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【WWDC 2006 Vol.9】Mac Pro発表――PowerPC搭載Macは12年半の歴史に幕を引く
2006年8月15日
「今日、Power Macは歴史に変わる」
8月7日から11日、米国サンフランシスコでMacの世界開発者会議“WWDC 2006”が開催された。イベントの冒頭で行なわれた基調講演では、次期Mac OS X“Leopard(レパード)”の詳細が明かされたが、それと並んでもう1つ大きな発表があった。Intel Macのフラグシップモデルである『MacPro』の発表だ。
すでに詳細な仕様は公式ウェブページで公開されており、ASCII24でもベンチマークやマザーボードの撮影などを行なってきた。ここでは改めて、この機種が米アップルコンピュータ社のビジネス上、どういう位置づけにあるのかを基調講演から読み取っていこう。
人気急上昇中のMac、75%はインテル版
米アップルのCEO、スティーブ・ジョブズ氏は、まず昨四半期のMacの売り上げが同社史上最大だったことに触れた。出荷台数は133万台で、パソコン全体の売り上げは7%ほどしか伸びていないのに、Macの売り上げは17%ほど伸びていると語った。
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2006年第3四半期における売り上げは、パソコン全体では7%アップしたのに対して、Macでは17%ほど伸びた |
ジョブズ氏は「つまり、我々のマーケットシェアが伸びているということだ」と続ける。特に売れていたのが“MacBook”シリーズで、1月時点での米国ノートパソコン市場におけるアップルのシェアは6%だったが、4月にMacBookが発表された後は急速に伸び、6月頃には倍の12%にまで達した。
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普及価格帯のノートパソコンであるMac Bookの登場で、米国のノートパソコン市場におけるアップルのシェアが12%まで伸びた |
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MacBookの爆発的ヒットもあり、史上最大のMacの売り上げのうち、実に75%がIntel Macという結果になったが、来期はこれが100%に変わりそうだ |
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ジョブズ氏は「われわれの製品はただ1機種を除いてすでにほとんどインテル仕様に切り替わった。その1機種とはPower Macだ」と語り「今日、Power Macは歴史に変わる」と付け加えた。
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「今日、Power Macは歴史に変わる」 |
アップルが1994年以来発売してきたデスクトップシリーズ“Power Mac”はこの日、12年の歴史に幕を閉じたーーこれに替わる新時代のフラグシップマシンを発表したのはワールドワイドプロダクトマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏だった。
CPUには“Woodcrest”を搭載
「このエキサイティングな新製品を発表する栄光を授かってとてもうれしく思っています。新しいMac Proを発表します」ーーシラー氏はそう言って壇上に現れた。
彼が「これは、ハイエンドユーザーが夢にまで見ていた製品です。CPUはインテルの“Xeon(ジーオン)”チップセットです。Xeonの中でも最新のもので一般に“Woodcrest(ウッドクレスト)”と呼ばれているCPUです」と語ると、会場から喝采がわき起こった。
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Woodcrestは、最新の“Intel Core 2”というマイクロアーキテクチャーを採用し、CPUの核が2つある“デュアルコアCPU”の仕様。動作速度は最大3GHzで、4MBの共有型メモリーと128bitのベクターエンジンを搭載している |
シラー氏は「しかし、ハイエンドのユーザーにとってさらに重要なのは、これが64bit CPUだということでしょう」と前置きし、同CPUの魅力は「ほかのインテル製CPUと同様に、極めて優れたパフォーマンス/ワット(消費電力あたりの性能)を発揮すること」だと語った。
アップルは2005年のWWDCで、インテルCPUへの移行を果たした最大の理由について、「2006年時点のCPUロードマップを見ると、インテルのCPUがもっとも優れたパフォーマンス/ワットを発揮しているからだ」と説明していた。
シラー氏はXeonのパフォーマンス/ワットを、PowerPC G5や、競合製品にあたる米Advanced Micro Devices(AMD)社の“Opteron(オプテロン)”と比較してみせた。
