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個人ポッドキャストへの広告が4万ドル!


2006年5月24日

伸びるポッドキャスティング市場

個人で始めたポッドキャスティングによるニュース番組が人気を博し、1週間の広告契約料が4万ドル(約450万円)で落札――。これは今年2月にあった米国の事例だが、ポッドキャストはメディアとして成長を続け、日本でも広告関係者の注目を集めるようになっている。(株)博報堂DYメディアパートナーズとニフティ(株)が23日に共同で開催したポッドキャスティングセミナーでは、関係者らがポッドキャストを使った広告マーケティング手法に関する内外の最新事例やトレンドを紹介した。

勝野正博氏
セミナー開会の挨拶をした博報堂DYグループ i-ビジネス・センター センター長の勝野正博氏
セミナー会場
セミナー会場には広告、メディア関係者が200人以上詰めかけた
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは海外の最新事例などについて議論された

ポッドキャストとは

ポッドキャストの仕組みを簡単におさらいしておこう。ポッドキャスト(またはポッドキャスティング)とは、オーディオや映像などをパッケージ化してネット上で配信する仕組みだ。“配信”とは、具体的にはサーバーに蓄積されたマルチメディアデータ(番組)を、受信ユーザーが指定したスケジュールでパソコンにダウンロードすることを指す。技術的には受信側のプログラム(多くの場合はiTunesだが、ほかにもクライアントソフトは存在する)がサーバーに送信リクエストを出すため、これは能動的な受信だが、いったん“購読リスト”に追加しておけば、なかば自動的にダウンロードが行なわれるため、あたかも新聞受けに毎朝朝刊が配達されるように、コンテンツ提供側からユーザー側に“配信”されるように見える。パソコンにダウンロードしたコンテンツは、そのままパソコン上で再生する場合と、iPodなどのポータブルプレーヤーに転送して、出先で視聴する場合がある。

コンテンツには音声ならMP3、映像ならMPEG-4といった広く使われている既存のファイル形式を用いることができるため、個人でも簡単にポッドキャスト配信を始めることができる。コンテンツの作成、配信、受信、視聴が手軽であったため、2004年の登場以来、急速な普及を続けている。特に、もともと草の根的な開発から始まったプログラムだったものが、2005年になって米アップルコンピュータ社による正式サポートが開始されてから、普及に加速がついた。

国内でも、新聞社やラジオ局といったメディア関連企業によるニュースやトーク、音楽番組のほか、語学、落語など、視聴できるコンテンツは着実に増えている。また、@niftyは2005年7月にポッドキャスト専門のポータルサイトの“Podcasting Juice”を開始。1年足らずの2006年4月末までに、のべ520万人がコンテンツを視聴したという。

Podcasting Juice
@niftyが運営するポッドキャスト専門ポータル“Podcasting Juice”

メディアのオンデマンド化

ポッドキャストを取り巻くメディア環境の変化について、鷲尾和彦氏(博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所)は、「多メディア化」、「オンデマンド化」、「配信ツールの充実」という3点を挙げた。

音声メディアといえば、これまで日本にはラジオぐらいしかなかったが、ここへ来て、ポッドキャスト、ネットラジオ、地上デジタルラジオなど出口が増えたことを指摘。また、視聴者は受信する“チャンネル”を自由に選べるようなったばかりでなく、放送時間に拘束されることなく、好きなときに好きな順で“オンデマンド”で聞けるようになった。これまでメディアや広告業界では、コンテンツやメッセージを、いかにメディアに乗せて「送るか」が重要だったが、これからは視聴者がそれを「受け取った」かどうかが問われる時代になるという。

国内の事例

鷲尾氏は、ポッドキャストを使った企業によるプロモーション事例として、読売新聞社主催の“プラド美術館展”を紹介。美術展で見所となる絵画を紹介する数本のショートムービーを公開している。また、BMWはフランクフルトで行なわれたモーターショーの様子を会場からインターネット配信するのにポッドキャストを利用。従来の“マス”にリーチするのとは違う新しい試みだ。

プラド美術館展
開催中のプラド美術館展のトピックをポッドキャストで配信
解説
展覧会の見所を、複数のビデオで順次解説

ほかに国内でポッドキャストに注力している企業の例として、湘南シーサイドラジオ、エフエム那覇、京都三条ラジオカフェなどといった地方のラジオ局を紹介。地域情報を流すこうした番組は、県内のみならず、県外からも多数のアクセスがあるという。

