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【IDF Spring 2006 Vol.2】ブロードバンド無線インターネットとUMPCで実現するモバイルパソコンの新次元――モビリティー事業部ショーン・マローニ氏基調講演


2006年3月11日

小型プラットフォームでモバイルパソコンの限界を打ち破る

会場となったサンフランシスコ市内にあるMoscone Convention Center West。一新された“Intel, Leap ahead”のロゴが目を引く
会場となったサンフランシスコ市内にあるMoscone Convention Center West。一新された“Intel, Leap ahead”のロゴが目を引く
米インテル上級バイスプレジデント兼モビリティー事業部ゼネラルマネージャのショーン・マローニ氏
米インテル上級バイスプレジデント兼モビリティー事業部ゼネラルマネージャのショーン・マローニ氏

近年のインテルにおいて、サーバー向けプロセッサーのXeonとノート向けプロセッサーのPentium Mの2つは、利益の源泉である大きなヒット商品となった。特にPentium Mのアーキテクチャーは“Core Solo”“Core Duo”と名前を変え、2006年後半にはノートパソコンだけでなくデスクトップパソコンのCPUとしても活用され、さらなる飛躍が見込まれている。またノート向けプロセッサーだけでなく、“Centrino”という形でチップセットや無線モジュールも含めたプラットフォーム環境を提案する同社にとって、無線通信技術も大きな意味を持っている。

同社のコアビジネスの1つであるモビリティー事業部を率いているのが、上級バイスプレジデント兼モビリティー事業部ゼネラルマネージャのショーン・マローニ(Sean Maloney)氏である。インテルが主催する開発者向け会議“Intel Developer Forum Spring 2006”(IDF)の初日である7日(現地時間)に行なわれたマローニ氏の基調講演のテーマは、“さらに持ち運びと外出先での利用に適したプラットフォーム像と、どこからでもインターネット接続を可能とする無線技術”についてであった。今回はこの講演についてレポートする。

どこでもインターネットを楽しめるモバイル環境の実現において、ノートパソコンがすべての役割を果たすとは限らない。かさばるうえにバッテリー駆動時間も短く、多彩な機能のすべてが必要とも限らない。簡単なメールの送受信や音楽ファイル再生程度なら携帯電話でも十分だろう。欧米では現在“BlackBerry”と呼ばれる携帯端末が大ブームとなっているが、これは携帯電話に小型キーボードとプッシュ式のメール送受信機能を搭載したPDAだ。携帯電話の通じる圏内ならどこでもメールの送受信が可能なため、ビジネスマンを中心に非常に重宝されている。また携帯電話で音楽を聴くというニーズも、大きくなりつつある。インテルは2005年に、“Monahans(モナハンス)”という開発コード名の携帯電話向けモジュールを発表し、メディアデータのデコードに必要な電力効率の良さをアピールしていた。ノートパソコンよりもさらに小さいフォームファクターの重要性を示すものだ。

ここでマローニ氏が紹介したのが、新しいフォームファクター“Ultra Mobile PC(UMPC)”だ。UMPCはA4ノートの半分以下のサイズながら、Windows XPが完全に動作する。つまり、機能的にはパソコンそのままだ。ちなみに講演内では詳細が語られなかったが、UMPCは同時期に米Microsoft社が発表した“Origami”そのものである。

新しいフォームファクターとして紹介された“Ultra Mobile PC”。Windows XPが動作する正真正銘の小型パソコンだ
新しいフォームファクターとして紹介された“Ultra Mobile PC”。Windows XPが動作する正真正銘の小型パソコンだ
UMPCの試作端末の1つを手にとるマローニ氏。おおよそのサイズがイメージできる
UMPCの試作端末の1つを手にとるマローニ氏。おおよそのサイズがイメージできる

インテルが基調講演で発表したUMPCは、その少し前から「Microsoftが3月9日に発表を予定しているOrigamiの正体ではないか」と話題になっていた。そしてMicrosoftは同時期に開催された“CeBIT”にてOrigamiを正式に発表し、専用サイト上でUMPCという名称で製品を紹介している。CeBIT会場では台湾ASUSTeK Computer社や韓国サムスン電子社など、複数のメーカーがUMPCの実物を展示している。Microsoft等の発表によれば、2006年第2四半期にも世界に向けて出荷される予定という。

デモで使用された小型無線デバイスとUMPC。隣のキーボードと比較してみると、その大きさがわかるだろう
デモで使用された小型無線デバイスとUMPC。隣のキーボードと比較してみると、その大きさがわかるだろう

