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5ヵ所のサテライト会場を含めて2500名が聴講――ファインテック・ジャパン&Display 2006基調講演レポート


2006年4月19日

初日の午前中に実施された“第16回 ファインテック・ジャパン”&“第2回 Display 2006”の基調講演には、開幕を告げるテープカットイベントの直後から入場登録のために長蛇の列ができた。というのも、国内のみならず世界をリードするキープレイヤーである、液晶TV“AQUOS(アクオス)シリーズ”のシャープ(株)、プラズマ&液晶TV“VIERA(ビエラ)”シリーズの松下電器産業(株)、そして液晶TV“BRAVIA”で復活ののろしを上げているソニー(株)から代表者が登壇するためで、定員1000名が入れる東京国際展示場(東京ビッグサイト)の会議棟・国際会議場では収まりきらず、5ヵ所のサテライト会場にビデオ中継することで合計2500名の参加者を抱える大規模なものとなった(実際にはさらに国際会議場に追加の椅子が持ち込まれるなどして、スタッフは対応に追われていた)。

シャープの片山幹雄氏
シャープの専務取締役 AV・大型液晶事業統括兼AVシステム事業本部長の片山幹雄氏

登壇者は以下の通り(登場順)。3人のメーカー側代表者のあとに、アナリスト(投資判断分析のプロ)として野村證券(株)から代表者が登場し、国際的なFPD(フラットパネルディスプレー)業界の動きを経営・投資的な観点から分析して論じたのは新たな試みだった。

シャープ
専務取締役 AV・大型液晶事業統括兼AVシステム事業本部長
片山幹雄氏
松下電器産業
役員 パナソニックAVCネットワーク社 上席副社長
森田 研氏
ソニー
代表執行役副社長テレビ事業本部長
井原勝美氏
野村證券
経営役金融経済研究所長
海津政信氏

ただ、講演の内容についてはあまり(技術的に)新鮮な情報はなく、各社が調査・収集した市場概況と将来予測、およびそれに合わせた生産体制の増強を行なっていることなどが報告されるにとどまった。

2007年3月時点のFPD需要
シャープの片山氏が示した資料。2007年3月時点のFPD需要は、個人ユースの小型/中型とリビングユースの大型の3つのピークがあるという
シャープが示した10年後のリビングルームの様子
シャープが示した10年後のリビングルームの様子。壁一面がディスプレーになっている

シャープ、松下電機産業、ソニーの3メーカーに共通するキーワードは、“大画面化”と“フルHD対応”、そして“画質向上(による高付加価値化)”だ。シャープやソニーは、40〜50インチを超える大画面の液晶パネルを量産するための大型ガラス基板(第8世代)を量産するため、シャープは奈良・亀山に第2工場を建設中、ソニーはサムスン電子(株)との合弁会社S-LCD(株)で新規製造ライン(工場)の建設を進め、2007年秋には第8世代パネルの量産を予定しているが、できる限りこれを前倒ししたい、と積極的な姿勢を見せている。

特にシャープは未来予想図として10年後(2015年)には等身大を超える、壁そのものがディスプレーになっている世界を打ち出し、その場合には今のような1ディスプレー=1番組という概念ではなく、ある領域にはニュース、ある領域にはゲームが表示され、全体には環境映像が流れてリラックス効果を得られる部屋になる、といった夢のある話も行なわれた。

森田 研氏
松下電器産業の役員 パナソニックAVCネットワーク社 上席副社長の森田 研氏
松下電器産業が会場にも展示した103インチプラズマTV
松下電器産業が会場にも展示した103インチプラズマTV。すでに引き合いが来ているという

一方、液晶ディスプレーに集中する2社に挟まれる形で講演した松下電器産業の森田氏は、「PDPと液晶ディスプレーの両方を使っている松下としては、ちょっと話しにくい(笑)」と軽口で会場を沸かせてから、同社のPDP/液晶ディスプレー両面に注力する戦略を改めて語った。松下では37インチクラスをボーダーラインとして、これ以下には高精細さが売りの液晶ディスプレー、これより大きなサイズには高速応答や(自発光で黒い部分は照らさないため)黒の発色がいいとされるPDPという具合に使い分けている。特にPDPの大型化には注力しており、世界最大となる103インチタイプを今年下期には販売開始する予定で、早くも「リビングルームにおきたい」という要望や、官公庁/教育市場などでの案内掲示板や従来のマルチスクリーンシステムの置き換えなどに引き合いがあるという。なお、松下も尼崎に第4工場を現在建設中で、これが完成・稼働開始する2007年7月以降はほかの工場と合わせて月産96万台、年間1000万台以上の生産体制が整う、と鼻息を荒くしている。

井原勝美氏
ソニーの代表執行役副社長テレビ事業本部長の井原勝美氏

最後に登場した野村證券の海津氏は、PDP/液晶ディスプレー業界のビジネスモデル(開発・部品生産、組み立て・製造、販売・サービスの3段階の収益性)を自動車業界、パソコン業界と対比させながら、「パソコン業界で言われた“スマイルカーブ”とは異なる」という持論を展開した。スマイルカーブというと笑顔=高収益と発想しがちだが、実際には“チップ・部品”メーカーと“販売・サービス”メーカーに高い収益性が上がるものの、その間の組み立て・製造メーカーは厳しいコスト競争にさらされて利益率が0〜1%程度と低く押さえ込まれる“U字”型のビジネスモデルになることを指す。

海津政信氏
野村證券の経営役金融経済研究所長の海津政信氏
海津氏が示したスマイルカーブの違い
海津氏が示したスマイルカーブの違い。摺り合わせによる品質向上、差別化と低コスト生産体制の追求、さらにブランド力の向上によって組み立て工程でも収益性は向上できるとエールを送った

これとまったく違う傾向を見せるのが自動車業界で、これは多くの場合、部品メーカーも組み立ても、販売サービスに至るまで自社および関係会社でまかなうため、他社参入によるコスト競争が起こりにくく、“摺り合わせ”による製品改良や価値向上が望めるためだ。

PDP/液晶ディスプレー業界は、自動車業界ほど部品・開発メーカーと組み立て・生産メーカーの結びつきが強くはないものの、現在も画質や消費電力などで改良が進むなど摺り合わせの効果が出ていること、パソコンとは異なり同じパーツを調達すればほぼ同じ性能が出せるわけではなく、パーツ同士の相性やチューニングによって画質面での差別化・価値向上が見込める、などがその理由だという。

もっとも、この発言の背景にはファインテック・ジャパンに集まったPDP/液晶ディスプレーの製造・加工技術を持つ企業へのエール(応援)を込めた“リップサービス”も含まれていると想像されるが、「液晶もプラズマも画質は向上しているし、今後も商品力強化が図られる。同時にいかにコストを下げて価格競争に打ち勝つかが重要になる。積極的な設備投資に踏み切っている状況には勇気づけられる」という締めの言葉に勇気づけられた参加者も多かったようだ。

(編集部 佐久間康仁)


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