大和証券、ソニー銀行といった企業が、金融情報を流すポッドキャストも始めている。セミナーのパネルディスカッションにも参加したソニー銀行(株)の河原塚徹氏(商品企画部マネージャー)は、「たとえば外貨預金の説明をするような場合でも、既存の紙媒体や映像媒体の広告よりも、多くのメッセージを的確に届けられる」、「朝5時にニューヨークから届いた生の声を朝6時に配信することができる。これはむしろ紙よりも速報性が高い」と、マーケティングツールとしてのポッドキャストの優位点を指摘した。

都市部では通勤電車、地方ではクルマで視聴

ニュース、英会話、落語など企業による番組“スペシャルプログラム”や個人ブロガー向けのポッドキャスティングツール“Podfeed”を提供するニフティのポータルサイト“Podcasting Juice”。2005年7月と早い時期から参入した同社の清水孝治氏(コンシューマーメディア部)は、現在の利用者像について、興味深いデータを紹介した。

清水孝治氏
ニフティ、コンシューマメディア部の清水孝治氏

まず、サービス開始以来、過去10ヵ月で視聴した約520万人のプロファイルを見ると、その85%が男性と、圧倒的に男性に利用者が多いことがわかる。年代別にみると、20代が21%、30代が39%と全体の6割が20〜30代に集中しているという。

グラフ1
グラフ2
出典:ニフティ

利用頻度では、「毎日(39.0%)」、「ほぼ毎日(37.1%)」、「2〜3日に1度(18.3%)」と、ほぼ習慣化して頻繁に視聴しているユーザーが多いという。またダウンロード頻度を見ると、「朝6時にダウンロードが多いコンテンツと、そうでないコンテンツの2種類に分かれる」という傾向があるとも指摘した。

視聴場所についてのアンケートでは、「自宅(55.6%)」に続いて、「通勤電車の中(47.5%)」や「通勤の車中(18.5%)」という回答も多数。ただし、これは関東・東海・近畿といった都市部での数字で、これ以外の地方では、電車とクルマの数字が逆転しているという。

個人のビデオブログへの広告料が週に4万ドル!

日本では、いまだ一部のアーリーアダプターによる盛り上がりという面も感じられるポッドキャストだが、米国では、すでに無視できない規模のメディアに成長している。デジタルメディアストラテジーズ代表の織田浩一氏は、そうした海外の先進的事例について、レポートした。

今後の市場規模の推移について織田氏は、2008年までに約5800万人が視聴するメディアに成長するというIDCによる予測や、米国内で2005年に約310万ドル(約3億5000万円)だったポッドキャスティング広告市場の規模は、2010年までに約3億ドル(約340億円)に達し、ブログの広告市場をしのぐことになるというeMarketerの予測値を紹介した。

ポッドキャストに似たメディアとして、おもに個人によるビデオクリップの投稿サイト、YouTubeについても織田氏は言及。すでにYouTubeの視聴者は4000万人以上とMTVを超え、従来のマスメディアと異なるメディアの著しい台頭を指摘した。

また、広告関係者をあっと言わせた事例として織田氏は、個人のビデオニュース配信サイト“Rocketboom”を紹介。Rocketboomは、ニューヨーク在住の個人が始めた日刊の3分間ニュース番組サイトで、特にネットやアートに関する情報を発信している。女性キャスターのアマンダ・コンドン氏(Amanda Congdon)が、自宅の簡易セットや街頭でカメラに向かって話すだけの内容が主だが、エッジな社会現象や流行を紹介することで多数の視聴者を獲得。開始以来人気は上がり続け、いまや視聴者は20万人を上回るという。

Rocketboom.com
高い人気を誇る個人のニュースサイト、Rocketboom.com

このRocketboomが今年2月、1週間分の番組の15秒の広告枠をeBayのオークションに出したところ、瞬く間に名だたる企業から入札があり、最終的に4万ドル(約450万円)で落札したという。

番組内で自然にブランド名や製品名を話題に

織田氏は、広告クライアントが広告を制作するという従来の常識と異なる新たな試みについて、ポッドキャストのポータルサイト“PodShow”の事例を紹介した。PodShowはトップ50のポッドキャストの番組を、擬似的に単一の広告媒体として集めて広告クライアントに販売。ポッドキャストの提供者は、それぞれの番組内で商品やブランド名について紹介したという。ポッドキャスト提供者は視聴者の属性や嗜好について詳しく知っているので、効果的なマーケティングが可能だという。

また、洗濯機など白物家電を販売する“Whirlpool”は、ポッドキャストを使ってトークショー“The American Family”を毎週配信しているという。番組は、さまざまなバックグランドをもつ一般的なアメリカ人家庭の抱える問題について議論するもので、直接製品について広告するものではないが、新たなブランドイメージ戦略として注目だという。

(編集部 西村賢)


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