明らかになったMeromの正体

これまでロードマップ上には登場していたものの、その中身や機能についての詳細が不明だったノート向けCPU“Merom(メロン)”が、今回のIDFでいよいよその秘密のベールが解かれることとなった。まずMeromで目につくのは、消費電力の管理機能の強化や命令処理の効率化が徹底して行なわれている点である。

Pentium MからCore Duoへと続くノートパソコン向けCPUの電力効率の推移のグラフ。2006年後半登場予定のMeromでは、Banias世代のPentium Mよりも3倍近い効率を実現していることになる
Pentium MからCore Duoへと続くノートパソコン向けCPUの電力効率の推移のグラフ。2006年後半登場予定のMeromでは、Banias世代のPentium Mよりも3倍近い効率を実現していることになる

従来インテルのデュアルコアCPUは、1次キャッシュ、2次キャッシュともに各コアごとに割り当てられ、完全に独立していた。それがCore Duoプロセッサー(Yonah)では2つのCPUコアが1つの2次キャッシュを利用する共有キャッシュを採用。そしてMerom世代では“Advanced Smart Cache”と呼ばれるより高度なキャッシュ処理により、共有2次キャッシュのパフォーマンスを向上させる。キャッシュの共有化により、メインメモリーから2次キャッシュへの読み込み作業が減少し、レスポンスが向上する。さらに2MB×2で計4MBのキャッシュメモリーが使えるため、この点でも性能向上が期待できる。

Merom世代で投入される技術の1つ“Advanced Smart Cache”。Pentium Dでは2つの2次キャッシュが独立して動作しているが、Core Duoでは2次キャッシュを2つのコアで共用することで、より効率的なメモリーアクセスが可能になっている
Merom世代で投入される技術の1つ“Advanced Smart Cache”。Pentium Dでは2つの2次キャッシュが独立して動作しているが、Core Duoでは2次キャッシュを2つのコアで共用することで、より効率的なメモリーアクセスが可能になっている
Meromでは2MBの共有可能な2次キャッシュを2個搭載することで、2つのコアが計4MBのキャッシュ領域を使える
Meromでは2MBの共有可能な2次キャッシュを2個搭載することで、2つのコアが計4MBのキャッシュ領域を使える

“Advanced Power Management”と呼ばれる機能では、プロセッサー上で動作するモジュールの必要な部分にのみ電力を供給することが可能になる。これにより無駄な電力消費を低減でき、ノートパソコンではバッテリー寿命が伸びるし、発熱量も減少してパソコンの小型化や高密度化が可能になる。特に後者のメリットは、高密度サーバーなどに応用すると大きなメリットを享受できるだろう。“Advanced Thermal Manager”と呼ばれる温度調整機構もプロセッサーの各所に組み込まれており、こうした細かい電力制御を助けることにもつながっている。

電力制御技術の1つ“Dynamic Power Coordination”の説明図。2つあるコアの状態を独立して操作することが可能になる。これはバッテリー動作時などのローパワー状態で有効となる
電力制御技術の1つ“Dynamic Power Coordination”の説明図。2つあるコアの状態を独立して操作することが可能になる。これはバッテリー動作時などのローパワー状態で有効となる

パフォーマンス面では、1サイクルで4つの命令を同時実行可能な“Wide Dynamic Execution”という機能が採用されている。これに加えて“Ops Fusion”と呼ばれるマイクロコードの実行を最適化する技術を組み合わせることで、さらなる高速化が期待できる。マイクロコードとは、CPUがx86命令を実行する際に、プロセッサー内部で変換される細分化された命令コード群のことだ。つまりx86プロセッサーの1命令は、プロセッサー上で実行される際に複数のマイクロコードに分解され、プロセッサーはマイクロコード群を実行していることになる。初代Pentium Mで採用された“Micro-Fusion”は、複数のマイクロコードを1つに組み合わせて実行することで、高速化を可能にした。一方新しい“Macro-Fusion”では、複数のx86命令を1つのマイクロコードに統合して、さらに効率的に実行できるようになっている。方法は異なるが、両者とも最終的なマイクロコードを減らして処理の効率化を図る点には変わりない。

Ops Fusionと称するマイクロコードの効率化技術では、変換後に複数のマイクロコードを1つに組み合わせて実行する“Micro-Fusion”と、それをさらに大きな単位でまとめ上げる“Macro-Fusion”という2つの動作形態がある。これにより、単にマイクロコードを変換〜実行するよりも効率化された動作が可能となる
Ops Fusionと称するマイクロコードの効率化技術では、変換後に複数のマイクロコードを1つに組み合わせて実行する“Micro-Fusion”と、それをさらに大きな単位でまとめ上げる“Macro-Fusion”という2つの動作形態がある。これにより、単にマイクロコードを変換〜実行するよりも効率化された動作が可能となる

