胃カメラを飲み込むのが苦しいのは管がつながっているからだ。パソコン周りで有線から無線の流れがあるように、医療器具の内視鏡でも無線化が進み、苦しい思いをしての内視鏡を飲み込む必要がなくなる日が来るのかもしれない。
小さなタブレットを1つ飲み込めば、それが約8時間かけて胃腸の内壁を撮影しつつ、無線で外部に画像を送信する――。第19回ちえものづくり展には、そんなSFのような製品も展示されていた。
腸管を進むカプセル内視鏡のイメージ図 |
専用ジャケットで画像を受信。電力供給も無線で
(株)アールエルの開発したカプセル内視鏡『Sayaka』は長さ23mm、直径9mmの、よくあるカプセル錠剤の形状をした医療機器だ。このカプセルを飲み込むことで、患者の消化管を撮影。カプセルが体内を旅する約8時間の間に、87万枚もの静止画像を撮影することができる。カプセルには画像保存用メモリーを内蔵せず、画像は無線電波に乗せて患者が着用する専用ジャケットに送信してしまう。逆に専用ジャケットからは電波に乗せてカプセルに電力を供給する。
カプセルは直接飲み込む。左は画像受信用兼電源供給用の専用ジャケット | サイズは長さ23mm、直径9mmと、ふつうのカプセル型の錠剤と同程度 |
すでにカプセル内視鏡自体は実用化済みで国外では使用例もあるが、許認可の問題もあり、まだ利用時実績に乏しい。また、従来のカプセル内視鏡はカメラが固定され、進行方向に対して前方を向いていたり、斜めのアングルからの撮影となるために、画像処理の煩雑さや、得られる画像の鮮明度などに問題があった。
Sayakaでは、こうした問題を解決するために、カプセル内部を二重構造に改良。外装カプセルのなかで内装カプセルがステッピングモーターを用いて7.5度ずつ、約6秒で1回転するようにした。回転しつつ撮影することで円筒形の消化管全体を撮影でき、得られた画像から画像処理技術によって6~8mの消化管全体を1枚の超広角視野画像に合成することが可能になった。
現在は、まだ開発中の段階だが今年中に臨床試験に入るという。1カプセルあたり6000円前後を目標に開発しているという。カプセル内視鏡が普及すれば、疾患の早期発見や病巣の特定、経年変化の観察・研究などで効果があるという。
内部の構造図 | 拡大モデルも展示。実際に動作しており、カメラが回転しながら撮影する様子がよくわかる |