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国立西洋美術館がIT化構想“ウェル.com 美術館”を発表


2006年4月11日

国立西洋美術館は11日、ネットワークを連携させた美術館サービスである“ウェル.com 美術館”構想についての発表会を、東京・上野にある同美術館で開催した。


“ウェル.com 美術館”の全体イメージ

ウェル.com 美術館は、IDによる収蔵品の管理や、NHK映像アーカイブの視聴、オンデマンド印刷、携帯端末と連携した美術館サービスの提供、3DCGによる“3次元デジタルアーカイブ”などを一体化し、敷居が高いと言われる美術館をもっと気軽に利用してもらうためのサービスを提供するプロジェクト。ちなみにウェル.comの名称の由来は“ウェルカム”であり、もっと美術館に気軽に足を運んでほしい、という願いが込められている。

収蔵品管理システムの画面
画像サムネイルで表示することも可能
館内の端末などで画像(写真)のプリントアウトもできる

まず、収蔵物の管理は電子タグを作品に貼り付け、このコードと作品の概要や写真画像、現在の場所などをサーバーに登録する。このサーバーシステムは日本写真印刷(株)と共同で開発した“コレクション・マネジメント・システム”と呼ばれるもので、収蔵物管理システム兼画像データベースとしても機能する。収蔵品が画像サムネイルとして表示されるとともに、美術館内の情報端末などから印刷が可能。印刷形式も額絵やポスター、解説シートなど、さまざまな印刷パターンから選択できる。これにより来館者が気に入った作品をプリントアウトして持ち帰る、といったサービスも提供可能だという。

Uコードを読み取って作品案内などを表示する“ユビキタス・コミュニケータ”
作品に貼られた電子タグを読み取っている様子
動画データなどは無線LANで取得。写真は館内の無線LANアクセスポイント

管理に使用される電子タグは“Uコード”と呼ばれるもの。Uコードは世界中の500の団体が加盟する“ユビキタスIDセンター(uIDC)”という組織が管理し、“世界で1つしかない番号”であることが保証される。これにより、例えば作品が貸し出されたり、売却された場合も、Uコードさえ分かればその後の行方を追跡できるという。また館内の展示作品にこのUコードを貼り付け、独自の“ユビキタス・コミュニケータ”と呼ばれる携帯端末でその情報を読み取ると、サーバー上の作品データに自動的にアクセスし、音声や動画、文字による解説などが表示される。さらにそのアクセスした情報はサーバー側に記録として保存され、ユーザーが家に帰った後、美術館のサーバーにアクセスし、その日に見た展示物のデータを再度見る、といったことも可能になる。


東京大学教授の坂村 健氏

これらのUコードを活用したシステムは、東京大学教授の坂村 健氏が所長を務める“YRPユビキタス・ネットワーキング研究所”が開発を担当。東京大学の“総合研究博物館”で1996年から10年間、研究を続けた“デジタルミュージアム”構想を発展させたものだという。壇上で坂村氏は「ほんのちょっとしたことがわからないために美術館の敷居が高いと思っている人たちもいる。知識、情報があることで、もっと美術館を楽しめるのではないか」と美術館と本システムとの連携に期待感を示した。

“3次元デジタルアーカイブ”により、倒壊の危機に瀕している文化財も3DCG化することで現在の面影を詳細に保存できる

東京大学教授の池内克史氏

動画コンテンツに関しては、日本放送協会(NHK)と(株)NHKエデュケーショナルが協力し、“NHKアーカイブス”の映像を提供する。また3次元デジタルアーカイブは東京大学教授の池内克史(いけうち かつし)氏の開発した技術を元に、収蔵物の3次元化を進めていくという。今回はこの発表会に合わせ“カレーの市民”と呼ばれる彫像作品を3DCG化。仮想的な修復や人物の配置変更、光源の調整などを実演した。池内氏は「3次元データを保存しておくことで、(美術品が)どんどん劣化しても、昔はどのような形だったかを確認できる」ことや、「寸法など詳細なデータが非接触で計測できる」こと、そして「光源を変更するなど新しい絵を作ることができる」ことなどを長所として挙げた。


国立西洋美術館の館長である青柳正規氏

国立西洋美術館には5000点弱の作品が収蔵されているが、これらすべてを約3年程度かけ、データ化していく予定だという。国立西洋美術館の館長である青柳正規(あおやぎ まさのり)氏は「国立西洋美術館は面積あたりで計算すると、おそらく世界一の来館者数となる。これほどの効率化をしているので、来館者を増やすというより、来てくださった方々が、今まで以上の満足感を得られるようにやっていくことが目的」と、より多くの来館者獲得ではなく、来館者の満足度を上げるためのプロジェクトであるをことを強調した。

なお、国立西洋美術館では今月29日から来月7日までの間、ユビキタス・コミュニケータを使用した一般来館者向けデモンストレーションを行なう予定。

(編集部 橋本優)


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