こうした機能の組み合わせで、MeromはYonahベースのCore Duoよりも、さらなる高速動作や電力効率の向上を実現していることになる。Meromの技術はデスクトップ向けやサーバー向けCPUにも順次取り込まれることになり、2007年時点で登場するプロセッサーはすべて、このMeromで採用されている技術の数々を内部に取り込むことになる。真の意味でデュアルコアCPUの実力を発揮するのは、このMeromの世代からだといえるだろう。


新プラットフォーム“Santa Rosa”登場

Napaに続く2007年前半登場のプラットフォーム“Santa Rosa”が公開された
Napaに続く2007年前半登場のプラットフォーム“Santa Rosa”が公開された

YonahベースのCore Duoを搭載したノートパソコン向けプラットフォーム“Napa”は、2006年後半のMerom登場を期に“Napa Refresh”というプラットフォームに変更される。だがチップセットや無線LANモジュールなど、CPU以外のコンポーネントはすべてNapaと変わらない。これが大きく変わるのは、2007年前半に登場予定の“Santa Rosa(サンタロサ)”プラットフォームだ。Santa RosaではMeromベースのCPUに加え、新たにチップセットが“Crestline(クレストライン)”と“ICH8-M”、無線LANチップに“Kedron(ケドロン)”を採用する。Crestlineでは第4世代のグラフィック機能が統合され、インターフェースの拡充など各種の機能強化が図られているのが特徴だ。

Santa Rosaの主な特徴。MeromベースのCPUが採用されるほか、100〜250Mbpsの無線LANを実現するIEEE 802.11nのサポートと、マシンのさらなる高速起動(デモでは数秒ほどでWindows XP起動していた)が挙げられる
Santa Rosaの主な特徴。MeromベースのCPUが採用されるほか、100〜250Mbpsの無線LANを実現するIEEE 802.11nのサポートと、マシンのさらなる高速起動(デモでは数秒ほどでWindows XP起動していた)が挙げられる
Santa Rosaの主要コンポーネント。チップセットCrestline+ICH8-Mは第4世代の統合型グラフィックス機能を搭載し、セキュリティー機能搭載やインターフェース増加などの強化が行なわれる
Santa Rosaの主要コンポーネント。チップセットCrestline+ICH8-Mは第4世代の統合型グラフィックス機能を搭載し、セキュリティー機能搭載やインターフェース増加などの強化が行なわれる

新しい無線LANモジュールKedronは、ようやく標準化が完了した次世代無線LAN規格“IEEE 802.11n”を採用する。802.11nは802.11b/gの上位版にあたる規格で、100Mbps以上の高速無線通信が可能となっている。通信速度は将来的に、250〜500Mbpsクラスまで引き上げ可能とされている。802.11nはMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)と呼ばれる技術を採用しているのが特徴で、2つのアンテナを同時制御することで、より広い帯域で安定した通信を行なえるようになっている。インテルは以前より「802.11nの採用は標準化が完了しだい進める」と表明しており、標準化のタイミングをもって実行に移したことになる。

Santa Rosaのもう1つの大きな特徴は、KedronとCrestlineに接続される“Robson(ロブソン)”と呼ばれるモジュールの存在である。東芝やサムスンが主に製造を手がけているNAND型フラッシュメモリーをモジュール化してパソコンに内蔵するもので、チップセットのCrestlineに直結して利用する。そのメリットはパソコンの高速起動だ。壇上で示されたデモでは、数秒程度でWindows XPが起動し、Robsonを搭載していないノートパソコンに比べ、明らかに2〜3倍以上の速度差が感じられた。

Santa Rosaでの超高速起動は、Robsonと呼ばれるNAND型フラッシュメモリーを搭載したモジュールで実現される
Santa Rosaでの超高速起動は、Robsonと呼ばれるNAND型フラッシュメモリーを搭載したモジュールで実現される

ちなみに余談だが、Santa Rosaという名称はどこから来たのだろうか。実はワインカントリーで有名なSanta Rosaのこと。Centrinoプラットフォームにつけられる開発コード名“Sonoma”やNapaは、ともにワインカントリーで有名な場所だ。Sonoma→Napa→Santa Rosaという順序で、地理的には次第に北上を続けている。となると、Santa Rosaの次のプラットフォームには、さらに北にあるワインカントリーが名称に使われることになるのかもしれない。

講演ではそのほかにも、“2006 Concept Notebook”と呼ばれるコンセプトマシンが発表された。専用ドックに差せばデスクトップパソコンになり、外出時はノートパソコンとして利用できる。さらにノートパソコン時にはディスプレーとキーボード部分の配置を自在に変更することが可能で、タブレットPC的な使い方ができるほか、ディスプレー部分をキーボードより前面にスライドさせて、シネマディスプレー的な使い方をすることも可能なものだ。

