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NTTデータら、ICタグを利用した“アイ・セイフティ「子ども見守り」および「交通安全サービス」実証実験”の結果を報告――課題も多いが利用者の評価は高い


2006年4月20日
実験のコンセプトについて説明を行なう、NTTデータ ビジネスイノベーション本部ビジネス推進部 ビジネス推進担当 シニア・スペシャリストの堀間利彦氏
実験のコンセプトについて説明を行なう、NTTデータ ビジネスイノベーション本部ビジネス推進部 ビジネス推進担当 シニア・スペシャリストの堀間利彦氏

(株)エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)と日産自動車(株)、イッツ・コミュニケーションズ(株)、(株)トレンディ、東急セキュリティ(株)の5社は20日、横浜市青葉区にて行なわれた無線ICタグを利用した“アイ・セイフティ「子ども見守り」および「交通安全サービス」実証実験”の結果報告を発表した。2005年4月〜7月と2005年12月〜2006年3月にかけて行なわれた実験では、162名の児童に持たせたICタグを利用し、子供の安全確保や自動車事故防止への効果や課題についての検証を行ない、約71%の保護者が“有償でも欲しい”と回答した。

東京霞が関のNTTデータにて行なわれた報告会で、NTTデータ ビジネスイノベーション本部ビジネス推進部 ビジネス推進担当 シニア・スペシャリストの堀間利彦氏は、実験の基盤となった同社の“アイ・セイフティ”の目的について、都市部で顕著な地域コミュニティーの衰退を、携帯電話などプライベートな通信手段の普及が助長したとの反省から、“近くの人と人をつなぐ”使用法の確立を目指すものであるとを説明した。

実験自体もこのコンセプトに基づき、“地域力”向上のための地域コミュニティーの再構築に主眼を置き、地域住民の関心が高い地域防犯力の向上を目指して行なわれた。堀間氏は「主役は住民、ITシステムは脇役」との言葉を挙げて、住民主体のコミュニティー構築をIT技術が支援する実験であったと述べた。子供の安全確保という意味では、私立学校に通う子を持つ親を実験の対象とすることもできたが、あくまでも地域住民に基盤を置いた実験であるため、公立小学校区とそこに住む住民を対象としたと言う。

実験の概略図と内容
実験の概略図と内容

実験は神奈川県横浜市青葉区みたけ台地区(東急田園都市線青葉台駅周辺地域の2km四方)で行なわれ、参加者は児童162名、“駆けつけ支援者”(後述)268名、ドライバーモニター114名などが参加して行なわれた。実験期間は2回に分かれ、2005年4月〜7月に行なわれた“ステップ1”の結果を元に、対象地域の拡大や機材・システムの更新等を行なった2005年12月〜2006年3月の“ステップ2”が行なわれたという。

実験ではまず児童にお守り型の無線ICタグ“見守りタグ”を身につけてもらい、実験地域内に24ヵ所設置されたレシーバー“見守りスポット”と随時通信(IEEE 802.11b使用)を行なう。登下校時などに見守りタグを身につけた子供がレシーバーの範囲内を通過すると、その情報が保護者に電子メールで通知される(見守り登下校通知)。パソコンや携帯電話から、子供のいるエリアを検索することも可能である(エリア検索)。さらに見守りタグには緊急通報用のボタンが装備されており、子供が事件や事故に遭遇した場合にボタンを押すと、緊急通報と発信エリア等がレシーバーを経由して情報センターに伝わり、東急セキュリティの警備員に出動依頼が、同時に地域住民のボランティアで構成される駆けつけ支援者には呼び出し通知が届けられる(保護者にも連絡が届く)。実験ではこれを“通報駆けつけ”サービスと称している。

駆けつけ支援者は“地域の子供に目を向ける”という意味合いが強く、「野次馬でもいい」と堀間氏は述べた。地域住民がまず地域の安全・防犯に関心を持って行動することで、先に述べた地域コミュニティーの再構築を行ない、地域の防犯を向上させようという意図があるわけだ。

また見守りタグがお守り風のデザインを採用した点は、防犯ブザーのように所持を外部に知らせることでの抑止効果を求めるのではなく、逆に身につけていることを知られないようにして、事件発生時には相手に知られることなく通報できるという理由があるとのことだ。これは防犯ブザーや携帯電話の存在に気付かれると、それを廃棄・破壊されてしまう可能性を考慮したものだ。見守りタグ自体は内蔵電池で1年以上動作するとのこと。今回は実験期間が短いため、充電や電池交換等は必要ない。子供が扱うものであるため、ある程度の堅牢性と「洗濯しても壊れない」(堀間氏)防水性を備えている。無線通信にはIEEE 802.11bを使い、レシーバーとの通信距離は半径100〜200m(見通しなら300m程度まで)。GPS等の位置情報検知システムは備えていないため、子供の位置情報はレシーバーのエリア単位(半径100〜200m)でしか把握できない。技術的には3ヵ所のレシーバーを使い、タグとレシーバー間の通信時間誤差を元に半径20m程度の精度で位置検出も可能とのことだが、今回は高精度の位置検出が逆に子供の個人情報保護に対する懸念ももたらすため、利用していないとのことだ。タグと情報センターはレシーバー経由で随時通信を行なっているが、この時点ではタグIDやレシーバーの番号、時刻等の通信のみで、個人情報を直接無線でやり取りはしない。

