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IT関連企業のエコプロダクツ展示に大注目!!――エコプロダクツ2005会場レポート

2005年12月16日 10時33分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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環境問題対策を考える製品や技術を集めた展示会“エコプロダクツ2005”には、502の社・団体が“地球温暖化防止につながるエコプロダクツ”というテーマに即した内容を出展している。ここでは、ASCII24読者になじみのあるIT関連企業のブースでどのような展示が行なわれていたか、順に見ていこう。



入場ゲート直後は“どんぐりで投票”を!!――エコハビット

東5ホールの入場ゲート正面にある“エコハビット”の様子 通路の左右に合計62のエコ提案が掲示されている
東5ホールの入場ゲート正面にある“エコハビット”の様子。看板の下にあるどんぐりで投票する通路の左右に合計62のエコ提案が掲示されている

各社のブースを回る前に、まず正面玄関にあたる東5ホールの入場ゲートの“エコハビット”で、共感できるエコロジー運動に投票することを忘れずに。投票は“どんぐり”で行ない、1人1個までとなっている。どんぐりが多数集まった運動は、2006年1月上旬に公式サイトで“エコプロダクツ宣言”として発表される予定。



“省エネ型”プリンターを展示――キヤノン

“PIXUS”『MP500』と従来機MP770の比較
“PIXUS”『MP500』は昨年の同等モデルMP770に比べて本体容積で約36%、重量で約23%低下したほか、消費電力量では最大約89%の削減を達成したという

キヤノン(株)/キヤノン販売(株)のブースでは、今年のエコプロダクツ大賞を受賞した家庭向け複合機“PIXUS(ピクサス)”『MP500』や、平成16年(2004年)度の省エネ大賞((財)省エネルギーセンターが表彰)を受けたというオフィス向け複合機“imageRUNNER(イメージランナー)”『iR4570』を前面に出して、プリンターの省電力化技術を紹介していた。

“On-Demand Fixing”の定着ローラーを採用する“imageRUNNER”『iR4570』 改良が進む定着ローラー
“On-Demand Fixing”の定着ローラーを採用する“imageRUNNER”『iR4570』改良が進む定着ローラー。右はより高速な印刷に耐えられる“IH Fixing”タイプ

MP500は待機時の消費電力が1.1Wと、従来モデルから大幅に低下したこと、製造や運搬などの省資源化、有害物質の不使用などが表彰を受けた理由としている。iR4570は待機時の消費電力が1Wで、10秒以内に高速復帰できるのが特徴。高速復帰を実現した技術としてトナー定着のための発熱機構(約200度まで上がる)を改良した“On-Demand Fixing”を開発したという。ただし、この機構では印刷速度が毎分45枚程度までしか対応できないため、より高速(最高毎分65枚)な複合機/プリンター向けには“IH Fixing”という機構も用意しているとのこと。



ブース内に池を作って自然を体感――オリンパス

デジタル顕微鏡で微生物を見せて、微生物の役割を示す 工業用内視鏡で蜂の巣や巣箱の中などを覗く
同社のデジタル顕微鏡で微生物を見せて、微生物の役割を示すオリンパスブース。接眼レンズを覗けなくても、液晶ディスプレーで様子が見られるこちらは工業用内視鏡で蜂の巣や巣箱の中などを覗くというもの

“生命の多様性の大事さを子供たちに教えたい”と、特設ステージを作ったオリンパスイメージング(株)。同社のデジタル顕微鏡や工業用内視鏡を並べて、自然界の微生物を来場した子供たちに観察させながら、微生物が落ち葉を分解するなど自然界で果たす役割を教えながら、エコロジーの大切さを説明していた。展示されていた工業用内視鏡は1セットで200万円という代物で、医療用内視鏡との違いは主に強度。油の中での利用や圧力がかかった場合のつぶれにも耐える強度を持つという。



“電卓を組み立てよう!”――カシオ計算機

懸命に電卓を組み立てる子供たち懸命に電卓を組み立てる子供たち

カシオ計算機(株)のブースでは、子供たちを招待して電卓の組み立てを実体験する教室仕立てのスペースを設けていた。これは同社のCSR(社会貢献)活動の一環として、子供たち向けの工場見学のコースに組み入れられているイベントを再現したものだという。この狙いは、親の仕事を見せることで、子供たちに“働くことの大切さを知らせる”ためだという。



