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“デジタルはアナログより不便”を解消できるか?――JEITA、地上デジタル放送のコンテンツ保護に関する提案について説明


2006年1月11日
2005年の年末商戦には、家電メーカー各社からデジタル放送対応レコーダーが発売された。しかし現状のデジタル放送録画は厳しいコピー制御により、利便性には大きく劣っている(写真は日立製作所の『DV-DH1000W』)
2005年の年末商戦には、家電メーカー各社からデジタル放送対応レコーダーが発売された。しかし現状のデジタル放送録画は厳しいコピー制御により、利便性には大きく劣っている(写真は日立製作所の『DV-DH1000W』)

(社)電子情報技術産業協会(JEITA)にてデジタル放送機器などを担当するデジタル家電部会 コンテンツ保護検討委員会は11日、報道関係者を集めて“地上デジタル放送のコンテンツ保護に関するJEITA提案内容”についての説明を行なった。同提案では、現在の地上デジタル放送で運用されている著作権保護のための“コピーワンス”を見直し、“出力保護付き/コピー制限なし”に変更することで、ユーザーの利便性向上を図ることが提言されている。

現在の地上デジタル放送(の無料放送)では、放送される番組には著作権保護のためのコピー制御の仕組みとして、“コピーワンス”(1世代コピー可、Copy One Generation: COG)という制限を課した状態で運用されている。これにより、デジタル放送対応レコーダーやデジタル放送録画が可能なパソコンで地上デジタル放送を録画した場合、録画データは“1世代目のコピー”として扱われる。そして録画したデータを、たとえばSD品質(あるいはそれ以下のMPEG-4など)に落としてDVDやメモリーカードなどに記録しようとする場合(ムーブ)は、1世代目コピーに当たる録画データは削除されてしまう。録画データが削除されるため、既存のアナログ放送では当たり前にできていた、“録画した番組を残したままDVDに保存したり、MPEG-4変換して携帯機器で見る”といった使い方はできない。また録画データのバックアップも制限が付く(他の機器へのムーブとなるので、1世代目コピーは削除されてしまう)。“デジタルのほうがアナログより不便”と言われるゆえんだ。実際現在販売されているデジタル放送対応レコーダー/パソコンでは、録画したデジタル放送番組は編集もできなければ、外部メディアへの書き出しも不可能というものが多い。当編集部が行なったアンケートでも、コピーワンスによる利便性の悪化に対する消費者の否定的な声は多い。

現在のコピーワンスでの運用例。1度でもムーブしてしまうと、レコーダー内の録画データは失われる
現在のコピーワンスでの運用例。1度でもムーブしてしまうと、レコーダー内の録画データは失われる

ユーザーの利便をはなはだしく損なうような技術では、たとえ著作権保護という重要な理由があっても普及はしない。この問題に対する懸念は消費者や家電/パソコン業界から強く訴えられており、2005年7月に総務省情報通信審議会が出した答申でも、“「コピーワンス」等、著作権保護の運用を見直し”が、2011年のアナログ放送停波までのデジタル全面移行実現に必要な施策として挙げられている状況にある。今回の提案は、この問題に対する家電業界側からの解決案として、2005年11月に放送事業者側に提案されたものである。

JEITAデジタル家電部会 コンテンツ保護検討委員会 委員長の田胡修一氏
JEITAデジタル家電部会 コンテンツ保護検討委員会 委員長の田胡修一氏

同提案についての説明を行なったJEITAデジタル家電部会 コンテンツ保護検討委員会 委員長である(株)日立製作所の田胡修一氏は、提案の背景として“デジタル放送の健全な普及の必要性”と“デジタル録画媒体の多様化”といった状況があるとした。そのうえで「アナログ放送でできることが、デジタル放送でできなくなるのは、ユーザーにとって不便を感じさせるのではないか」と述べ、ユーザー利便性にも配慮したコンテンツ保護手段の必要性を訴えた。