“2006 Concept Notebook”と呼ばれるコンセプトマシンは、コンバーチブル型タブレットPCを彷彿とさせる、ディスプレーとキーボードを分離して自在に配置できる点が特徴となっている
“2006 Concept Notebook”と呼ばれるコンセプトマシンは、コンバーチブル型タブレットPCを彷彿とさせる、ディスプレーとキーボードを分離して自在に配置できる点が特徴となっている
ディズプレイの向きを回転させることで、立てかけ型TVのような形でキーボードを背面にまわすことも可能。狭い場所でも操作できるということで、マローニ氏は“エコノミークラスモード”と表現していた。右手後ろにあるのがドック
ディズプレイの向きを回転させることで、立てかけ型TVのような形でキーボードを背面にまわすことも可能。狭い場所でも操作できるということで、マローニ氏は“エコノミークラスモード”と表現していた。右手後ろにあるのがドック
2006 Concept Notebookを“フライトモード”と呼ばれる状態に変形させたところ。キーボードを使用せずにタッチスクリーンで操作できるため、狭い場所での作業に向いている
2006 Concept Notebookを“フライトモード”と呼ばれる状態に変形させたところ。キーボードを使用せずにタッチスクリーンで操作できるため、狭い場所での作業に向いている

モバイルWiMAXの時代へ

“IEEE 802.16-2004”と呼ばれる、屋内〜屋外の固定アンテナで通信する形式の第1世代のWiMAX規格の製品。各メーカーが家庭やオフィス向けの各種アンテナを提供している
“IEEE 802.16-2004”と呼ばれる、屋内〜屋外の固定アンテナで通信する形式の第1世代のWiMAX規格の製品。各メーカーが家庭やオフィス向けの各種アンテナを提供している

欧米や韓国など一部の国では、数ヵ月以内に商用サービスの開始がアナウンスされている広域無線LAN技術“WiMAX”が、モバイル用途に活用できる日が到来しつつあるようだ。“IEEE 802.16-2004”と呼ばれる現在の第1〜2世代WiMAXでは、屋内または屋外に設置された固定アンテナと基地局を結んで無線データ通信を行なうことを目的としていた。この形態は家庭やオフィスのブロードバンド接続環境には利用できるものの、出先でノートパソコンから接続するというモバイル用途には向かない。

講演にて紹介されたのは、外出先からノートパソコン経由でWiMAX通信が可能になるパソコンカードモジュールだ。2006年内に登場予定のこのカードは、モバイルでの通信をサポートする“IEEE 802.16e”に対応している。インテルではこのモバイル環境に対応した第3世代のWiMAXが、2006年にも登場予定と以前から述べていたが、いよいよ現実となるようだ。

ステージ上に突然現われたバイク。その正体はWiMAXアンテナを内蔵し、どこからでもインターネットに接続可能なモバイル端末バイクだ
ステージ上に突然現われたバイク。その正体はWiMAXアンテナを内蔵し、どこからでもインターネットに接続可能なモバイル端末バイクだ
運転席正面のディスプレーには地図が表示され、目的地までのルートをインターネットで検索することも可能
運転席正面のディスプレーには地図が表示され、目的地までのルートをインターネットで検索することも可能

WiMAXサービスの実現には国ごとに異なる法規制の問題や、通信キャリア側の対応を待たなければならない。今回パソコンカード向けのモジュールの提供開始がアナウンスされたことで、今後数年で製品の低価格化やサードパーティの参入が期待されるところだが、日本でのサービスインに関してはまだまだ不透明だ。3G携帯電話、PHSに続く第3のモバイル通信手段として、今後の関連ベンダーの活躍に期待したいところだ。

WiMAXカードの試作品。はみ出すアンテナ部が大きいのは試作品ゆえか。2.3〜2.5GHz帯を使うノートパソコン向けのWiMAX通信カードは、2006年後半にも提供が開始されるという
WiMAXカードの試作品。はみ出すアンテナ部が大きいのは試作品ゆえか。2.3〜2.5GHz帯を使うノートパソコン向けのWiMAX通信カードは、2006年後半にも提供が開始されるという
さらにインテルでは、無線LAN+WiMAXの機能を1チップで実現する無線モジュールの開発にも成功しているという。これは2月の半導体会議でも紹介された
さらにインテルでは、無線LAN+WiMAXの機能を1チップで実現する無線モジュールの開発にも成功しているという。これは2月の半導体会議でも紹介された

(鈴木淳也)




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