ニュース / トピックス
【INTERVIEW】iTunes Storeのムービー配信は「今までと違う体験」がウリ――アップル担当者が語るiTunesとiPod
2006年9月13日
来日した米アップルの担当者3名を直撃!
iMac、iPod、iTunesと、アップルコンピュータ(株)はここ1週間で新製品を立て続けに発表した。米国で始まったムービー配信サービスなど注目すべき要素が多い新製品だが、アップルは何を考え、どういったポリシーでこれらのプロダクトを世に送り出したのだろうか。
今回は米アップルコンピュータ社から来日した、ワールドワイド Macハードウェアプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのデビッド・ムーディー(David Moody)氏、iTunes レーベルリレーションズ&ミュージックプログラミング担当ディレクターのアレックス・ルーク(Alex Luke)氏、iPodプロダクトマーケティング担当マネージャーのショーン・エリス(Shawn Elis)氏――の3名に各プロダクトを語ってもらった。
iTunesとiPodの連携で生まれる“エコシステム”が強み
[編集部]
既存のムービー配信サービスと比較して、新規参入となる“iTunes Store”の強みは何ですか?
[ルーク氏]
デジタルメディアを提供するためのビジネスモデルとしては、ストリーミング、サブスクリプション(定期購読)、ダウンロードサービスなど、似たようなサービスが数多く登場しています。
私たちが手掛けたiTunesやiPodといった“ジュークボックス”とそのコンテンツは、ユーザーに大きな柔軟性を提供できている点が強みだと思っています。また、iTunesとiPodの連携で生まれる“エコシステム”(生態系)も強力なものとして育っています。
購入したコンテンツを自分のものにできるというのもメリットでしょう。一度ダウンロードしたら、何年たっても期限が切れることなく視聴できるし、自分の好きなところに保存しておけます。
[編集部]
新作の通常価格が14.99ドルという理由は?
[ルーク氏]
スタジオから提供されている卸価格に基づいて、私たちがお客様に提供できるベストな価格と考えて判断しました。
[編集部]
iTunes Storeのムービーは、新作が14.99ドル、新作のプレオーダーが12.99ドル、旧作が9.99ドルという値段で販売されています。この新作/旧作という基準はどこにありますか。
[ルーク氏]
どの価格にするか、いつ価格を新作から旧作に切り替えるのかといった話は、コンテンツプロバイダー側が決める話なので、これといった画一的なルールは持っていません。
[編集部]
DVDレンタルに比べるとこの価格は割高に感じますが、iTunes Storeのほうが「コンテンツを所有できる」という点でユーザーが満足できると考えていますか?
[ルーク氏]
「今までとは違う体験をしてもらえる」という点に狙いがあります。iTunes Storeでムービーを買って、それを所有できる。視聴はパソコンでも可能だし、iPodに転送すれば外出先でも見られる。そういう新しい体験があると思います。
[編集部]
iTunes Storeで販売されているドラマは、テレビ放送されているものを録画すれば無料で所有できますよね。ユーザーは何を求めて、お金を払ってまで購入しているのでしょうか?
[ルーク氏]
ユーザーの答えはすでに出ていると思います。米国のiTunes Storeでは、この1年間でドラマの購入数が非常に伸びていて、4500万本ダウンロードされたという実績があります。これこそがユーザーの声で、皆さん好んで買っているのではないかと思います。
ムービーのDRMはテレビ番組と共通
[編集部]
映画のDRM(デジタル著作権管理)は音楽と共通なのでしょうか?
[ルーク氏]
DRMはテレビ番組と共通になります。5台までのパソコンと、無制限のiPodにコピーできます。ただし、音楽では音楽CDとしてCD-Rに書き込めますが、ムービーとテレビ番組はDVDビデオとして書き込むことはできず、単なるデータのバックアップになります。
[編集部]
『iTunes 7』には、音楽CDから取り込んだ曲に、iTunes Storeで扱っている曲のアートワークを自動でダウンロードして添付するという新機能が追加されましたが、このアートワークの著作権はどうなっていますか?
[ルーク氏]
iTunes Storeで提供されるコンテンツは、すべて各コンテンツプロバイダーとの直接の交渉で著作権の処理を行なっています。iTunes Storeを21カ国で展開できたというのも、各国の各レーベルやパブリッシャーなどに許可を取ることができたからだと思います。
[編集部]
ムービーは640×480ドットの解像度で提供されるということですが、ほかのミュージックビデオなどの解像度はそのままでしょうか?
