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【Macworld Expo 2006 Vol.6】Intel Macに迫る! アップル製品担当者インタビュー

2006年01月14日 03時57分更新

文● 構成/林 信行

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interview
アップルブースのデモ会場の様子。インテルCPUでMac OSが動くとあって、多くの人が熱心にデモに見入っていた

Macworld Expoにおけるアップルの新製品について、各担当プロダクトマネージャーによる質疑応答の機会が設けられた。質問に答えてくれたのはポータブル&ワイヤレス製品担当のシニアディレクター、デイブ・ラッセル氏、アプリケーション・マーケティング担当バイスプレジデントのロブ・シェーベン氏、iMac担当プロダクトマネージャーのローラ・メッツ氏の3名だ。なお、このインタビューは日本のプレスによって合同で行われた。

Intel搭載Macの登場

[プレス] 新しいIntel MacではWindowsは動くのですか?
[ラッセル] 我々はWindowsを売ったり、サポートしたりすることには興味がありません。しかし、だからといってユーザーがWindowsをインストールするのを防ごうというつもりもありません。
[プレス] Intel MacにインストールされているMac OS X Tiger v10.4.4は、PowerPC用のものとまったく同じでしょうか? 同じOSでPowerPCマシンも起動できるのでしょうか?
[ラッセル] OSは見た目はまったく同一です。機能も一緒ならば、動作もまったく一緒です。ただし、実際にはPowerPCネイティブ版とIntelネイティブ版の2種類のバイナリファイルが用意されています。
[プレス] つまり、インテル版のMac OS XではIntel Macしか起動できないんですね。
[ラッセル] Intel MacもFireWire外付けハードディスクからの起動はサポートしています。しかし、外付けハードディスクにインストールされているOSは、正しいCPU用のバイナリーでなければなりません。

つまりPowerPC版のOSでは、Intel Macの起動はできません。
[プレス] これまでのPCは「Intel Inside」のシールを張ることによっていくらかのリベートをもらっていました。これは報償をもらえるというだけでなく、質の高いCPUを内蔵しているという製品の宣伝にもなると思うのですが、アップルはこのプログラムを利用しないのですか?
[ラッセル] おっしゃる通りですが、アップルはそういったプログラムに入るつもりはありません。
[プレス] Intel Core Duoのシールを張ると、インテルからキャッシュバックがもらえるはずなんですが。
[ラッセル] そちらのプログラムにも参加しません。
[プレス] 今回、Intel搭載iMacが登場しましたが、従来のiMac G5の販売も続けるのでしょうか?
[メッツ] 在庫が続く限りはそうしていくつもりです。
[プレス] iMacではCPU以外にも変更された仕様はあるのですか?
[メッツ] ええ、まずは外部ビデオ端子がmini VGA形式からmini-DVI形式に変わりました。これにより23インチまでのApple Cinema Displayを接続して、拡張デスクトップモードで使うことができます。


やっぱり注目のMacBook Pro

[プレス] MacBook Proのターゲットはどんなユーザー層でしょう?
[ラッセル] クリエイティブプロの人たちです。
[プレス] Intel CPUに移行した最大の理由はワット当たりのパフォーマンスと聞きました。ということは、新しいMacBook Proでは、より熱発生量が下がり、バッテリー駆動時間も延びているのでしょうか?
[ラッセル] 我々の考え方の方向性はちょっと違っています。ノート型製品でのバッテリー消費量やCPUの発熱量の基準に関しては、社内規定があります。その基準の範囲内でより高いパフォーマンスを発揮するCPUを選ぶ、という方向でCPUを採用しているのです。
[プレス] Intel Core Duoの強みは、デュアルコアによるパフォーマンスの高さを生かせる一方で、消費電力が少ないときは片方のコアの動作を止めてより長いバッテリー寿命を実現できることだと聞いていますが、これはIntel Macでもそうなのでしょうか?
[ラッセル] そうですね。Mac上のIntel Coreはスピードをフルスピードから数分の1のスピードに切り替えることができます。これは2ついっぺんにスピードを切り替えることもあれば、ひとつひとつのコアのスピードをバラバラに切り替えることもできます。さらに片方のコアを完全に停止させて、バッテリー寿命を延命させることもできます。