グラフではOpteronはPowerPC G5の1.5倍程度、これに対してXeonはPowerPC G5の3倍以上の値を示していた。このように「最新のXeonは、圧倒的に優れたCPUだが、Mac Proシリーズは「このXeonを2つも搭載」するのだという。
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PowerPC G5/Opteron/Xeonの3つのCPUでパフォーマンス/ワットを比べたグラフ |
Power Mac G5の2倍のパフォーマンス
それではMac Proそのものの実力はどうなのだろう。シラー氏はこれまでのPower Mac G5の最上位モデル『Power Mac G5 Quad』とMac Proの性能を比較した。
まず基本演算性能では、整数演算で2.1倍、浮動小数点演算で1.6倍の性能を発揮するという。シラー氏は、Mac ProはPower Mac G5と比べてだいたい2倍程度速いと総括している。
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Mac Proの処理能力は、Power Mac G5と比べてだいたい2倍程度 |
では、これは実際にアプリケーションを使うとどのくらいの差になるのだろう。シラー氏は、さまざまな業種のプロフェッショナルが使うソフトのパフォーマンスを比較し、Mac Proのほうが1.4〜1.8倍ほど速いことを明らかにした。
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Mac OS Xの開発環境『Xcode』、3Dグラフィックソフト『Modo』、音楽制作ソフト『Logic Pro』では1.8倍、ビデオ編集ソフト『Final Cut Pro』や医療用画像ビューアー『Osirix』でも1.4倍は速いという結果だった |
速いのはCPUだけが理由ではない。2つのCPUは1.33GHzのフロントサイドバスで接続されており、秒間最大21GB/秒でデータをやりとりできる。また、メモリーは4チャンネル/256bit/667MHzという仕様で、最大16GB/秒のデータをやり取りできるという。
だが、Mac Proの仕様で、もっとも大きな喝采を浴びたのはHDDを4台、最大2TBまで内蔵できることだ。シラー氏は「Xeonプロセッサーは消費電力あたりの性能が高いため、冷却機構を簡素化できると語り、そのおかげで筐体内にゆとりができた」と話す。同じゆとりを生かして2つめの光学式ドライブを追加することもできる。
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Power Mac G5より冷却機構が簡素化され、筐体内にゆとりができたおかげでHDDを4台まで内蔵できるようになった |
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正面と背面のI/Oポート類も大幅に増強した。特に重要なのはダブルサイズ(2スロット)のグラフィックカードにも対応したことだろう |
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バリエーションは約500万通り
来場者の中には、Power Mac G5とそっくりの見た目にがっかりする人もいた。しかし、シラー氏は「外観的にはこれまでのPower Mac G5とそっくり。つまり、Power Mac G5のこれまで評判よかった外観機能をすべて継承している。だが、内部はまるっきり違う」と言う。
例えば4台のHDDドライブが搭載可能な新しいドライブベイは、新しいドライブキャリーを用意し、ベアドライブを工具も使わず、ケーブルも抜き差しせずに追加できるようにしている。
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シラー氏は「以前のPowerPC G5は巨大で、かなりのスペースを取ったが、新しいXeonプロセッサーは小さなスペースに収まり、8個のDIMMスロットや4つのフルサイズPCIスロットなどを用意することを可能にした」と語る |
Mac Proでさらに注目すべきはその売り方だ。これまでのPower Mac G5は、“Fast”“Better”“Best”とだいたい3種類の構成を提供していたが、Mac Proで用意するのは「これぞ、という構成ただ1種類だけ」とのこと。標準構成の価格は2499ドルと、従来のPower Mac G4 Quadに比べても800ドルも安い(国内価格は31万9800円)。
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用意されるラインアップは、厳選された1モデルのみ。あとはBTOで好きにパーツ構成を変えられる |
面白いのは、これまでMacとWindows機はCPUの種類などが違ったため直接比べられなかったが、インテル移行のおかげでその比較が可能になったということ。
シラー氏はほぼ構成が同じ、米デル社製パソコン『Precision 690』を引き合いに出してその価格を比較した。ビデオカードがエヌビディアの『Quadro 550』という違いはあるが、価格は3448ドルと1000ドル近く高価だという。