繰り返せるリサイクルを提言――富士ゼロックス

“継続的な紙のリサイクル”を目指す“FR紙”の説明 新型シュレッダー『Trust-Eco 1500』も展示
“継続的な紙のリサイクル”を目指す“FR紙”の説明繊維の切断を行なわない“引きちぎり”によって、紙をリサイクルしやすくするという新型シュレッダー『Trust-Eco 1500』も展示

富士ゼロックスプリンティングシステムズ(株)は、同社のビジネス向けコピー機/複合機で使われる紙資源を通じたエコロジーを提案する展示を行なった。具体的には、消費電力をリアルタイムに検出するワットメーターを使って、コピー(印刷)とスキャンでどちらが消費電力が高いかを目の前で実演して見せたり、安定入手できる新聞古紙を原料とした再生紙を繰り返し再生利用(リサイクル)できるように、同社が植林事業などで生産したバージンパルプを半分程度組み合わせて製造する“RF紙”のアピールなどを行なった。これまで重視されてきた100%古紙の再生紙では、繊維の劣化などにより3~4回までしかリサイクルできなかったが、RF紙ではバージンパルプを追加することで無制限のリサイクルが実現できるという。さらに、バージンパルプの入手先を管理徹底することで無許可の森林伐採などを防ぐ効果もあるとのこと。



ベルマークで学校と良好な“リサイクル関係”を――セイコーエプソン

使用済みのインクカートリッジを“ベルマーク”の形に使用済みのインクカートリッジを“ベルマーク”の形に並べて、学校での回収機構をアピールするエプソンブース

セイコーエプソン(株)/エプソン販売(株)のブースでは、同社のTV CMなどでもアピールしている同社のインクジェットプリンターのカートリッジをベルマークに変換するサービスをアピール。これは1年前に開始した事業で、現在は回収システムの参加校が約7000にまで増えている。これは、従来の販売店店頭に設置した回収ボックスだけでは、出荷数に対して回収数が頭打ちの状態になりつつあることから新たな施策として考えられたもの。保護者や学校内で利用されるカートリッジの回収が進めば、学校にとっても設備の拡充というメリットがあり、継続性の高いリサイクルシステムとして期待が持てる。



“きく/みる/遊ぶ”で“楽しみ、ふやす。環境負荷、へらす”――ソニー

楽しみながら環境に優しい“PIMケース”を体感するコーナー“PIMケース”に手書きのイラストや文字を書き込んだり、シールや色紙を貼り付けることで、楽しみながら環境に優しい素材を体感するコーナー

ソニー(株)のブースも、子供たちの来場に向けて、中央に“PIMケース”と呼ばれる紙パルプの光ディスクケースに絵を描くコーナーを設置して、楽しみながら自然に優しい素材の提案を行なっていた。このPIMケースは(株)ソニーミュージックコミュニケーションズが製造するもので、この夏から各社レーベルで採用が始まっている。原料に紙パルプとでんぷん、接着剤としてのセルロースを使い、従来のプラスチック製とは異なり透明ではないが、少量ロットからのオンデマンド印刷や学校の卒業CD制作などで使える、印刷との親和性の高さをメリットとしている。コストは従来のケースよりやや割高になるとのこと。

“S-Master”を採用した名刺サイズのデジタルアンプのコンセプトモデル“S-Master”を採用した名刺サイズのデジタルアンプのコンセプトモデル。ただし、これを製品化して販売する予定はないとのこと

また、同社のデジタルアンプ“S-Master”を、高音質だけでなく低発熱/低消費電力の面でアピールしていたデモも印象に残った。会場には名刺ケースサイズのデジタルアンプ(コンセプトモデル)として展示されていたが、実際にこのサイズのアンプを販売する予定はなく、むしろ従来のアナログアンプが音の増幅より発熱で消費される電力が多かったのに対して、デジタルアンプでは高効率に増幅が行なえ(発熱量は約1/10で消費電力は1/5)、結果として排熱機構を小さくできる=名刺ケース程度に抑えられるという特性を紹介していた。