これら2つのコアはスマートキャッシュメモリーを共有しており、動的にメモリー内容の割り当てをすることができます。
[プレス] 省エネルギー設定を見たのですが、どこにもCPUの使われ方に関する設定がなかったようなんですが。
[ラッセル] これらの設定はほぼ全自動で行われています。Intel Core Duoは、ユーザーの細かな設定とかよりもはるかにきめ細かく、短時間の判断で的確にCPUの使われ方を切り替えています。それだけCPUの省エネルギー設定の自動化が進んだ、ともいえるのかもしれません。
[プレス] MacBook Proのバッテリー寿命はズバリどのくらいでしょう?
[ラッセル] MacBook Proは60W/hのリチウムポリマーバッテリーを採用しています。ただし、MacBook Proの出荷は2月で、今はまだハードもソフトも最後の最適化を行っている段階です。なので、公式のバッテリー駆動時間はまだ申し上げることができません。ただし、十分競争力のある動作時間になると思います。
[プレス] 現在はOSの最適化を進めているところでしょうか?
[ラッセル] ハートとソフトの両側から最適化をしているところです。
[プレス] 競争力があるというのは、これまでのPowerBookと同じ水準でしょうか? それとも他社製品と同じ水準でしょうか?
[ラッセル] 私はこれまでのPowerBookも、あれだけの薄さの中に、光学式ドライブを含むあらゆる機能を詰め込んだノート型として、十分競争力があるバッテリー動作時間を提供していたと思っています。
[プレス] 日本では他社製品と比べた上で、PowerBookのバッテリー寿命が短いという意見の人が大勢います。
[ラッセル] しかし、日本で売られている多くの薄型のノート製品は、消費電力は少ないけれど性能も落ちる廉価版プロセッサーを使って、それだけのバッテリー駆動時間を実現しているわけで、その点、我々は常に最高性能のCPUを搭載して、その中で最大のバッテリー駆動時間を引き出そうとするという点でアプローチが異なっていると思います。
[プレス] MacBook Proと、これまでのPowerBookでは、どちらがより熱いんでしょう?
[ラッセル] MacBook Proと、PowerBook G4、iBook G4はそれぞれすべて表面温度について同じ安全基準をパスしていなければならないので、温度的に違いはないはずです。
[プレス] ヒンジ部分にプラスチックのパーツがありますが、あれにはどういう意味があるのですか?
[ラッセル] アルミはAir Macなどの電波をはじいてしまうため、ヒンジ部分にプラスチックパーツを採用して、その内側にAirMacやBluetoothのアンテナを内蔵することにしました。これによって、これまでフレームの周りにあったプラスチックパーツがなくなり、ヒンジ部分にプラスチックパーツが使われました。
[プレス] MacBook Pro内蔵のiSightとiMac内蔵のiSightは同じものですか?
[メッツ] 同じものです。解像度は640×480ドットです。
isight
液晶フレームの上にあるのがビルトインされたiSightで、使用中は緑のインジケーターが点灯する。PowerBook G4の15インチモデルとは異なり、このiSightカメラを挟むようにしてラッチが2箇所用意されている
[プレス] Expressカードですが、54ミリのカード仕様をサポートしなかった理由は?
[ラッセル] まず、業界でも初めてExpress カード34アーキテクチャーを市場に持ち込めたことを誇りに思っています。

この規格のカードは小さく、バンド幅もレガシー技術であるPCカードの4倍あります。このExpressカードには54ミリと34ミリの2つの仕様がありますが、両者の違いは幅だけで、ピンなどの配置はまったく同じになっています。そのため、Expressカードの開発を考えているメーカーの多くは、より小さな34ミリカードの開発を考えているようです。

34ミリよりも大きなカードを使いたい人は、外付けのアダプターを介して使うことができます。またCFカードを34ミリのExpressカードに挿入するアダプターも他社が参考出品していたと思います。

