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クアルコム山田社長、WiMAX陣営を「彼らはギャンブルに出ている」と批判

2006年09月06日 20時04分更新

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クアルコム・ジャパン(株)は6日、東京都・港区の本社に報道関係者を集め、“MBWA”(IEEE 802.20)の標準化動向や“MediaFLO”など、同社が積極的に進めている技術に関して説明した。プレゼンテーションは、米国本社からエンジニアリング部門のシニア・バイスプレジデントを務めるエドワード G. ティードマン(Edward G. Tiedemann, JR.)氏が行なった。



競合するWiMAXに対して、技術面での優位性をアピール

米クアルコム社エンジニアリング部門シニア・バイスプレジデントのティードマン氏

広域無線通信技術の“MBWA”(Mobile Broadband Wireless Access)は、時速250km程度の高速移動中でも、下りで数Mbpsと高速なIP通信が行なえる技術。米クアルコム社が中心となり、IEEE 802.20で標準化作業が行なわれているが、今年6月に同部会のサイトで、標準化グループの活動が一時的に中断されるというアナウンスがあった。この中断は「議論による収束が困難になったこと」「(特定メーカーからの提案を受け付けないなど)作業部会の透明性が欠如していること」などが理由に挙げられているが、これは、一般に競合技術の“WiMAX”(IEEE 802.16e)陣営との軋轢が顕在化したものと見られている。

ティードマン氏は説明会で、主に技術的な立場からWiMAXとMBWAを比較した。基本的な送信アンテナ1本、受信アンテナ2本の構成で、ダウンリンクの効率が約1.5倍、アップリンクで約2倍高効率であること、混雑状況での同時接続数において約3倍、VoIPなどリアルタイム処理を行なうアプリケーションで25倍の性能を提供できる点などを改めて強調した。合わせて同氏は、コスト面でも周波数効率が高く、これが提供キャリアーに対してメリットになると強調した。その背景には、欧米諸国では、サービス提供に必要な周波数帯の確保を金銭面で解決するのが一般的であり、その利用効率の高さはサービス運営のコストに直結するためだ。



MBWAで期待されるパフォーマンス4×4のMIMOにより、20MHz帯域の送信で最大290Mbpsの伝送速度、70Mbpsの受信速度を実現できる

一方、説明会に同席したクアルコム・ジャパン代表取締役社長の山田純氏は、WiMAXに賛意を示している韓国サムスン電子社、米モトローラ社などを「携帯電話におけるインフラビジネスに脱落した人々」と酷評。技術的な観点よりも、ビジネススタイルを優先した(先行投資による市場支配を狙った)一種のギャンブルであるとした。また、WiMAX陣営のリーダーシップを取っているインテルに関しては、「インテルは『WiMAXはCentrinoのようなプラットフォームとして、ラップトップに標準搭載される』『インフラさえ整えば、端末は自然に普及する』という理解を与えているが、これは疑問」とした。ラップトップに内蔵する通信機能に関しては「(IEEE 802.20にこだわらず)現在の3G対応モデムがよりリーズナブルな価格で、標準搭載されればいいというスタンス」と話す。

IEEE 802.20の標準化は11月に再開される予定。クアルコムでは、2007年半ばごろにはドラフトの修正案に関して、主要メーカーのみが投票する“sponsor ballot”の段階に進めると見ている。ドラフトの修正案に対して、参加者全員が投票する“recirculation ballet”から、sponsor ballotに進むためには、投票者の75%以上の賛同を得る必要があるが、IEEEの過去の事例では、sponsor ballotの段階まで進んで標準化されなかった例はないという。



Media FLOの普及のカギはキャリアーがどれだけ本気になるか

日本法人の山田社長

MBWA同様にクアルコムが積極的に進めている“MediaFLO”(メディアフロー)は、携帯電話機向けの放送規格で、リアルタイム放送のほか、蓄積型の配信にも対応している。MediaFLOは最初から有料放送によるビジネスモデルを視野に入れており、既存の地上波放送局とは異なる放送会社によるサービス提供が望ましいと、クアルコムは考えている(関連記事)。同社は、(株)KDDIと共同でMedia FLOに関する企画会社を昨年12月に設立した。

携帯電話機をターゲットにしたデジタル放送としては、すでに国内で“ワンセグ放送”が始まっているが、クアルコムでは既存の放送局が提供する番組にとらわれず、新しいタイプのコンテンツ配信も視野に入れているようだ。「ポッドキャストに近いものがいいのではないか。ロングテールの理論で言えば、ヘッドの部分が放送局の提供する番組、テールの部分がポッドキャスティング的な番組になっていくと思う。こういったコンテンツをどう作っていくかが重要になる」と山田氏は言う。

「MediaFLOの仕様は米国の標準化団体TIA(Telecommunication Industry Association)からも承認を受けており、公開された仕様に基づいて、クアルコム以外のメーカーでもチップを作ることが可能だ。デジタル放送の受信技術は、日本では非常に進んでおり、ワンセグ放送との類似点も多い。例えば、ワンセグ放送とMediaFLO両方に対応したチップなども作れる。これは大きな意味を持つ」(山田氏)。

コンテンツビジネスの難しさは、著作権者との折衝にあると言ってもいい。しかし、MediaFLOは、今後のビジネスモデルの立て方によっては、携帯電話キャリアー主導でのサービス展開も可能になる。山田氏は「放送局とキャリアーが権利関係で衝突している限りは、国内でもMediaFLOに勝機がある」「キャリアーがいかに本気になるかがカギ」と、その可能性を記者たちに印象づけた。



3GPP2(CDMA 2000関連)の標準化動向。国内では、auからCDMA 1X WIN方式のアップリンク速度も向上させた“EV-DO Rev.A”が発表されており、Rev.Aへの移行が進んでいる段階。さらなる高速化が可能な“EV-DO Rev.B”の議論も終了したばかりであるほか、その次に来る“3GPP2 Phase 2”の議論も行なわれているという

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