ペットボトルがそのまま緩衝材に!!――リコー

植物原料プラスチックを使った複合機の部品 給紙カートリッジの上部カバーに植物原料プラスチックの部品が使われている
植物原料プラスチックを使った複合機の部品“imagio”『MPC1500』の場合、この給紙カートリッジの上部カバーに植物原料プラスチックの部品が使われている

企業向けの複合機としては初の“植物原料プラスチック”を使用した“imagio(イマジオ)”『MPC1500』を展示しているリコー(株)。とはいえ、まだ採用が始まったばかりで強度やコスト面の理由から、給紙カートリッジの上部カバーや備品用ポケット、トナー充填用カートリッジなどごく一部に限られる。今後は素材の改良により強度を向上して、より多くの部品を植物原料プラスチックに替えていきたいとしている。また、変わったところでは、工場(東北リコー(株))で日々排出されるペットボトルを洗浄して輸送時の緩衝材にそのまま使うというプロジェクトも始まっている。これは、ふたを閉めたペットボトルの強度に注目して採用されたもので、500mlのペットボトル10本で100kgの荷重に耐えられるとのこと。



会場内にミニプラネタリウムを設置――コニカミノルタ

コニカミノルタブースに設置された“プラネタリウム” コニカミノルタも企業向け複合機の定着ローラーにIH方式を採用
コニカミノルタブースに設置された“プラネタリウム”コニカミノルタも、企業向け複合機の定着ローラーにIH方式を採用し、待機電力の低下と高速復帰を実現する

コニカミノルタフォトイメージング(株)は、“One Planet, the Earth(唯一の星、地球)”をテーマに同社の省資源、温暖化防止のための施策をアピール。特に同社がブース内に設けた10人が同時に見られるというミニプラネタリウムには、来場した子供たちが列を成していた。また、同社のオフィス向け複合機“bizhub 600/750”シリーズでは、待機電力の低下と短い復帰時間を目指してIH方式の定着ローラーを採用している。ビジネス向け複合機では他社も含めてこの動きが大いに加速しそうだ。



2000年時点からの価値と環境影響を指数“ファクター”で明示――日立製作所/東芝/松下電器産業

東6ホールで隣接するように並んだ(株)日立製作所など日立グループ、(株)東芝、松下電器産業(株)など松下グループは、奇しくも同様に2000年当時の家電製品と現在の最新製品を“製品価値”と“環境への影響”という2つの尺度で比較した“ファクター”という指標で明示していた。

日立グループに掲示された、HDDのファクターX 小型HDDユニットの応用事例として、マイクロドライブとともに展示された“HDD内蔵携帯電話機”
日立グループのブース。各製品でファクターXが数値で示されている。HDDは、2000年に比べて容量増加や低消費電力化が大きく進んだ機器なので、家電製品の多くが2~3程度の向上なのに比べて、資源ファクター11.9、温暖化防止ファクター14.5と大きな数値になっている小型HDDユニットの応用事例として、マイクロドライブとともに展示された“HDD内蔵携帯電話機”。1インチタイプで容量8GBのものが組み込まれている

日立製作所は“ファクターX”と名づけ、例えばHDDなら容量増加や転送速度の向上など、ユーザーが望むであろう機能の向上と、消費電力や製造/輸送/廃棄といったライフサイクル全般で発生する二酸化炭素量などの地球温暖化への影響を数値化して製品の進化度合いを示した。HDDのコーナーでは1インチHDDユニットの活用事例として“HDD内蔵携帯電話”というコンセプトモデルも展示されたが、日本での発売などはまったく決まっていないとのこと。韓国ではHDD内蔵携帯電話が他社から発売されており、欧州でも登場が予定されている。携帯オーディオプレーヤーやデジタルカメラの役割をも取り込む日本の携帯電話機だけに、国内でも需要はあるだろうが、価格やバッテリー駆動時間などとの兼ね合いがあり、技術的には搭載できても製品化のめどは立っていない。

環境と性能で2軸のグラフに示した東芝の“ファクターT” 消せるトナー“e-blue”のデモ
環境と性能で2軸のグラフに示した東芝の“ファクターT”消せるトナー“e-blue”のデモにはアイロンが使われていた。実際の消去ユニットはより低い熱を3時間程度かけてトナーの色を消す