いずれにせよ業界ではExpressカードへの関心が高まっており、そういう中で、アップルのようなメーカーがこういった規格を真っ先に採用し、大量生産される製品で採用することは非常に大きな意味があることだと思います。
[プレス] MacBook Proの液晶は、Apple Cinema Display並みに明るいということですが?
[ラッセル] その通りです。液晶の内側でライトディフューザーという技術を使っているのですが、ここに、これまでとは違う部品を採用しました。この部品は光のフォーカスの仕方が非常に正確で、液晶を効率的に明るくすることができるのです。
[プレス] トラックパッドがかなり大きいようですが、これはユーザーから要望があったのですか?
[ラッセル] 我々自身の要望と言ったほうがいいかもしれません。大きいほうが画面をスクロールさせるにしても使いやすいので。
[プレス] iMac G5やMacBook Proでは、ユーザーが内蔵ハードディスクを交換してもいいのでしょうか?
[ラッセル] それはこれまで通り規約違反になります。交換はアップルの認可を受けたリセラーや技術者にやってもらう必要があります。ほとんどの場合は購入時の内蔵ハードディスクをそのまま使い続けることになります。Apple StoreのBTOでは大容量のものや高速なものなど、さまざまなオプションを用意しています。
[プレス] 展示されているMacBook Proは、出荷される製品と同じものでしょうか?
[ラッセル] 出荷前のプリプロダクションユニットですが、最終製品とほとんど変わらないはずです。
[プレス] MagSafeですが、どの程度の力がかかるとコードが抜けるかといった仕様は決まっているのでしょうか?
[ラッセル] 素晴らしい質問ですが、あいにく、今、答えを持ち合わせていません。後日、追って連絡します。

ただ、MagSafeはスクローリングトラックパッドなどの他のアップル技術同様、1度知ってしまうと、「なんで今まで誰もこれをやらなかったんだ」と言いたくなる技術のひとつです。非常にシンプルで、「これこそが本来ものごとがあるべき姿だ」と思わせる技術です。

くっついている間は非常にしっかりとくっついていますが、ある程度以上の力がかかると、完全に取れてしまいます。この加減の部分も非常に細かくチューニングしてあります。
[プレス] Front Rowのリモコンは、MagSafeのマグネット部分にくっついたりしないのでしょうか?
[ラッセル] それはくっつきません(笑)。
magsafe
マグネットでコネクターを固定するという発想は、電気ポットなどでは当たり前なのに、確かにこれまでなかった
[プレス] MacBook ProはDVD+Rのデュアルレイヤーをサポートしていないのですか?
[ラッセル] その通りです。MacBook Proのデザインゴールは、最も速く、最も薄いノートパソコンを実現することでした。これまでつくった全ノート型製品と比べても4~5倍と圧倒的に速く、薄い製品です。これだけ薄いノート型をつくるためには、光学式ドライブのメーカーにも9.5ミリ厚の部品を要求する必要がありました。多くの光学式ドライブは12.7ミリ厚以上のフォームファクターを使っています。ただ、残念ながら現状で9.5ミリ厚のドライブでDVD+Rデュアルレイヤーをサポートするドライブがありませんでした。今後、そういうドライブができてきたらそれに切り替えていくこともあると思います。

しかし、この判断によって、我々は製品の本来の目標をきちんと達成できましたし、これにより顧客にも高い満足度を与える製品をつくることができたと思います。


ユニバーサルバイナリ化が進むソフトウェア

[プレス] iLifeやiWorkのパッケージングが小さな箱に変わりましたね。
[シェーベン] かわいいでしょう。我々は小さく、かわいくて、買い物をしている顧客が簡単にショッピングバッグに放り込めるパッケージを作りたいと思っていました。また、新しいデザインでiLifeと.Macの密接な関係も体現しようと試みました。
[プレス] iWebは素晴らしい製品だと思いますが、.MacのiDisk容量による制限がかかっているのが残念です。
[シェーベン] .Macでは新たに標準で1GBのディスクスペースの提供を始めました。これはオプションの追加料金で2GBまで増やすことができますが、我々は今回、これをさらに4GBまで拡張できることを発表しました。月あたりのデータ転送量も250GBまで拡大されています。
[プレス] とはいえ、flickrなどのサービスは、ひと月あたりにアップロードできる容量を1GBに絞ってはいるものの、実質容量制限なしでデータをアップロードできるようにしていますが。
[シェーベン] 業界では、こういったGBマーケティングとも言えるものが横行しています。そうしたサービスの多くは広告を掲載することで、GBの容量をまかなっています。ただ、我々が提供したいのは、家族や友達と思い出を共有するための広告フリーのWebページ環境なのです。
[プレス] iWebは基本的にはHTMLを生成してiDiskにアップロードしているだけ、つまり静的なWebページしかつくれず、ブログとはいってもコメントやトラックバックの機能も使えません。.Macのサーバー側で、これらに対応する機能を使えるようにする予定はないのですか?
[シェーベン] iWebではRSSを提供したり、AJAXを使ったダイナミックなスライドショー機能などを提供していますが、まだ今後、他にもできることはいっぱいあると思います。そのへんは、ユーザーの反響などにも耳を傾けながら検討していきたいと思います。
[プレス] iWebでもうひとつ不安なのが、日本からの.Macの利用が非常に遅い、ということです。実際、flickr.comなども含め、日本から米国のサービスを利用すると、ページを開いたりファイルを転送するのにかなり時間がかかってしまいます。ところが、米国にきてflickr.comを使ってみると、あっという間にファイルのアップロードができてしまいました。