[ルーク氏]
iTunes Storeで過去に提供されていたビデオクリップなども、すべて640×480ドットの解像度で再リリースされます。解像度が320×240ドットのクリップを購入されたユーザーはもう一度買っていただければ、低解像度と高解像度の2本をライブラリに保持できます。
万が一のHDDクラッシュにも対応できる体制作り
[編集部]
パソコンのHDDは壊れる可能性があり、もしそうなった場合にユーザーが購入したデジタルデータは一瞬で失われてしまいます。iTunesでデジタルコンテンツを管理する人が増えてくると、これからHDDクラッシュの問題が表面化するかもしれません。何か対策を考えられていますか?
[ルーク氏]
今日発表したものの中にも、そうした対策のひとつが含まれていると思います。iTunes 7では、iTunes Storeに認証された5台のパソコン内であれば、iTunes Storeで購入した曲をiPodを介して移せるようになりました。
仮にパソコンのHDDがクラッシュしたとしても、iPodにコンテンツが入っていれば、すぐに別のパソコンにつないで、そこから復帰させることが可能になるわけです。
また、ユーザーに対しては、特にiTunesのコレクションが増えてきたときに、必ずHDDにバックアップを取ることを勧めています。
[ムーディー氏]
次期Mac OS Xの“Leopard(レパード)”では、自動バックアップ機能の“TimeMachine”が標準で搭載されます。この機能を使えば、重要なデータを手軽にバックアップできます。
[編集部]
iTunes Storeの音楽ではインディーズ系レーベルも積極的に扱われていますが、ムービーでは小規模プロダクションの作品も扱う予定はありますか?
[ルーク氏]
ムービーにおいて、今回のディズニーとの契約に関しては出発点だと考えています。音楽、テレビ番組と同じで、音楽の場合は25万曲からスタートして今は350万曲まで広がってますし、テレビ番組では5本からスタートして今では220本提供されています。
ムービーのソースについては、メジャーレーベルから自主制作、独立系に至るまで、最もユーザーにとって魅力があると思われるコンテンツから優先順位をつけて提供していきたいと思います。
[編集部]
ワールドワイドでもムービーやテレビ番組の配信を展開する予定などはありますか?
[ルーク氏]
2007年度に米国外でムービーの展開を始めます。それ以外の将来の展望はまだ公表していません。
デザインリニューアルの一環で“5色”を採用したiPod nano
[編集部]
新しいiPod nanoでは、iPod miniを彷彿とさせる5色カラーが復活しましたが、これはユーザーからの要望があったからでしょうか?
[エリス氏]
iPod nanoは、“第2世代”としてデザインそのものが刷新され、その一環としてカラーが復活したという位置づけになっています。ユーザーはいつもいろいろな色を求めているというもので、今回は5色のバリエーションをつけるという結果になりました。
[編集部]
第5世代iPodは、ビデオ再生だけバッテリー駆動時間が伸びています。これは内部構造が変更されたからでしょうか?
[エリス氏]
確かに新しい第5世代iPodでは、ビデオの再生時間が75%も伸びていて、30GBで3.5時間、80GBで6.5時間となっています。ですが、iPodの内部構造については社の方針で詳しくお話しできません。
[編集部]
ギャップレス再生機能は、古いiPodでも利用できるのでしょうか?
[エリス氏]
今回発表した、新しい第5世代iPodと、第2世代iPod nanoは標準で対応しています。旧第5世代iPodは、最新のiPodソフトウェア(バージョン1.2)にアップデートすれば利用できます。第1世代iPod nanoや、第1/第2世代iPod shuffleでは対応していません。
[編集部]
640×480ドットの新しい解像度のビデオは、旧第5世代iPodでも再生できますか?
[エリス氏]
iPodソフトウェアをアップデートすれば見られます。ただし、新しいiPodの方が、液晶ディスプレーが明るかったりといろいろメリットがあるのでお勧めです。
[編集部]
なぜ突然、iPod用ゲームの販売をiTunes Storeで始めたんでしょうか?
[エリス氏]
iPodは世界最高のミュージックプレーヤーですが、私たちは過去に写真を扱える機能を追加し、そのBGMとしてミュージックも楽しめるように改良してきました。今回はiPodの中の好きな曲をBGMとして聴きながら、カジュアルにリラックスしてゲームを楽しめるようにと考えて、ゲームの提供を始めました。
[編集部]
米マイクロソフト社が『Zune』というiPodの競合プレーヤーを用意しています。これに対してiPodのアドバンテージはどこにあると思いますか。
[エリス氏]
iPodとiTunesのシームレスな連携というのがポイントになると思います。つまりハード/ソフト/サービスを密に連携させ、組み合わせることで、音楽、テレビ番組、ビデオ、ゲームなどでユーザーに取ってベストな体験を提供できると思います。
(編集部 広田稔)
|