ステップ1ではレシーバーを家庭の玄関や庭先に設置し、各家庭の常時接続経由で情報センターとつなげていたが、“他人がレシーバーをいじることで情報を読めてしまう”というセキュリティー上の懸念があり、ステップ2では電柱上に設置されたイッツ・コミュニケーションズのCATV回線設備に組み込む形で運用したとのことだ。

“ドライバー通知”サービスは、車載タグを車に取り付けたドライバーがレシーバーの近くを走行したときに、見守りタグを持つ子供がレシーバーの通信範囲内にいると、子供が近くにいることを携帯電話経由で通知するというもの。子供が近くにいることを事前に知ることで、ドライバーは警戒を強めて事故回避につながるというものだ。子供のタグを検知してから車側に通知を送るまでの時間差は5秒程度に設定されており、実際は3秒程度の時間差で通知(iアプリを使用)が行なわれたという。レシーバーの有効範囲に子供がいれば、屋内外問わず反応してしまうのが課題と言える。

近くの子供の位置を検知して、車に伝える“ドライバー通知”サービスの概略図
近くの子供の位置を検知して、車に伝える“ドライバー通知”サービスの概略図
ドライバー通知サービスで利用された機材など。実験対象となった地区は坂が多く、見通しの悪い道路が多いため、車対歩行者の事故が多いという
ドライバー通知サービスで利用された機材など。実験対象となった地区は坂が多く、見通しの悪い道路が多いため、車対歩行者の事故が多いという

防犯効果に期待を寄せる声多数も、コミュニティー再構築には至らず

2回の実験後にサービスのモニターユーザーに対して行なわれたアンケート(回答数119)では、約71%がこうしたサービスが“有償でも欲しい”と回答しているという。特に見守り通知や支援者の駆けつけについては、有償での継続を望む声が多い。金額については1000円/月以下程度が望ましいという回答が多かったとのことだ。また警備員の巡回が防犯に有効という回答も97%と多いが、一方でそれによって安全を実感できたのは半数程度とのことだ。巡回時間は子供が事件・事故に遭いやすい登下校時間帯を希望する声が多いという。交通安全サービスについてもポジティブな評価が多く、8割近くの回答者が安全運転に有効と述べていた。

実験に対するアンケートの回答の一部から。住民同士の連携による防犯についての意識は高く、それをどうやって実施に移すかが問われる
実験に対するアンケートの回答の一部から。住民同士の連携による防犯についての意識は高く、それをどうやって実施に移すかが問われる
実験サービスに対する評価は高く、有償でも利用したいという回答者は7割にものぼる。警備員の巡回も効果ありとする一方で、守られている実感についてはやや乏しい傾向がある
実験サービスに対する評価は高く、有償でも利用したいという回答者は7割にものぼる。警備員の巡回も効果ありとする一方で、守られている実感についてはやや乏しい傾向がある
ドライバー通知サービスに対するアンケート結果の一部。屋内外の区別がつかない等の問題はあるが、ドライバーの評価はおおむねポジティブのようだ
ドライバー通知サービスに対するアンケート結果の一部。屋内外の区別がつかない等の問題はあるが、ドライバーの評価はおおむねポジティブのようだ

地域住民の連携が犯罪抑止に有効と考える回答者は7割、住民同士の連携を必要と考える回答者は9割にも登るという。しかし実験での取り組みでコミュニティーが活性化されたという実感は乏しいようで、子供を守る防犯活動を通じて地域コミュニティーを再構築するというコンセプトの実現には、企業が推進する短期間の実験だけでは難しい面があるようだ。レポートでも継続した取り組みの必要性が述べられている。幸いなことに、地域の防犯活動の取り組みに協力したいという意志を持つ人は回答者の半数程度いるため、求心力のある運営母体等が重要となるとの分析も述べられた。

課題もさまざま見つかっている。たとえばステップ2では22回の緊急通報があったが、すべて誤報であり、タグが静電気で誤動作したため誤通報が行なわれていたという。これについては静電気の帯電を防ぐように変更したところ、防げるようになったという。子供が誤操作しての誤報はほぼなかったとのことだ。また今回はすべて誤報であったものの、通報を受けて支援者や警備会社が駆けつけても、レシーバーの有効範囲が広いため対象の子供がどこにいるのかを把握するのに時間がかかることもあったという。位置情報の正確な検出は、実サービスでは必要になるだろう。子供の側が“行動を監視される”ことに不満を持つ可能性についてたずねたところ、今回対象となった児童の6割程度が小学1〜3年生と低年齢であったためか、子供自身が問題を感じない(理解できない)ようだったとのことだ。高学年の児童ではごく少数だが、タグの所持を拒否して実験参加を取りやめたケースもあったという。

今回の実験はあくまで5社の企業連携によるもので、行政側との連携は行なわれていない。実験終了後はサービスも終了してしまう。レポートではまとめとして“住民・行政・企業の連携”により地域社会基盤サービスを構築する必要性を挙げ、行政主体ではなく住民自身が運営主体となるようなサービスモデルが必要であり、企業と行政がそれを支援していくべきであるとの提言が行なわれた。

(編集部 小西利明)


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