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シラー氏はMac Proとほぼ構成が同じデル製パソコン『Precision 690』を比べ、Mac Proのほうが1000ドル安いと発言。「われわれの製品は質が高いだけでなく、手頃さでも勝っている」と語る |
もっともプロ用パソコンは業務によってニーズが大きく変わるもの。そこでBTOのオプションも豊富に用意した。CPU/HDD/グラフィックカード/AirMac/Bluetoothといった数あるオプションの組み合わせを考えていくと、合計で497万6640種類の構成を選べるという。
210日で移行完了、『Xserve』もインテルに
Mac Proの紹介を終えると、シラー氏は「Mac Proを発表したことで、インテルへの移行は完了した」と付け加えた。
今年1月10日、iMacとMacBook Proの発表で始まったインテルCPUへの移行−−当初、ジョブズは1年がかりで移行を行うと語っていたが、実際にはそれからわずか210日後の8月7日に完了してしまった。
だが、シラー氏の発表は、これだけで終わらなかった。シラー氏は「Macの一員と考えていない人も多いかもしれないが、こちらもアップルの戦略に非常にうまく反映した製品だ」と断った上で、サーバー製品『Xserve』もインテルへ移行すると発表した。
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サーバーの『Xserve』もPowerPC G5から新たにXeonを搭載することとなった。シラー氏は「今日、ここでまったく新しいXserveを発表する。CPUはXeonを2個搭載。CPU速度は2.0/2.66/3.0GHzの3種類が選べる」とコメントした |
Xserveというと馴染みの薄い人も多いということで、シラー氏はまず利用事例を紹介した。スクリーンには“Xtech”というサーバーホスティング系の会社のサーバールームが映し出された。きれいにサーバーが並べられたこの部屋は“Aquarium(水族館)”と呼ばれているという。
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シラー氏はXserveが使われたサーバールームについて「あなたはこの会社名は知らないかもしれないが、もしかしたら年中ここのサーバーを使っているかもしれない。というのも、ここのサーバーはクレジットカード処理などに頻繁に用いられているからだ」と語る |
Xserveは“1U”というラックに収まるように本体サイズが調整されている。そのため前製品の『Xserve G5』では、熱関連の問題でデュアルコアプロセッサー1つしか内蔵できなかった。
しかしXeon搭載のXserveでは、この熱問題が解決されたため、デュアルコアプロセッサーを2つ内蔵できる。シラー氏は「だから性能差も圧倒的だ」と言い、シラー氏は「ほぼ5倍のスピード」と総括した。
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Xserve G5に比べて、新しいXserveは基本演算では整数演算で5.4倍、浮動小数点演算で3.7倍のスピードとなる |
会場を湧かせたのは新機能が発表されたときだ。 シラー氏が「Xeonプロセッサーの低い消費電力で、内部にスペースができた。これによりユーザーからの要望が大きかった機能を搭載できた。電源の二重化だ」と語ると、場内からは喝采が湧いた。
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二重化とは、万が一、故障が起きても大丈夫なように同じハードを2つ用意しておくこと。新しいXserveは、2個の電源を搭載したことで片方の電源が故障しても、もう片方を使って稼働させ続けられる |
Xserverは今年10月に発売となる。基本構成は2.0GHzのXeonプロセッサー2個に、1GBの667MHz DDR2 ECCメモリー、80GB SATAドライブモジュールに、電源二重化、内蔵グラフィックス機能、クライアント数無制限のサーバーソフト『Mac OS X Server』が付いて、2999ドル(国内は37万9800円)。Xserverにも豊富なBTOのオプションが用意され、構成の組み合わせは103万6800通りに及ぶ。
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シラー氏はXserveをデルの似た構成のサーバー『Dell 1950』と比較。価格が300ドル近く安いことをアピールした |
Mac Proとインテル版Xserveの発表で、1994年3月14日にデビューしたPowerPC搭載Macは、その12年の歴史の幕を閉じることになる。これからのアップルはWindows機と、ほぼ同じ構成のハードウェア仕様で、よりアドバンテージを明確に打ち出しながら競合していくようだ。
(ITジャーナリスト 林信行)
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