同様に.Macも米国では快適に使えますが、日本からはおよそ快適に使えているとは言いがたい状況にあります。もしかしたら、担当者の方が米国にいるため、こうした問題に気付いていないのではないかと心配なのですが、実際に日本のユーザーからの声は届いているのでしょうか? また、何か対策は準備しているのでしょうか?
[シェーベン] 地球のどこからアクセスしているかによってアクセススピードは大きく変わってきます。我々はどこからのアクセスにどれくらい時間がかかっているかといったことを考慮して、システムの分散化などを再検討しなければならないのかもしれません。

ただし、この再検討の際には.Macユーザーの数なども考慮の対象にいれることになると思います。現状では日本には満足して使っている.Macユーザーが大勢いると思います。

iLife '06は.Macの価値を非常に高めてくれるソフトです。ちょうどiTunes Music StoreがiPodで音楽を聴くことをさらに楽しくしてくれたように、iLifeのPhotocasting機能やiWebは.Macを使うことをさらに楽しくしてくれることでしょう。
[プレス] PowerPCのVelocity Engineを使うアプリケーションはRosettaで動かしたとき、動作が非常に遅くなるのでしょうか?
[ラッセル] 何よりもまず言っておきたいのが、そうしたソフトでもちゃんと動くということです(笑)。
[シェーベン] ほとんどのアプリケーションはそのまま問題なく動きます。

ただし、ユーザーのレベルによっては、これが満足のいかないレベルということもあるでしょう。例えばWordやPhotoshopの動作は、私にとっては十分受け入れられるものでしたが、プロのクリエイターには使い物にならないスピードかもしれません。

実際にRosettaを使っても現行のIntel Macでは動かないアプリケーションもあります。例えばFinal Cut Proなどの弊社のプロ用アプリケーションもこれに入ります。これらのソフトは非常にハードウェアに近い部分で、CPUにあわせたタイミング同期などの細かなプログラミングを行っているため、Rosettaではどうしても動かなかったのです。
[プレス] Intel Macで動かないアプリケーションは他にもあるのでしょうか?
[シェーベン] それについては今後、もっと時間が経つにつれて徐々に明らかになってくると思います。アップルの製品に関しては、すでにiLifeとiWorkはユニバーサルバイナリになっており、プロアプリケーションも3月に対応します。これらプロ用ソフトは非常にわずかな料金でインテル用にクロスグレードできるようにします。

サードパーティ製品においては、次のバージョンでユニバーサルバイナリ化するのか、その際、低価格のクロスグレードを提供するのかは開発社次第なので、個別に調べてもらう必要があります。
[プレス] どのアプリケーションがRosetta経由で動いていて、どれがネイティブ動作しているのか確認する方法はありますか?
[メッツ] Finderの「情報をみる」を使えば、アプリケーションにどちらのCPU用のバイナリコードが入っているかを確認することができます。
[シェーベン] ただ、Mac OS Xの美しいところは、実際に調べてみないとどちらの環境で動いているのかがわからないことです。モード切り替えのようなものが一切なく、PowerPC用のアプリケーションでもまったく違和感なく起動します。
getinfo
アプリケーション本体で「情報を見る」を実行すると、種別(図ではKind)のところでPowerPC用なのかユニバーサルバイナリなのかを見分けられる
[プレス] 10年前、PowerPCが登場したとき、アップルはPowerPCネイティブソフトのパッケージに「Power Application」というシールを張るキャンペーンを展開していましたが、今回のUniversal Binary以降でも同様のシールを張るのでしょうか。
[シェーベン] ええ、その予定です。ここにある箱は最終製品になる前段階のものなので張られていませんが、実際の製品には、Universal Binaryのロゴマークが張られます。ロゴマークはスティーブ・ジョブズの基調講演に出てきた陰陽のマークに似ていますが、色が青色になっています。

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