同提案ではコピーワンスに代わり、“出力保護付き/コピー制限なし”(Encryption Plus Non-assertion:EPN)を導入することで、現行の運用規定(※1)で可能な範囲でのユーザー利便性の確保を目指している。現在コピーワンスで運用されているサービスをEPNに切り替えることで、規定自体は変更せず、機器側の変更も最小限に抑えた形での対応を模索しているものだ。

※1 (社)電波産業会(ARIB)の“TR-B14 地上デジタルテレビジョン放送運用規定”

JEITAの提案では、地上デジタル放送の無料放送を、コピーワンスからEPNに運用変更することで、ユーザー利便性を確保しようというものである。それ以外のサービス形態やBS/110度CSデジタル放送については含まれない
JEITAの提案では、地上デジタル放送の無料放送を、コピーワンスからEPNに運用変更することで、ユーザー利便性を確保しようというものである。それ以外のサービス形態やBS/110度CSデジタル放送については含まれない

同提案で想定されている運用が導入された場合はこうなる。まずユーザー録画したデジタル放送番組は、暗号化された状態(暗号化EPN)でHDDレコーダー等に保存される。そしてHDDレコーダー内の録画データを残したまま、暗号化された状態で光ディスクメディアやメモリーカード等にコピーし、暗号化に対応したほかの機器(DVDプレーヤーや携帯ビデオプレーヤー等)で再生することができる。暗号化されたデータをインターネットに配信することはできない。またDTCPに対応するIEEE 1394やDTCP-IPに対応するIPネットワーク経由で、ほかの再生機器に伝送して再生することも可能である。さらにアナログ経由での出力/再生も可能となる(CGMSやマクロビジョン等のアナログベースでのコピー制御は可能)。

EPNでの運用例。レコーダー内の録画データはそのままで、暗号化された状態で光ディスクやメモリーカードにデータを書き出せる
EPNでの運用例。レコーダー内の録画データはそのままで、暗号化された状態で光ディスクやメモリーカードにデータを書き出せる

EPNでの運用では、暗号化を維持したままならば、リムーバブルメディアへのコピーは事実上自由になる。そのため録画番組をフォーマット変換して、携帯機器で楽しむといったことも可能になる。暗号化状態でのバックアップも可能であるし、ムーブ失敗で録画データが消失する危険もない。ユーザーにとっては利便性が大幅に向上するだろう。一方で、録画データには手を付けることなくDVDメディアなどに複製ができるため、違法な海賊版ディスクの製造/販売も可能になる。この点について質疑応答で問われた田胡氏は、海賊版の製造販売は現行の著作権法でも違法であり、現行法で対応可能であるとした。また既存のデジタル放送対応レコーダー/パソコンが、EPN案の運用に対応できるか否かは、機器メーカーによるということだった。なんらかの手段でソフトウェアアップデートが可能な機器であれば、EPN案に事後対応可能かもしれない。

消費者側にとっては、現在の非常に不便なデジタル放送録画の欠点が大きく解消される案である。しかし提案を受けた放送事業者側は、当然のことながらEPN案に拒否反応を示しているという報道もある。高画質なデジタルデータの複製をほぼ無制限で生産可能になるわけだから、海賊版メディア流通の懸念がぬぐえないためだ。もっとも放送事業者側も、ユーザー利便性に欠ける現行規定とその運用については、なんらかの修正が必要という認識はあるとのことだ。いずれにせよ、“アナログとまったく同じように複製や配信が可能”な状況が、デジタル放送でも可能になるというのはあり得ないわけで、その点は消費者側も理解し受容する必要がある。そのうえで“デジタルはアナログより不便”などという恥ずかしいレッテルを貼られないためにも、放送事業者と家電業界が消費者にとって便利で楽しめるデジタル放送のあり方を、真剣に考えてほしいものである。

(編集部 小西利明)


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