東芝は“ファクターT”として、性能向上と環境への影響を2軸のグラフで示し、進化の方向性を説明していた。これによると、例えば冷蔵庫は性能向上は小さいものの、環境への影響度(低下)は大きく向上し、逆に掃除機は環境への影響度があまり進化していないものの性能向上が図られた。IT関連では、ノートパソコンは環境への影響度が待機電力の低下、有害物質のカット、省資源化などで少し向上したのに対して、液晶ディスプレーの画質や記憶容量の増加、演算処理性能の向上などは2倍以上の高い伸びを示すという。また、同社の独自技術として、2003年に登場した“消去できるトナー”『e-blue』もアピールしていた。これは熱によってトナーが変質し、紙の上で色が消えるため、5~10回程度繰り返し同じ紙に印刷できるというもの。ただし、トナーが回収される(取り除かれる)わけではないので、うっすらと元の文字/図形が見えてしまう。セキュリティー面を考えると、社内でのみ流通する文書などに使うことになりそうだ。2003年にプリンターと消去ユニット、2004年には複合機を発売している。なお、名前が示すとおりトナーの発色は青色で、これは通常の黒いトナーと消去可能なトナー(e-blue)を明確に区別するためだという。

2010年の快適な生活環境を提案する“EU HOUSE”を展示していた松下グループのブース
2010年の快適な生活環境を提案する“EU HOUSE(イーユーハウス)”を展示していた松下グループのブース。このEU HOUSEは、会場そばにある“パナソニックセンター東京”(有明)で2006年1月4日から一般来場者にも公開される

松下電器産業は“ECO&UD(エコロジー&ユニバーサルデザイン)”を前面に出し、無理や我慢を強いるエコロジーではなく、継続できて万人が使いやすいエコロジーを提案していた。



非石油系の“植物塗料”を開発、来春より“AQUOS”に採用――シャープ

植物原料の塗料を開発したシャープブース植物原料の塗料を開発したシャープ。最初に使われるのは、来年春発売のAQUOSの台座部分

シャープ(株)のブースは太陽電池と液晶ディスプレーをメインに展示していたが、特に注目を集めたのは新開発の“植物塗料”だ。従来の塗料は石油を原料に使うため、最終的に処分する=燃やす際に二酸化炭素の発生が避けられない。これに対して植物塗料には炭素が含まれないため、二酸化炭素の発生がないのが特徴。ただし、現時点では生産量が少なく、低コスト化や耐久性などの試験を重ねていく必要がある。そのため実用化のプランとしては、来春発売の液晶TV“AQUOS(アクオス)”の新製品で台座部分の塗料として採用し、その後はパネル全体の塗装やノートパソコンなど応用範囲を広げていくとしている。



“ITでエコ”をソリューション提案から機器全体へ拡げる――日本電気

ケナフ繊維強化バイオプラスチック採用の携帯電話機『N701iECO』 ケナフ繊維バイオプラスチック採用のN900iも展示された
12日に発表された、ケナフ繊維強化バイオプラスチック採用の携帯電話機『N701iECO』会場には、先だって“愛・地球博”で関係者向けに配布されたというケナフ繊維バイオプラスチック採用のN900iも展示された

日本電気(株)は、同社のTV CMなどでも“ITでエコ”をアピールし続けているが、会場では植林事業/エコ関連製品、および従来から注力している“エコソリューション”の提案という3本柱での展示を行なっていた。エコ製品の筆頭として挙げられるのが、12日に発表されたケナフ繊維強化バイオプラスチック採用の携帯電話機『N701iECO』だろう。実機を手に取ると、配合されたケナフ繊維の黒い斑点が見える。N701iECOではボタンなど従来のプラスチックを採用しているが、これは視認性が求められる部分(数字キーや操作ボタン)には使いやすさを重視したためで、強度的な問題ではないという。実際、同社は今年開催された“愛・地球博”において『N900i』のケナフ繊維バイオプラスチック採用タイプを限定生産し、関係者の連絡用に使っているが、このときにも強度面での問題はなかったという。会場にもN900iのケナフタイプが展示されたが、こちらは販売される予定はない。

日本電気で開発中の、カーボンナノホーンを触媒とする燃料電池を使ったノートパソコン(参考出展)。現在は10時間駆動だが、2007年の実用化時点では2倍程度の駆動時間と、小型軽量化を目指すという

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