帯電話機はプリズムを使って本体下部にあるカメラから前方の映像を記録する。同時に記録するため、携帯電話機で外部キーボードを使うためのコネクターを改造して、拳銃のような台座にシャッター(トリガー部分)やズームなどを操作するボタンを複数取り付け、撮影した画像は携帯電話機の赤外線通信機能をつかってパソコンに転送され、立体視が行なえる。携帯電話機を小型カメラ+通信機とするスッパリ割り切った使い方が、潔くてすがすがしい。



Howlin/柳澤真梨奈氏

柳澤真梨奈氏が演奏した“Howlin”
柳澤真梨奈氏が演奏した“Howlin”

大小の筒の底にスピーカー、上部にはスピーカーに直結したマイクをつないで、ほかの音源を使わず“ハウリング”(スピーカーに直結したマイクが、スピーカーの発する音を拾うことで高周波のノイズを出す状態)だけで音楽を演奏するという、パフォーマンスアート。その名も“Howlin”(ハウリン)。手をふたのように塞いだり開けたりすることで共振/共鳴を導いて、独特のリズムを出しながら、不思議な音響空間を繰り広げていた。



フレクトリック・ドラムス/馬場哲晃氏

“フレクトリック・ドラムス”“フレクトリック・ドラムス”。馬場哲晃氏と、飛び入りで柳澤真梨奈氏も参加して演奏デモをしてくれた。この後、私も混ざって3人で楽しい演奏会(はたから見ると手を叩き合ってるだけ)となった

導線がつながったリングを一人ずつ指にはめて、電極(赤いライン)のあるリングの人が手と手、あるいは体の一部を叩く(触る)ことで、微弱な静電気を通してスイッチが入り、サンプリングされたパーカッションの音を奏でる、こちらもパフォーマンスアート的な作品。机や椅子で“ドラムのふり”をした経験なら誰しもあるだろうが、それを人同士が触れ合うことで現実の音(サンプリングしたドラムやスネアーの音)にしてしまう発想が実に面白い。このアート作品は、音楽系アーティストを多数輩出する九州・福岡のクラブイベントなどで実際に使われたこともあるという。

現在これを改良して、叩き方で音に変化(強弱)を持たせるデバイスの開発にも取り組んでいるとのこと。これは同時に多くの人が参加する(リングをつける人が多い)ほど、妙に楽しくなれる作品だ。



Sound Flakes/師井聡子(もろいさとこ)氏

“Sound Flakes”
大人の金魚すくい? のような“Sound Flakes”

蛇口をひねると、音階とともに光で描いた花や音符、タコといったアイテムが流れ出す。それを柄杓で混ぜたり、すくったりできるという、バーチャル金魚すくいのようなアート作品。これは柄杓にモーションセンサーを備えて、柄杓の動きを検知して、水の流れやアイテムとの位置関係を割り出し、リアルタイムに座標を計算・修正した映像を上部のプロジェクターから映し出すことで表現されている。



TENORI-ON/岩井俊雄氏・ヤマハ(株)

TENORI-ON 演奏している画面はこんな感じ
“TENORI-ON”。演奏はヤマハの西堀氏演奏している画面はこんな感じ。20世紀のLEDサウンドゲームのようだが、リズム(主旋律)と、触ったことで発生するランダムな音が華麗なシンフォニーを奏でる

16×16のLEDスイッチを短く押したり長く押したりすることで、光と音が連続的に変わりながら音楽を奏でるインタラクティブアート。同時に複数のボタンを押してみたり、ボタンの上で指を滑らすように続けて押したりと、演奏者の気分次第で鍵盤(キーボード)にはない創造的な音楽を奏でることができる電子楽器だ。ヤマハのイノベーティブテクノロジー本部サウンドテクノロジー開発センター主任の西堀 佑氏によると、開発期間は6ヵ月程度だが、試作品のためほぼ手作りだったとのこと。当面は、トンがったアーティストなどにライブで使ってもらい、将来的には市販化を目指したいとしている。



モルフォビジョン~ゆがむ家/岩井俊雄氏

“モルフォビジョン~ゆがむ家”
“モルフォビジョン~ゆがむ家”。一見するとCGの立体ホログラフィーのようだが……

一見すると立体ホログラフィーにも見えるが、実際には高速回転(毎秒20回転)する家のオブジェに20Hzの周期で連続的に変化するパターンの光を当てていき、残像効果であたかもゆがんだCGのように見えるという作品。光のパターンは16種類で、光のパターンや回転方向を変えるとゆがみ方も変化する。これを見た後には、自分の目が“どうにも信じられなくなる”、そんな作品だ。

実はこの家のオブジェが高速回転している 回転方向と、当てる光のパターンをタッチセンサーで切り替えられる
実はこの家のオブジェが高速回転し、そこにプリズムミラーで少しずつ角度を変えた光が当たって残像効果でゆがんで見えたというもの回転方向と、当てる光のパターンをタッチセンサーで切り替えられる

このほか、期間中には作家自らのライブパフォーマンスやトークイベント、CG作品の上映会などが予定されている。詳細はこちらの公式サイトを確認いただきたい。

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